入職後のミスマッチを防ぐため、面接に来てくれた医師にはきちんと、自院の実情を伝えておきたいもの。しかし、そこには思わぬ落とし穴も―。コンサルタントが実際に遭遇した面接NG事例を取り上げる本コラム。今回は、自院の業務内容についてきちんと伝える方法を考えます。
≫ 今回のNG発言 ≪
うちはすごく忙しい病院ですが、先生は大丈夫ですか?
漠然と「忙しい」と言われても
ある採用担当者は面接で、上記のように医師に念押ししました。自院の多忙さを入職前にきちんと伝えておこうという誠意を込めた発言でしたが、言われた側の医師は何がどう忙しいのか分からず、面接終了後、漠然とした不安が残ってしまったそうです。
何を「忙しい」と感じるかは人それぞれ。医療機関の地域におけるポジションや救急の応需状況などによっても、業務の内容や忙しさの度合いは変わります。そして忘れてはならないのは、転職活動をしている医師の中には、既に多忙な環境で働いている人も多いということ。その医師が在籍してきた医療機関と比べたら大した業務量ではないのに、採用担当者が過度にあおってしまうケースも往々にして存在するようです。
業務内容は数値化して伝える
こうしたケース、どのように防いだら良いのでしょうか。
エムスリーキャリアで医師と医療機関のマッチング支援に携わってきた清水雄司氏(医療コンサルティンググループ)は、業務内容を医師に伝える際のポイントは、“業務の数値化”にあると指摘します。
「単に『当院は忙しい』などと主観的な情報をそのまま伝えるよりも、外来コマ数や患者数、外科であれば手術件数、訪問診療があれば施設と居宅の内訳がそれぞれ何件程度なのかなど、業務にかかわる数値を客観的に伝えることが大切です。その方が医師の側もそれまで在籍してきた医療機関と比較できる分、入職後の業務内容がイメージしやすいと思います」
病院経営事例集が過去に取り上げた事例で言えば、千葉県我孫子市の平和台病院のように、業務に係る主要な数値を冊子にまとめて紹介会社に伝えているというケースも(参考:「紹介会社とどう付き合う?「医師を紹介されやすい病院」になる方法」)。このほか清水氏は、現場の医師から直接、業務の忙しさや職場の雰囲気を説明してもらう機会を設けるのも効果的だと話します。
人材採用の現場において、ミスマッチは頭の痛い問題。だからこそ、採用担当者の主観をそのまま伝えるのではなく、求職者の医師に腑に落ちる形で、実情を伝えることが大切です。
1982年生まれ。神奈川県出身。大学卒業後百貨店業界を経て、2012年エムスリーキャリア株式会社入社。現在は、医療コンサルティンググループにて、全国の医療機関・100社以上の医師紹介会社に対して、業界全体にとっての「価値あるマッチング」の支援・実行に携わる。
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