介護医療院の導入が、組織づくりの第一歩に―医療法人あかつき会 髙﨑慶本部長【後編】

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聖路加国際病院(東京都中央区、520床)で10年間の勤続後、高齢者医療や介護領域に力を入れる医療法人あかつき会(埼玉県川口市)に入職した髙﨑慶さん。2017年に経理課長として就任後、2018年5月には介護療養型老人保健施設(通称:新型老健)を介護医療院(Ⅱ型)へ転換し、2018年7月には法人の管理運営を担う本部長に就任しています。後編では長期療養を担う医療法人で働く理由と、前例のない施設転換を推進したプロセスを伺いました。

34歳、過渡期の医療法人で部長職に

―主に急性期を担う聖路加国際病院から、長期療養へと医療フェーズを変えた理由を教えてください。

医事課で入院や医療連携を担当していた時、多くの患者さんが各地の後方支援病院に転院していく姿を見て、急性期病院からの退院後が気になっていました。さらに、これからは急性期を縮小させ、在宅医療を充実させる流れが加速すると思うので、今から知っておいて損はないだろうとも思っていましたね。

聖路加国際病院で10年ほど勤めてみて、医療は変化し続ける上に、決してなくなることがないおもしろい業界だと感じたので、これからも医療領域でキャリアを積んでいこうと考えています。ただ、現時点では最終的にどうなりたいかがはっきりしていないので、当法人でさまざまな経験を積んでから考えていきたいと思います。

―長期療養領域でもさまざまな法人がある中で、医療法人あかつき会に入職したのはなぜでしょうか。

規模の小ささや、新しいことに取り組んでいるかを重視したからです。当法人は地域包括ケア病棟40床、医療療養病棟60床、介護医療院98床、そのほか介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム2施設を運営しています。支える医療・介護を先んじて実践しつつも、ひとつひとつがコンパクトなので細部まで目を向けられると思いました。

加えて、理事長が40代後半と、長期療養領域の中では若手でこれからどんどん変わっていきそうだという印象も抱きました。理事長はもともと在宅医療クリニックを運営し、約300人の患者さんを抱える組織に成長させていたと伺ったので、人の動かし方やお金の回し方など、組織のつくり方を学ばせてもらえるとも思いました。

―約1年で本部長とはキャリアアップが早いように感じますが、何か理由があるのでしょうか。

これはほとんど運なのですが、最初は経理課長としてお金の管理を担当していました。しかし、当時の事務長が残り3カ月ほどで退職すると聞き、入職間もなくしてお金とモノの管理を任される法人本部次長になりました。その後、介護医療院の転換を経て2018年7月に本部長を拝命したかたちです。結果的に、最初の段階でお金回りのことを意識して、黒字化の必要性などが理解できるようになったのがよかったです。

―本部長という立場になって、仕事内容は変わりましたか。

現場の仕事よりも、管理の割合が強くなった印象はあります。そもそも管理業務の中には、“やらなければいけないこと”と“やりたいこと”がある。やらなければならないことは法律で縛りがあるので何とか進められますが、やりたいことは私が意識を向けないとどんどん流れてしまいますし、内容によっては職員をその気にさせなければなりません。

そうなるとフットワークを軽くして何事にも先回りする姿勢や、物事を好き嫌いで判断しないといった意識が大切かもしれません。自分の判断には責任が伴うようになりますが、必要以上に恐れる必要はないと思いますね。

関東2番目の早さで介護医療院を導入

―はとがや病院は2018年5月に介護医療院(Ⅱ型)への転換を成功させ、関東2番目での転換を実現したことから、業界の先駆的事例になっているように感じます。具体的にはどのような理由で転換を決めたのでしょうか。

理由は3つあります。

1つは病院経営上、このままでは3000万円ほどのマイナスが見込まれたからです。介護医療院にすれば介護報酬の加算もあり、試算の結果、すぐに黒字になることがわかりました。

2つめは、はとがや病院が運営する地域包括ケア病棟の在宅復帰率を維持・向上させるためです。当院でも地域包括ケア病棟から新型老健に移る患者さんが1割程度いたのですが、2018年度改定で新型老健は「自宅」の定義から外れることになったため、このままでは地域包括ケア病棟の施設区分にも影響するだろうと考えました。

3つめは地域からの要請です。埼玉県川口市はベッドタウンという特徴もあり、家族による介護が難しい家庭も少なくありません。しかし、特養をはじめとした介護施設では医療ニーズを満たせない一方で、在宅医療では不安という声がありましたので、医療的ケアを行いながらターミナルケアから看取りまで対応する施設が求められていたのです。

以上の理由がそろっていたので、なるべく早く転換を進めたほうがいいだろうと、介護医療院が制度化する2018年4月の約半年前から改定の動向はうかがっていました。

―転換にあたっては、どのような取り組みをしたのでしょうか。

施設基準はほとんど変わりませんでしたし、すでに地域交流なども行っていたので、書類を刷新したり、パーテーションをつくったりする程度で転換自体はそれほど大変ではありませんでした。強いて言うなら、すでに入院している患者さん、働く職員、地域の方、それぞれに介護医療院へ転換するという旨の説明会を行い、全員の理解を得るまでは不安でしたね。幸い反対意見はありませんでしたが、初めての試みでもあるので行政との協力が必要不可欠でした。

―行政との協力内容について詳しく教えてください。

介護医療院が制度化した2018年4月に、川口市が中核市に移行したため、病院の管轄担当も県から市に変わりました。つまり、川口市の担当職員もあまり慣れない中で、当院の介護医療院転換を進めなければならなかったのです。とはいえ、担当職員がとても協力的な方で、わからない点は厚生労働省に確認したり、他の自治体に問い合わせてくれたりと、一緒になって考えてくれました。転換すると決まったら一人で悩まず、早い段階で行政とタッグを組んで信頼関係を築けたことがよかったのだと思います。

―2018年12月には介護医療院Ⅱ型からⅠ型へ区分変更をしたそうですが、そこでも比較的スムーズに進んだのでしょうか。

いえ、最初の転換よりもこちらの方が難航しました。特に大変だったのが、職員が考える「ターミナルケア」の認識を合わせること。I型の場合、入所者のターミナルケアに係る計画を作成することが要件になっているからです。厚生労働省から「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が出たとはいえ、考え方は人それぞれだったので、全員が納得できるかたちにまとめるまで時間がかかりました。こればかりは時間をかけて話し合うしかありませんでしたね。

おかげさまで、介護医療院の稼働率は90%以上(2018年1月現在)で安定しているので、これからもスタッフ一丸となって運営していきたいと思います。

―最後に、髙﨑さんの今後の目標を教えてください。

一言で言うなら「いい組織をつくりたい」と思っています。私が考えるいい組織は、整ったハードの中で、職員が安心・安全意識を持ち、仕事に前向きに取り組めていること。私がこう考えるのも、聖路加国際病院時代のJCI更新業務の時に、サービス内容の下には人がいて、その下には病院、その根本には法人体制があると実感したからです。

はとがや病院の理念は「地域の幸せに貢献する病院」。職員にとっても、患者さんにとっても来てよかったと思える病院を目指して、日々がんばっていきたいと思います。

<取材・文・写真:小野茉奈佳>

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