2018年度改定「入院医療」のポイントはデータ提出加算―診療報酬請求最前線

診療報酬請求最前線

2017年12月末には、2018年度診療報酬改定(以下、次期改定)における入院医療の評価体系が具体的に見えてきました。その方向性は、一般病床と療養病床の評価に、各々の特徴(医療資源投入量の多寡)と医療ニーズをより反映させるという考え方です。ここでの大事な視点は、次の2つです。

  • 医療資源投入(高):急性期を担う一般病床において、医療ニーズが低い患者に多くの医療資源を投入するような非効率な医療を行わない
  • 医療資源投入(低):長期療養を担う療養病床において、医療ニーズが高い患者には適切に医療資源投入が行われるようにする

※中央社会保険医療協議会(中医協)の資料から抜粋

こうした考え方は、患者の医療ニーズを的確に捉え、一般病床(または急性期)と療養病床(または長期療養)が混在して非効率な医療が提供されないよう、交通整理をしっかり行ったうえで医療資源を投入するということです。

このため、次期改定ではデータ提出加算の対象範囲が拡大する見込みです。たとえば、これまで対象とならなかった200床未満10対1入院基本料、回復期リハビリテーション病棟入院料1・2、200床以上の療養病棟などは間違いなく追加されます。

なぜデータ提出加算の対象拡大なのかというと、今後の入院医療政策の柱となる「根拠の見える政策」に不可欠だからです。次期改定の議論では「医療の質の向上に資する」という名目が掲げられていますが、実は、すべての医療機関の医療ニーズと医療資源投入量をモニタリングできるという観点から、対象拡大は重要な意味を持っています。そのため、対象は回復期リハビリテーション病棟入院料、療養病棟入院基本料へと拡大する方向で広がります。

次項では、筆者が考えるデータ提出加算の押さえどころをお伝えします。

医事データの品質保持に適任な診療情報管理士

データ提出加算で最も重要だと思われるのは、医事データの品質です。

多くの医療機関では、データ提出加算のデータ作成を医療情報に精通した担当者任せにして、コンピュータ技術に頼る傾向が見られますが、むしろ医事請求と医学的な知識を併せ持つ医事系の診療情報管理士が適任であり、さらに医事算定の現場の協力を得られる方がベストです。期日内にデータをミスなく完成させ、さらに厚生労働省の事務局から返却される差し戻しエラーに対応するのは、思った以上に大変で責任を伴う作業です。たとえば、医事マスターや請求時の入力情報のエラーは、医事算定担当者との調整や電子カルテベンダーとのシステム面の設定が必要ですし、場合によっては臨床側の協力も仰がなければなりません。毎回3ヶ月ごとの提出期限が終わると、必ずこのエラー対応に追いつけず、期限を守れない医療機関が厚労省のペナルティを受けています。

医事データ品質を左右する体制2パターン

筆者は、これまでデータ作成の体制には2通りのパターンがあることに気がつきました。

1つは、データ担当者がエラーの根本的な原因を突き止め、再現しないように調整を行ってからデータを修正して提出する病院。これは非常に望ましい体制です。

2つ目は、データ提出の為に作成(抽出)されたデータのみを修正し、エラーチェックソフトにかからないように加工したデータを提出する病院です。後者は、担当者が独りで四苦八苦しながら他部門の協力も得られず、医事の算定担当者との間にも距離があって、エラーの根本を直せないのです。周りもデータ作成方法がよくわからないので無関心になっていることがあります。こうした不十分な体制を作らないためにも、データ提出加算の体制は常に監視(チェック)する必要があります。

データ品質は体制整備を行わなければ担保できない、この点を厳粛に考えてほしいと思います。

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。

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