「これまで通り」は通用しない?今必要とされる病院管理職とは―病院の管理部門 直面している4つの“異変”【前編】

著者:木村憲洋(高崎健康福祉大学健康福祉学部医療福祉情報学科准教授)

最近、わたしのもとへ「事務長や看護部長、医事課長などの管理職を紹介してほしい」といった連絡が増えています。今、医療機関の管理職に何が起こっているのでしょうか。これから必要とされる管理職とはどんなものなのか、病院が直面している4つの異変から、考えてみたいと思います。

病院の管理職が直面している異変1
急性期なら「100床200人」も 院内の組織化の必要性高まる

優れた管理職が必要とされる一因として、病院のスタッフ数の増加が挙げられます。一般的に組織は、所属するスタッフが増えれば増えるほど、効率が悪くなります。管理職には、スタッフが効率的に行動できるような環境を整備することが今まで以上に求められているのです。

JU048_72Aたとえば1990年代、急性期病院で働くスタッフは、現場の医療職、事務職など合わせて 「100床100人」と言われていました。当時の急性期病棟には自立できる入院患者が一定数存在していたため、このスタッフ数でまわせていましたが、2010年に入ってから、「100床200人」を超える事態も珍しくありません。こうした背景には、政府が推し進める「平均在院日数の減少」と「入院患者の絞り込み(重症化)」があると思います。従来よりも重症な患者を相手に、平均在院日数の短縮を狙い、医療機関ではスタッフ数を増やすことで、手厚い医療を施そうとしているのです。

ちなみに現在、医療政策上も厳しい変化を迫られ、経営的な格差が顕著に現れてきているのが、100床以下の急性期病院です。昨今破たんしたり、病床を返上してクリニックへ転換したりする病院や、M&Aでオーナーが変わる病院にも100床以下が非常に多いと感じます。

病院の管理職が直面している異変2
チーム医療や連携を評価する診療報酬点数の登場

医療機関が優れた管理職を求める2つ目の要因として、診療報酬の複雑化が挙げられます。

JU177_72A近年の診療報酬改定を見てみると、チーム医療や記録類を求める点数が増えている傾向にあります。その代表例が、栄養サポートチーム加算や感染防止対策加算、褥瘡ハイリスク患者ケア加算です。これらの点数を算定するためには、さまざまなメディカルスタッフ同士の連携が必要になるのはもちろん、場合によっては外部の医療機関とも連携しなくてはなりません。

こうした環境に対応するために、全体を統括し、院内・外の調整役となる事務長や看護部長の存在感が増しています。特に看護部長は、多くのスタッフを抱える看護部のトップであり、病院の人材の将来を担っていると言っても過言ではありません。

診療報酬は今後も複雑化し、院内・外との調整を要する点数が増えていくものと思われます。事前の調整なしに見切り発車でこうした点数に対応しようとすると、必ず医療現場は混乱することになるでしょう。診療報酬改定や医療政策、時代の流れをどう受け止め、どう対応していくのか、指示・実行できる人材が必要です。

医療の質を向上させるのも人材、診療報酬点数上の施設基準を満たすのも人材と、病院経営における人材マネジメントの重要性は今後ますます高まっていくと思われます。


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