患者来院型オンライン診療で「医師がいないからできない」をゼロに

医療DX

前編では、香川県内でクリニックを展開する西高松グループにおける「患者来院型オンライン診療」の導入事例をご紹介しました。今回は、この新しい診療モデルを提案・支援する株式会社エムスリーキャリアのコンサルタント・本山晴基氏に話をうかがいました。「患者来院型」だからこそ実現できる地域医療の形や、導入を成功に導く独自のサポート体制、そしてサービスに込められた思いをお伝えします。

「移動時間」という壁をなくし、地方医療の可能性を広げる

これまで都市部から離れた地域の理事長・院長先生とお話させていただくと、「地域医療のために新たな診療科を始めたいが、医師を採用できない」「遠方から、新幹線代などの多額のコストをかけて来てもらっている」といったお悩みをうかがう機会が度々ありました。

勤務医にとっても同様に、「移動」は大きなボトルネックになっています。片道に数時間もかけるような働き方は、1人の医師としても国全体の貴重な医療資源としても”効率的”ではありません。

オンライン診療はこうした「物理的な距離の制約」を解消するのにうってつけですが、限界もあります。たとえば、患者さま自身がIT機器を操作する負担が大きかったり、血液検査や専門的な処置ができないため、十分な診療を提供しきれなかったりということもあるでしょう。

そこで私たちが構築したのが、「患者来院型オンライン診療」です。患者さまにはいつも通り医療機関に足を運んでいただき、診察室にある画面の向こうの医師が診察を行うという新しいスタイルを採用しました。この形であれば、患者さまにとっては、従来の対面診療と変わらない安心感のなかで受診でき、検査の面や何かあった場合でも現場のメディカルスタッフからサポートを受けられます。

そして医療機関にとっては、「移動」という物理的な問題を解消できます。医療機関目線では全国の優秀な専門医を採用することが可能となり、新たな診療科の開設や外来体制の強化へ繋がります。そして、勤務医目線では、通勤時間にかかっていた時間を自己研鑽やプライベートの時間に充てられます。地方医療のニーズと、医師が求める柔軟な働き方を結びつけるためにこのサービスが立ち上がりました。

医療機関目線では、現場のメディカルスタッフの補助をリアルタイムで得られる点が一番の違いですね。IT機器の扱いが難しい患者さまでも受診しやすいですし、検査や処置の幅も広がります。患者目線では、「日本全国どこにいてもトップレベルの専門診療を受けられる」「いつもの医療機関でいつものメディカルスタッフが側にいる」という異なるふたつの安心感を得られる点が強みです。

地方でも「1日で複数応募が来る」オンライン診療の強み

弊社にご登録いただいている先生の中には、分の専門スキルを地域医療に役立てたいという志を持つ方が多くいらっしゃいます物理的な距離の問題で叶わなかった地方への貢献が、患者来院型オンライン診療であれば、可能になるということで、多くの先生に共感をいただきました。現在では3,000名を超える先生方にご登録をいただいています(2026年5月時点)。

また、医師紹介(マッチング)の柔軟性も強みです。従来の対面診療では「週1回2時間」のような短時間・低頻度の勤務形態は敬遠されがちでした。しかしオンライン診療の場合は、「スキマ時間で無理なく貢献できる枠」として人気があるのです。そのため採用のリードタイムも短く、平均して数日、早ければ1日以内に複数名の応募が入ることもあります

一番のメリットは、「無駄なコストを削り、必要な時にだけピンポイントで医師を採用できる点」です。従来は「地方だから極端な高待遇にしないと応募が来ない」といった問題がありましたが、オンラインであれば全国平均の適正な給与水準で採用が可能です。さらに新幹線代や宿泊費といった付帯費用も完全にゼロになるため、トータルの人件費を従来の3分の2程度に抑えられるケースが多いです。

また、「患者さまが集中する特定の曜日や時間帯だけ」オンラインの先生に入っていただく、といった非常に効率的な人員配置も可能になります。新たな診療科を立ち上げる際にも、「短時間×非常勤(スポット)」でスモールスタートができるのです。経営層の方々にとっても、極めて低リスクで新たな事業にチャレンジしていただけるのではないでしょうか。

「患者さまや現場の方々に新たな負担を感じさせない」「できる限り対面診療と変わらない安心感を提供する」という点を常に心がけています。医療機関ごとに事情は異なるため、それぞれの状況に合わせて柔軟に伴走します。機械的にシステムを構築したりオペレーションを設計したりするのではなく、現場の方々が安心して実施できるようになるまでサポートさせていただきます。

物理的な距離を超え、心理的な距離を近づける

このお声をいただいたときは、本当に嬉しかったですし、オンライン診療の持つ本当の価値に気づかされた気がします。

対面診療では、医師がパソコンの画面を向きがちになり、患者さまと視線が合いにくいという場面が少なくありません。しかしオンライン診療では、お互いの顔が画面いっぱいに映し出され、医師も患者さまも、しっかりと相手の表情を見つめ合いながら会話をすることになります。「自分の顔をちゃんと見て、一対一でじっくり話を聞いてくれている」というこの独特の環境が、良い意味で患者さまの緊張をほぐし、「先生、実はね……」と本音を話しやすくする安心感に繋がっているのだと感じます。

デジタルは”冷たいもの”と思われがちですが、患者来院型オンライン診療は「物理的な距離はあっても、対面以上に心理的な距離は非常に近づけられる空間」を創り出せる。その可能性を今回教えていただいた気がします。

「医師がいないから、できない」とお悩みの医療機関様にこそ、ぜひ一度「患者来院型オンライン診療」をご検討いただきたいです。「思い描く医療のビジョン」をどうすれば実現できるか、現場のスタッフの皆さまや、全国の志ある医師たちと手を取り合いながら、一緒に新しい地域医療の形を創り上げたいと考えております。我々エムスリーキャリアは医療機関の皆様とともに「医療業界の”つぎ”」を創るべく、これからも支援を続けてまいります。

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