「泥かぶるのは院長、手柄は職員のもの」有井滋樹氏に聞く~ちば医経塾塾長井上貴裕の院長対談vol.3

対談相手:前神戸市立医療センター西市民病院院長 有井滋樹氏(神戸市民病院機構 特別顧問(西市民病院整備担当))

目次

千葉大学医学部附属病院副病院長で、医療経営塾「ちば医経塾」の塾長である井上貴裕先生と神戸市立医療センター西市民病院・前病院長の有井滋樹先生(神戸市民病院機構 特別顧問(西市民病院整備担当))の対談の第3回目。2028年に予定されている西市民病院の新病院開設についてのお話のほか、これから病院長になる医師へ向けた熱いメッセージを伺いました。「すべての手柄は職員のもの」と話す有井先生が、次世代の病院長にエールを送ります。

ちば医経塾塾長・千葉大学医学部附属病院 副病院長 井上貴裕氏
前神戸市立医療センター西市民病院院長 有井滋樹氏(神戸市民病院機構 特別顧問(西市民病院整備担当))

2028年に西市民病院の新病院が開設予定

井上:西市民病院は新病院への建て替えが進んでいるそうですね。新病院についても教えてください。

有井:新病院は、兵庫駅の隣の新長田駅の駅前に建設予定です。今の病院は市街地にあり新長田駅と兵庫駅の中間に位置しているのですが、新病院は完全に駅前で、神戸の中心部である三宮からも10分程度と非常に良い立地になります。

井上:移転までのスケジュールはどのようになっているのですか。

有井:今は基本設計の段階で、2028年の開設予定です。構想自体は3年前に出たもので、私自身はこれほど早く具体化するとは思っていませんでした。しかし、神戸市がスピーディに決断してくれて、2021年には「新西市民病院整備基本方針」が策定され、移転計画がスタートしたのです。

井上:移転について地域の反応はいかがですか。

有井:町の活性化につながるため、地域住民も移転を待ち望んでくれていると聞いています。新病院ができることで人口の流入が期待できるほか、町のシンボルとしての役割も果たすことができるため、住民や商店街の人たちからも期待の声がパブリックコメントに寄せられています。

井上:利便性の高い場所に移ると、スタッフも採用しやすくなりますね。 有井:はい。やはり医師にしても看護師にしても、募集をかける際に立地は非常に大きな要素だと思います。移転場所を決めるにあたっては、神戸市が提示してくれた候補地の中から狭くても駅に近い、利便性の高い場所を選びました。

1ベッドあたりの広さは約1.5倍に拡大

狭いといっても縦に積むことで、1ベッドあたりの面積は約100平方メートルとなり、同じく神戸市民病院機構の神戸市立医療センター中央市民病院とほぼ同じ広さになります。今の病院は1ベッドあたり約68平方メートルですが、1ベッドあたりの広さは1.5倍程度になります。

井上:神戸市民病院機構には有井先生がいる西市民病院のほか、中央市民病院、西神戸医療センター、神戸アイセンター病院がありますが、人事交流はあるのですか。

有井:看護師は一括採用で、最初に配属先の希望を聞きますが、看護師長や看護部長などのマネジメント層はローテーションになります。

井上:医師の移動はあるのですか。

有井:医師の移動はそれほど頻繁にはありません。西市民病院で脳外科を新設するときは、中央市民病院からナンバー3の立場の専門医が1人来てもらいましたが、そうしたことが今後増えていってほしいと思います。

井上:新病院ではどのような機能を強化する予定ですか。

有井:高度急性期医療の機能を大幅に強化するつもりです。今の病院は救急のスペースが非常に狭いので拡張し、放射線治療も導入したいと考えています。また病棟の療養環境も個室を増やし、多床室でも個室風に改善したいです。

市民との交流スペースも組み込まれていますので、市民に開かれた病院を目指し、地域の活性化につながることも願っています。

井上:完成がとても楽しみですね。

有井:はい、楽しみです。建物は非常に良いものができると思いますから、あとはいかに良いスタッフを集めることができるか。そこにかかっていると感じています。

職員に伝えるメッセージは「シンプル」で「明快」に

井上:最後にこれから病院長になる人に向けてエールをいただけますか。

有井:病院経営は今後ますます厳しい状況になっていくことが考えられます。光熱費などは値上がりする一方で、医療は公定価格ですからさまざまな物価高を診療報酬に転嫁することもできません。実際に、光熱費の値上がりだけでも億単位の支出増になります。

こうした厳しい状況の中で、いかにして健全な病院運営をしていくかというのは、まさに知恵の絞りどころです。

これは、医師だけでどうにかできるものではありません。優秀な事務方も必要ですし、ときとして外部のコンサルタントの知恵を借りることもあるでしょう。大切なことは、できるだけ多くの職員に院長の考え・思いを理解してもらい、職員をいわば味方につけることだと思います。

いずれにしても「皆で頑張りましょう」だけではダメなのです。なぜなら、現場はすでに頑張っているのですから。「頑張りましょう」といっても、「もう、頑張っています」という答えしか得ることができません。

井上:職員にはどのようなメッセージを伝えるべきとお考えですか。

有井:まずは、自分の病院のポジショニングを明確にすることが大切です。地域密着型で行く病院なのか、高度急性期で行くべきなのか、あるいはケアミックス型を目指すのか。そこをはっきりさせることが重要になります。

その上で、職員には「シンプル」で「明快」なメッセージを伝えることです。そしてできれば、数値目標も示すといいと思います。

現場の医師がやる気を出す目標の共通項

もちろん、足元の目標とあわせてより大きなビジョン、グランドビジョンも必要です。しかしあまりにグランドビジョンにばかりこだわると、具体性がなくなってしまい、絵に描いた餅になりかねません。だからこそ、目の前の目標とグランドビジョンの両方が必要になるのです。

例えば、目の前の目標として「今年は救急車を〇〇台取りましょう」「在院日数は〇〇日を目指しましょう」などの具体性もあった方がいいですね。シンプルで明快なメッセージを伝えることで、院長と職員が一体になってより良い病院作りに貢献することができるのだと思っています。

決して精神主義にならずに、目標達成するための具体的な行動プランと、そのためのシステムの改善・構築についてスタッフと一緒に知恵を出し合うこと。そして、時にはトップダウンで行うことも必要だと思います。ただ、良いシステムを作ってもマインドの裏付けがないと長続きせず、形骸化します。システムとマインドが両輪と考えています。

もう一つ付け加えるとすれば、目標を掲げてそれを達成することができたならば、それは現場の職員の手柄。失敗すれば院長の責任という覚悟を持つことです。そうすれば職員はついてきてくれるのではないでしょうか。

現場の職員一人ひとりのおかげで病院経営が成り立っていることを肝に銘じて、適切な戦略で地道かつ誠実に取り組んでいくことしか道はないのだと私は信じています。

井上:貴重なお話をありがとうございました。

>>病院改革を成功させられる院長の、意外な特徴~ちば医経塾塾長・井上貴裕の病院長対談vol.2

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