劣等感から学ぶこととは?―医師への選択、医師の選択【第8回】

著者:野末睦(あい太田クリニック院長)

高校は長野県立長野高等学校に通いました。長野高校にはいわゆるバンカラで、自由で、大人びた雰囲気が漂い、若者のエネルギーが満ちていたように思います。

高校に入って感じた“挫折感”

中学までは向かうところ敵なしでしたが、高校に入るとそうではありませんでした。まず、高校に入ってすぐにバレー部に入りましたが、夏頃にはやめてしまいました。その理由は、学業成績が悪かったことに加えて、バレーの練習が苦痛になってしまったのです。高校に入ってすぐの大会にレギュラーとして出場し、想像以上の活躍をした私は、県の関係者の目に留まり、国体強化選手に選ばれたのです。そして夏休みには強化合宿に参加するように言われました。これ自体、練習がつらいと感じ始めていた私にはプレッシャーでしたが、加えて苦手なレシーブの練習ばかり集中的にさせられました。やったことのないフライングレシーブの練習の時の傷が私の顎にまだ残っているくらいです。いままで、一人っ子でちやほやされてばかりいた私にとって、これらのプレッシャーに耐えることはできませんでした。大きな挫折を味わったのです。

そして、バレー部をやめた後は、友達の誘いで男声合唱団に入りました。「根性、根性」で息がつまってしまった私にとって、オアシスのようなところでした。隣の女子高の合唱部と交流会を開いたり、顧問の先生の音楽に対する想いをうかがったり、そんな活動の中に、個々人の感覚を大切にする雰囲気が漂っていたからです。

劣等感から学んだこと

でもそんな中で、私が何度も何度も味わって、今でも強い影響を受けている感情があります。それは「劣等感」です。実は私は「音が取れない」のです。音を取るとは正確な音程で歌い始めることです。後ろで誰かが正確な音程で歌ってくれれば、その人の音程を聞いて、かなり正確な音程で歌うことはできるようになりましたが、一人で、音を取るということがどうしてもできなかったのです。いつも、ソロを歌い上げる先輩や同級生を、うらやましく感じるとともに、努力しているのに、一向に音が取れないこと、発声も上達しないことに対して、強い劣等感を持ったのです。

私にとっての影の部分の一つですが、この経験を通して、弱い立場の人、物事がうまくいかなくてネガティブになってしまいがちな人に対する共感みたいなものが醸成されたことは間違いありません。医師としての人生を振り返ってみると、とても大事なことだったと思えるのです。

「どんな習慣を身に付けるべきでしょうか?また、劣等感から学べることとは?」への私的結論

中高時代に、自分に合った良い習慣をつけるのはとても大事。そして自分にポジティブなセルフイメージを形成していきましょう。でも、劣等感、そこから導かれる謙虚さを身に付けることも不可欠。


 

野末睦(のずえ・むつみ)

医師という職業とは―医師への選択、医師の選択(野末睦)筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。

 

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