医師の働き方改革で変わる、医療機関のベストアプローチとは

2024年4月から始まる医師の働き方改革。医師・医療機関の双方が不安を抱える中、採用市場にも少しずつ変化が起きているようです。国家資格キャリアコンサルタントの資格を持ち、医師の転職、医療機関の採用を支援しているエムスリーキャリアの人見敏広さんと岡本宏美さんに、今、医師と医療機関の間で起こっている変化、医療機関が対策するべきことを聞きました。

目次

対談者紹介

人見敏広(ひとみ・としひろ)氏
医師キャリア事業部 常勤紹介グループ
金融機関勤務を経てエムスリーキャリアへ入社。常勤での転職を検討している医師のコンサルタントを担当して9年目。国家資格キャリアコンサルタントを保有。

岡本宏美(おかもと・ひろみ)氏
医師キャリア事業部 採用支援グループ
大手人材会社を経てエムスリーキャリアへ入社。業界経験は14年目。前職で医師のコンサルタントを経験。現在は医療機関の採用支援を担当している。国家資格キャリアコンサルタントを保有。

医師の働き方改革を前に、医療機関や医師に起きている変化

――2024年4月から医師の働き方改革が始まります。人見さんは医師、岡本さんは医療機関と直接お話をする機会が多いと思いますが、何か変化を感じていますか。

人見:
少しずつ感じています。弊社にご相談いただく先生方は、さまざまな転職理由を抱えていますが、そのうち10人に1人くらいは「医師の働き方改革が始まったら、今の勤務先では不安」という理由での情報収集を希望されます。また、大学病院にお勤めの先生から「アルバイトが制限されそうなので、今のうちから年収アップの方法を考えたい」というご相談をいただくこともちらほらあります。

岡本:
医療機関の面接でも、「当院はどの水準に相当するので、残業代はこうなる」など、働き方改革に対応した具体的な話が出るようになりました。医師も意識が変わってきたようで「残業は?」「来年からの働き方は?」といった質問も増えています。そういった質問に、医療機関の担当者がうまく語れないと「あの医療機関は大丈夫?」と不安視される傾向が出てきましたね。

人見:
今はまだ制度が始まる前なので、そもそも「わからないことがわからない」という漠然とした不安を持つ先生が多いです。たとえば「今までと同じ働き方ができるのか」といった不安ですね。2024年4月の法施行以降、こうした不安は加速すると思うので、今は嵐の前の静けさかもしれません。

岡本:
私は採用面接に同席していて年収が下がる心配をされている先生が多いと感じますが、いかがですか。「これから当直ができなくなる」、「宿日直許可が取れていない医療機関ではアルバイトができない」など。

人見:
おっしゃる通りです。特に急性期病院でハードな勤務をされている先生は、勤務時間が制限されると、今と同じような働き方ができなくなる可能性があります。そうなると業務内容はもちろんですが、給与にもダイレクトに影響を受けるはずです。

先生方はそういった不安の中で転職活動をしているので、ご縁があった医療機関と面接をした際に医療機関から「来年度以降の働き方や給与」に関する具体的なお話があれば、とても安心感を持てると思います。

岡本:
そうですね。医師の勤務時間が制限される分、医療機関は当直の体制づくりに悩んでいる印象です。これまでも夜間帯は常勤医だけでの対応は難しく、非常勤医を採用して運営している医療機関が多かったと思います。

私が支援をしている医療機関の中には、宿日直許可を申請中のところもあり、「もし取れなかったら」または「取れても、医師が来なかったら」という不安があるようです。
とはいえ、もちろん「もう宿日直許可は取っています」という医療機関もありますから、温度差が激しいですね。

宿日直許可申請やタスク・シフト…今、医療機関がやるべきこと

――医師・医療機関、双方ともに少しずつ変化が起きているのですね。漠然とした不安を抱える医師を採用するには、医療機関は今どのようにアプローチするべきでしょうか。面接などで医師に伝えた方がいいことがありましたら教えてください。

人見:
現状は、医師の働き方改革にしっかり対応できている医療機関は、他の医療機関と差別化できる強みになります。

先日、医師の働き方改革に前向きな医療機関の面接に同席しました。翌年度の体制に加え、準備期間の本年度の体制も具体的に話されていて、面接を受けた先生も、これなら安心という表情をされたのをよく覚えています。

その医療機関が医師に伝えていたことは3つあります。
1つは当直について。人員体制や救急対応数、シフトなどの状況です。
2つ目はタスクシェアについて。コメディカルやクラークがどこまでフォローしてくれるのか。
3つ目は、無駄なことを省けるようIT化に積極的に取り組んでいることを伝えていました。

