目線がバラバラの職員たち…事務長がチーム力を高めるには?【ケース編】:病院経営ケーススタディーvol.6

X病院の概要
  1. 病床数:80床(医療療養Ⅰ50床、介護療養30床)
  2. 場所:地方都市(県庁所在地)
  3. 職員数:約150名
  4. X病院のその他のケースはこちら
  5. vol.2:経営層の鶴の一声、その判断は正しいのか
    vol.4:病床転換時の受け入れ患者層の入れ替え、どう進めるべき?

チームの重要性を思い知ったS事務長

前事務長の定年退職に伴う繰り上げ人事により、X病院の事務長となったS事務長。
着任早々、病床転換という一大プロジェクトに着手することになった同氏は、経営陣の判断に対する現場の反発や患者層の入れ替え、連携医療機関に対する広報など、様々なハードルに直面した(vol.24を参照)。自身は長年X病院の総務課で勤務してきたものの、医療現場や医療専門職、診療報酬、地域連携といった病院経営の基盤について、ほとんど無知であると痛感したのだった。

“チーム医療”の重要性が叫ばれて久しいが、総務課時代はあまり意識しておらず「医療専門職内での話だろう」とどこか他人事としてしか認識していなかった。
しかし、プロジェクトを遂行するためには医療のプロである医療者と、それを経営に反映する事務職の双方が、同じ方向を向いて取り組まなければならない。S事務長は病床転換を通じて多職種と深く関わったことで、初めて医療者と事務職の間にある溝が深いこと、それを埋めるため「チーム」や「組織」を意識しなければそもそも病院運営は困難だということに気がついた。そこで、改めてプロジェクトに携わるメンバーを客観的に見てみることにした。

X病院の職員たち



こうしてみると、実に様々なタイプの職員がこの病院の構成員として勤めている。そういうS事務長自身も、以前は日々の業務をただこなすだけ、という毎日を送っていた。

病床転換はするまでも大変だが、転換の努力を収益に反映させるためにはその後の運用に気を配り、根気強くフロー構築や改善を重ねていく必要がある。アイデンティティーが事務職とは異なる医療者や、病院運営へのモチベーションがそこまで高くない職員も今以上に巻き込んで取り組まなければならないだろう。S事務長はX病院のさらなる発展を目指すため、チームづくりに力を入れていこうと強く決心したのだった。

【設問】
  • あなたがS事務長だったら、どうやってチームビルディングに取り組みますか?
網代祐介(あじろ・ゆうすけ)
社会医療法人社団光仁会 第一病院(東京都葛飾区、一般病床101床(うち、地域包括ケア病床12床)・医療療養病床35床)にて医療福祉連携室室長と経営企画室を兼務。医療ソーシャルワーカー(MSW)として亀田総合病院で経験を積んだ後、医療課題は社会経済、経営、マーケティングの視点からも解決していく重要性を実感し、経営学修士(MBA)を取得。その他、医療経営士1級、介護福祉経営士1級などを取得し、講師業などにも取り組む。(過去のインタビュー記事

<編集:角田歩樹>

>>【解説】はこちら

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