算定漏れが多くみられる項目の一つである「肺血栓塞栓予防管理料」。算定基準や医学的見地、また院内の組織体制などを鑑みて適切に算定することが求められます。注意すべきポイントを確認しておきましょう。
算定のためには管理体制の構築が必須
肺血栓塞栓症予防管理料は、以下の医学的管理体制を整備し、予防的処置を実施した時に算定可能と判断されます。
肺血栓塞栓症予防管理料 305点
- 肺血栓塞栓症を発症する危険性の高い患者の入院中の予防を目的とした管理料である。
- 弾性ストッキング(やむを得ない場合の弾性包帯を含む)、間歇的空気圧迫装置などの材料や機器を用いた管理を実施する。
- 関係学会より示された標準的な血栓予防対策が実施されていること。
肺血栓塞栓症の原因となる深部静脈血栓症(DVT)の予防には、理学的予防法と薬物的予防法の2種類があります。理学的予防法には弾性ストッキングやIPC(間歇的空気圧迫装置)、弾性包帯などによる圧迫療法が用いられ、薬物的予防法には、ヘパリンなど抗凝固剤の投与が検討されます。
ここで重要なのは、医療材料や機器を使用した実績だけでなく、その管理体制も評価の対象であるということです。保険診療上の立ち入り調査などでは、「肺血栓塞栓症の予防措置を施したことのみをもって、一律に算定できるわけではない」といった指摘がなされています。関連学会が示す予防ガイドラインに沿った医療機関の体制、つまり、院内の血栓予防対策の取組みが評価されるということです。
請求・診療の2軸で適切性を評価
肺血栓塞栓予防管理料に示されている血栓予防体制については、日本医療安全調査機構より示されている「急性肺血栓塞栓症に係る死亡事例の分析」(医療事故の再発防止に向けた提言第2号)の提言6「院内体制の整備」が大変参考になります。
急性肺血栓塞栓のリスク評価、予防、診断、治療に関して、医療安全の一環として院内で相談できる組織(担当チーム・担当者)を整備する。必要があれば院外への相談や転院などができるような連携体制を構築する。
提言の中では、定期的なリスクの評価やマニュアルの整備、循環器内科などの専門診療科やその担当者を事前に明示しておくことの重要性も謳われています。また、専門診療科がない場合は院外も含め連携体制を構築しておく必要があるとされています。
なお、肺血栓塞栓予防管理料の算定に関する厚労省の通知の1つに、「肺血栓塞栓症の予防に係る計画的な医学管理を行うに当たっては、関係学会より標準的な管理方法が示されているので、患者管理が適切になされるよう十分留意されたい」とあります。ここでいう適切な患者管理とは、日本循環器学会のガイドラインに則った診断・治療・予防の実行を指します。たとえば、ガイドラインではVTE(静脈血栓塞栓症)のリスクレベルに応じた予防法について、下図のように示しています。保険請求上のルールと併せて、こうした基準を参考に医学的な評価・管理を行うことで、算定上の適切性が担保されるということになります。
<編集:角田歩樹>
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