「事務長」「医事課長」の転職に特化!求人倍率、年収は?― 専門家に聞く病院事務職のキャリア【前編】2017改訂版

【編注:2017年3月 改訂】
転職を検討しているけれど情報が少なすぎる―。そんな病院事務職の力となってくれるのが、エムスリーキャリアが提供する「m3career事務長紹介サービス」。今回は、このサービスを通じて病院事務長や医事課長などのキャリア支援にあたっている堀口航平氏(医療コンサルティンググループ)に、病院事務職の転職事情について聞きました。

事務管理職の転職は、売り手市場

―転職市場において、病院事務職の求人倍率はどうなっているのでしょうか。
horiguchi_1事務管理職に関して言えば、現在のところはおおむね、求職者よりも求人数の方が多い“売り手市場”ととらえて良いかと思います。事務長、医事課長など、職位やエリアによっても需要に変動はありますが、経験豊富な方であれば複数の医療機関から引く手あまた、という事態が珍しくありません。

もちろん、求職者の方の希望年収やエリアによっては、求人をご案内するまでにお時間を要することもありますが、ご登録いただいてから半年くらいの間に合致する求人が入り、その後トントン拍子でご転職が決まるといったケースもあります。

―人材ニーズが高い医療機関に傾向はありますか。
求人は、クリニックから300床程度の中規模病院が多いですが、一部には大学病院や公的病院の求人もあり、多様な医療機関をご紹介できます。2016年度は、4月の診療報酬改定の影響もあり、医事部門やDPCの経験に秀でた事務長や医事課長を紹介してほしいという求人を多く寄せていただきました。

2017年度に予想される求人傾向としては、「地域包括ケアシステム」と「グループ法人」がキーワードになると思います。「地域包括ケアシステム」については言うまでもないかもしれませんが、トピックが目白押しです。たとえば、昨今急速に普及している在宅診療や、2018年4月に控えている診療報酬・介護報酬の同時改定はもちろん、様子見を続けていた医療機関もいよいよ導入に動き始めている地域包括ケア病床が挙げられます。
そんな中で、自院の地域内におけるポジショニングを分析し、病床構成・在宅診療・介護関連施設のベストミックスを企画、実行に移すことができる― そんなリーダーシップのある事務管理職を求めて、事務長や課長・主任クラスを採用・育成にあたる医療機関は増えてくるでしょう。

「グループ法人」というキーワードは、少し不思議に感じるかもしれません。しかし昨今、事業継承や、経営不振の医療機関の救済支援などを進めながら、傘下の病院を増やしていくグループ法人が増えてきています。その際、引き取られた医療機関の現場スタッフは多くが残ります。そこで、医師をはじめとした現場スタッフと信頼関係を築きながら経営改革を実行していける熟練の手腕が求められてくるわけです。こういった、新興のグループ法人は往々にしてベンチャー気質があり、30代-40代で事務長を勤める方も多く見られますから、結果として若手人材のニーズも増してきています。

このほか、当社は医療機関に対し医師採用の支援や、経営コンサルティングも行っているのですが、こうした支援の過程で自院の経営課題が明確になり、「優秀な事務管理職を採用しなければ」とお考えになる医療機関も多いですね。

―「事務長紹介サービス」とは、具体的にどういうサービスなのでしょうか。
名前の通り、事務長をはじめとした事務管理職・一般事務職を募集している医療機関に、人材を紹介させていただくサービスです。

「事務長紹介」とはしているものの、医事課長・総務課長や、今後さらなるキャリアアップご希望の医事主任・総務主任の方、派遣社員から正社員へと勤務形態の変更を希望なさっている一般医事課員の方など、広く支援させていただいています。ご利用いただく方の年齢層も、20代から50代後半の方々までさまざまで、お一人おひとりのお話を伺い、希望条件や強みを把握してから、入職先のご提案、面接でのサポートや条件交渉などを担当させていただいています。

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病院事務職が転職を考える3つの理由とは

horiguchi_2―病院事務職は、どんな理由で転職を考えるのでしょうか。
傾向としては、大きく3つの理由に分けられるかと思います。

1つ目は、現職に継続勤務年数が長い職員がいて上が詰まっている、出世しづらいといった理由で「環境を変えてキャリアアップしよう」と考えるパターンです。「ゆくゆくは事務長を目指したい」など、今後のキャリアステップを見据えてご相談をいただくようなケースですね。

2つ目は、「現職の医療機関で結果を出せたので、新たな挑戦をしたい」とお考えの方。大きな変革を迫られている医療業界の動きをチャンスととらえて、何かインパクトの大きな仕事をしたい思いが強く、「困っている医療機関を助けたい」「定年前にもう一仕事したい」と使命感を持っている。意欲的な方が多い印象があります。

3つ目は、新たなスキルの獲得を目指すケース。医療環境が変化する中、病院事務職に求められるスキルも日々多様化しています。しかし、中小規模の病院だと一般的に人事異動があまり活発ではありません。DPC分析を学ぶためにDPC対象病院への転職を希望される医事課長の方や、財務会計や地域連携、在宅診療などの新サービスの立ち上げ、病棟改修といった特定の業務を希望される方もおり、病院事務職が転職を通じて自分のスキル・知識・経験の幅を広げていく動きは、今後ますます活発になると考えています。

もちろん年収アップを目指される方もいます。年収相場に関して言うと、医事課長で年収約500万~700万円、事務長で約700万~1000万円ほど。病床数や医療ステージに応じて、多少変動幅がありますが、凄腕の職員が入職して取り漏らしていた加算をきちんと算定してくれれば、1億円くらいの増収が見込めることもあって、相場以上の年収をご提示いただくケースもあります。

水面下で進む事務管理職の採用

―一般的に病院事務職が転職活動をする際に苦労することはありますか。
そもそも、病院の事務管理職の求人はオープンになっていないことが多いので、求人を探し出すこと自体が骨の折れる作業のようです。医療機関が求人をオープンにしない背景には、経営層が「現職の事務管理職に求人している事実を知られたくない」という思いを持っていることが多く、一般企業が幹部候補の人材をヘッドハントで採用しようとするのと同じような心境だと言えるかもしれません。

horiguchi_3一方、求職者の側にも、内密に転職活動を進めたいというニーズは大きいようです。
地域連携の必要性が叫ばれているだけあって、事務職は横のつながりが強く、近隣で転職しようとすると、医療機関名や年齢ですぐ身元が割れてしまう。それを懸念して秘密裏に入職先を探したいと相談をいただくケースは多いですね。当社の場合、求職者の個人特定につながる情報は、面接まで開示しません。我々が求職者の方に代わってご希望のエリアの医療機関に条件に合った求人がないか、1施設ずつ問い合せたりもできるので、水面下で転職活動を進めたいという方のニーズには合っているかと思います。事務管理職のマッチングは、医療機関と求職者が、お互い秘密裏に進めたい案件だからこそ、わたしたちの介在価値がより発揮できるのではないか、とも考えています。

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堀口航平(ほりぐち・こうへい)

新潟大学大学院自然科学研究科修了後、人材紹介会社の創業に参画。中小・ベンチャー企業を中心に、年間100名以上の就職支援を行う。その後、エムスリーキャリア株式会社に入社し、医師採用コンサルタントとして全国の医療機関を支援。現在は、医療コンサルティング部門にて事務長紹介サービスを担当。

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