戸田中央医科グループの最年少幹部を支える2つの心掛け ― 医療法人 横浜柏堤会 橋本敦 事務長

日本屈指の病院グループである戸田中央医科グループ(TMG)。首都圏で28病院を含む114の関連施設・事業所を展開(2016年6月現在)。1962年の創設以来、施設の新設に加え、経営の傾いた施設を引き取って経営再建を果たし、拡大してきました。
その中で事務職として若くから頭角を表し、組織拡大に貢献してきたのが橋本敦氏です。40歳の頃には、職員13,000名以上の中で数十名余りしかいない事務方幹部に最年少で就任した橋本氏に、これまでのキャリアを伺いました。

医師や看護師にも教えを乞う

―橋本さんはTMGの中核である戸田中央総合病院に新卒で入職し、現在は本部事務長や全国医事研究会理事を務め、その活躍ぶりは院内外から注目されるところです。意欲的な仕事ぶりは入職時からなのでしょうか。
戸田中央医科グループの最年少幹部を支える2つの心掛け ― 医療法人 横浜柏堤会 橋本敦 事務長実はそんなこともありませんでした。新卒の頃は、400床ほどの規模感に圧倒されて…。入職してしばらくは、自分が大きな組織の歯車の一つでしかないと感じていて、これでいいのだろうかと疑問に思いながら仕事に取り組んでいました。

転機が訪れたのは、入職4年目に医事課でICU専属になってからでした。ICUでは複雑な手技が多く、1件で数百万円に達するレセプトを扱います。同じような症例や手技でも、その症状詳記は担当医によってまちまち。だから、審査支払機関のチェックを通るために必要な内容をわたしが把握していないといけません。ところが、これが分からない。そのときになって、医療知識を習得する必要性を痛感しました。
ときには医師に症状詳記を修正してもらわないといけませんから、彼らとディスカッションできるレベルにないと、ICU担当の医事課職員は務まりません。そこで当時は、医師や看護師のもとに積極的に赴いて、教えてもらっていました。そうしているうちに、「医事については院内で最も詳しい」と自負できるようになっていきましたね。当時得た知識は、今でもわたしの大きな財産になっています。

30代にして病院再生を経験

―切羽詰まった状況に追い込まれながら、武者修行のような日々を過ごされていたわけですね。その後、グループ内の別病院に異動したそうですね。
はい、入職10年目です。これが、二度目の転機となりました。異動先の病院は、新しくTMG傘下に入った医療機関で、経営再建と建て替えを控えた150床程度の急性期病院でした。

戸田中央医科グループの最年少幹部を支える2つの心掛け ― 医療法人 横浜柏堤会 橋本敦 事務長―ICU担当とは違った苦労がありそうですね。
経営再建のゆくえは、経営の収入面を支える医事課に掛かっていると言っても過言ではありませんでした。職員や地域の方々に安心してもらうために一刻も早く立て直そうと、医事課には高いハードルを設けたのですが、メンバーから反発があったのも事実です。
その結果、経営が軌道に乗るころには当初十数名いた医事課職員は3名にまで減ってしまい、現地で採用し教育する必要がありました。

それでも方針がぶれずに経営再建を初志貫徹できたのは、医事業務に対する絶対の自信でした。当時は、たとえわたし一人になっても医事課を回していくと決意していました。今思えば浅はかな決意ですが…(笑)ただ、あのときもしもメンバーの要望をすべて受け入れていたら、辞める人はいなかったかもしれませんね。

病院経営が軌道に乗って、職員が定着し、職員の質が上がっていく――。病院経営が好循環で回っていくダイナミックな経験を積めたこともまた、わたしの大きな財産となっています。

自らをキャパシティーオーバーさせる

―戸田中央総合病院に戻ってからは、いかがでしたか。
本院の事務をまとめる立場として、以前ICUでともに働いた看護師たちと再び仕事ができることになりました。お互いに気心の知れた間柄ですから、協力を非常に得やすい。しかも彼女たちは、昇進して看護部長・課長などのキーパーソンになっています。
若い時に、職種を超えてともに切磋琢磨したことが、現在の業務にも非常に活きていると感じます。

―橋本事務長は若い頃にさまざまな苦難を乗り越えていますが、いま若手の事務職が気を付けるべきことはありますか。
わたし自身が心掛けていることで、大きく2つあります。

一つは、自分のキャパシティーを少し超える仕事を抱えるようにすることです。いま抱えている仕事がギリギリ程度のレベルであれば、自らさらに仕事を取りに行くべきだと思います。
キャパシティーを超えることで、あえて全部の案件に対応できなくするのです。そうすることで、普段から優先順位をつけて仕事をする癖がつきます。

もう一つは、なるべく多くの情報を得て学ぶことです。わたしは今、病院に訪れるさまざまな業者さんに時間の許す限りお会いして、プロの視点からの情報を吸収するようにしています。
若手の方には、外部のセミナーや講習会に出て勉強することを薦めたいですね。外に出ると他の病院の事情も知ることができます。ただ、一般的に外部へ勉強に行かせてくれる病院は多くないかもしれません。自分が勉強に行けば病院のためになると納得してもらうためにも、「院内では自分が一番だ」と言えるようなスキルを身に付けるべきです。

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