――岡本さんは医療機関側の現状をどうお考えですか。

岡本:
人見さんが今話された医療機関は取り組みがかなり進んでいます。先程も申し上げた通り、宿日直申請を申請中など、遅れている医療機関も一定数あります。

ただ、タスクシェアでは好事例がありましたのでご紹介させてください。
その医療機関は主治医以外に、病棟に専属医師を常駐させていました。主治医が外来・オペ・検査などで病棟を離れていても、入院患者さんに何かあった場合、看護師などの他職種が病棟専属の医師にすぐに確認できる体制をつくったのです。これにより、医師以外の職種の業務もスムーズに進むようになったそうです。この病棟専属医ポジションなら、シニアの先生、育児中で時短勤務を希望される先生でも働きやすいと思います。

医師の総数を増やすのが難しければ、このようにタスクを分けてカバーする方法もあります。医師の採用においては、今後はどのような医師に、どのようなポジションで活躍してもらうかまで考え抜くことが大事だと思います。

人見:
良い事例ですね。ちなみに病棟専属医の取り組みは、最近始まったのでしょうか。現場の反応も知りたいです。

岡本:
医師の働き方改革に備えて、2年前くらいから少しずつ始まったと聞いています。この取り組みを始めてからは、コメディカルも医師を待つ時間がなくなったので「早く帰れる」と好評のようです。

働き方改革の最適なやり方は医療機関によって異なります。先程の病棟専属医も「そんなやり方もあるよね」という視点で参考にしていただき、さまざまな方法を試してみるといいと思います。

多様化する医師の転職ニーズに、医療機関も歩み寄って

――今までのお話を踏まえると、医療機関は医師との面接の前にこれまで以上に準備が必要そうですね。どのようなことを意識したらいいでしょうか。

岡本:
まず、面接当日にその場で履歴書を見るようでは、うまくいかないと思います。
ここ数年、医師の転職理由は多様化し、さまざまな事情を抱えていますので、優先順位をしっかり確認すべきでしょう。

その上で、一つの答えを用意しただけで終わらせず、「こういう質問が来たらこう返そう」と二段構えで回答を準備できると良いです。私から医療機関に「この先生はこの点を重視していそうなので、このような提案をしてみませんか」と助言することもあります。

人見:
医師も、医療機関が事前準備をしてくれたとわかると「自分を迎えてくれているんだな」と安心しますよね。

私は面接には3つのポイントがあると思っています。
1つは医師に関心を持ち、その医師に向けた説明をすることです。「どんな職場でもいいから転職をしたい」という先生はまずいないので、採用になった場合の先生の役割や具体的な働き方をお話することが大事だと思います。
2つ目は、病院の概要や目指したいビジョンをしっかり話すこと。
そして3つ目は、先生の事情や病院のビジョンを踏まえ、病院と先生の共通点を見つけ、力を貸してほしいポイントを伝えることです。

岡本:
共通点を見つけるのは難しいけれど、私も大事だと思います。

たとえば「当直はできない」「早番はできない」という先生には、「月1回ならどうでしょうか」といった歩み寄りの会話ができるといいですね。
または、「基本的に当直はされなくても大丈夫ですが、もし当直や早番に入る先生が見つからなかった場合は、人材紹介会社にスポット求人を出す前に、先生に声をかけさせてもらえませんか」とお伝えしておくなど。そういう交渉には、意外と前向きに検討いただける先生は多いです。

――最後に、医師の働き方改革を前に、医療機関が医師採用で気をつけるべきことを教えてください。

人見:
先生方は、何らかの不安や不満を解決するために転職を検討しています。たとえば、年収を上げたい、研鑽を積みたい、家庭の時間を確保したいなどです。

医師にとっては、転職でそれらが解決できることが大事なので、医師の働き方改革の影響で、希望がかなわなくなるのは避けたいですよね。
医師が半年後、1年後の働き方をイメージできるように、特に残業に関することなどは書面で示すだけでなく面接でも伝えていただくといいと思います。

岡本:
入職した先生には長く働いてほしいはず。そのためには入職前後のギャップを生まないことが大事です。
医療機関は、先生の希望をすべて受け入れられるのか、それとも調整しなければならないことがあるのかを明確にして、医師にしっかり伝えることが大切だと思います。

※対談内容は一部抜粋しています。
全編は「医師の働き方改革.com」にて記事・動画でご紹介予定です。

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