3病院から内定も!転職で「勝てる」病院事務管理職とは? 専門家に聞く病院事務職のキャリア【後編】2017改訂版

【編注:2017年3月 改訂】
転職の情報収集がしにくい病院事務職。前回に続き、「事務長紹介サービス」担当者の堀口航平氏(エムスリーキャリア 医療コンサルティンググループ)に、病院事務長や医事課長などがどうしたら転職で「勝てる」のか、“勝ち組”の特徴や、実際の転職事例について聞きました。

医事課長として3病院から内定を得たケースも

―病院事務職は他の医療従事者と違い、国家資格といった職種共通の資格がありません。自分自身で取得した民間資格などは、転職においてアピールポイントになりますか?
たしかに、事務職は病院の中で、唯一資格を要しないポジションで構成されている部署です。やはり、医師、看護師と比較して、「資格がないこと」にコンプレックスを感じている事務職の方にお会いすることはありますが、引け目に感じる必要は全くありません。

診療情報管理士や社会福祉士は別として、資格の有無が内定に直接は影響しないという印象です。ただ、「医療経営士」や「簿記などの事務系職種に関する資格」は取得しているなら履歴書に書いておいた方がいいでしょう。こうした資格を書いておくことで、仕事に対する意欲を示す根拠になります。また、面接官が資格に触れてくれたら、取得にあたって学んだことを実務にどう活かしているかも話せるといいのではないでしょうか。

―資格は話のタネになるということですね。それでは、実際に転職市場でニーズが高いのは、どんなスキルを持った事務管理職だと思いますか?
horiguchi_4経営改善の旗振り役として、自院の戦略策定から実行までを担ってくれる人材だと思います。

昨今の医療環境の急変の中で自院のポジショニングを確立しなければならない医療機関も多く、医事や総務の個別業務のスペシャリストというよりは、全体最適の視点を持って戦略を推進・実行するような、バイタリティあふれる人材が求められている印象があります。

特に医事部門では、レセプトコンピュータや電子カルテが導入された結果、業務の効率化が進み、1プレーヤーとしてのスキルというよりは、戦略的な思考を持ってDPC分析、施設基準取得、病床再編を実施し、医療スタッフを巻き込みながら、医療機関を変えられる人材かどうかが一つの指標になっているのではないでしょうか。実際にそうした優秀な方が、3病院から医事課長として内定をいただいた例もあり、優秀な方であれば、それくらい強気に転職活動ができる状況です。

こう言うと、ベテラン勢ばかりが転職で有利なようにも聞こえますが、実際は30代-40代の方々も高く評価されています。前回お話しましたが、近年、事業拡大を進めるグループ法人が台頭していて、こうした法人はベンチャー気質がなじむ若手・中堅人材を求める傾向にあります。

求職者の中には、「マネジメント経験が足りないのではないか」とお考えの方もいますが、そこで立ち止まるのはもったいないかもしれません。今後どのようなキャリアや経験を積みたいのか定め、やる気や向上心で経験をカバーするつもりで臨めば、評価してくださる医療機関もあります。若手やマネジメント経験がない方でも、「医事課、総務課、人事など、病院内で様々な部署を幅広く経験している方」や、「一般企業で営業や企画などの渉外業務を経験されてきた方」は、そのポテンシャルを評価される傾向がありますね。

―医療機関に対して意欲をいかに示すかは、一つの要素になりそうですね。そこにスキルも備わっていれば、さらに評価されるということでしょうか。これまでに印象的だった転職事例はありますか?
携わった案件はすべて印象的ですが、特に印象深い方が2名いらっしゃいます。

1人目は、わたしが初めて担当したAさん。先ほどお話しさせていただいた、複数の医療機関から内定をいただきやすいタイプの方です。施設基準や診療報酬改定といった医事知識にとても精通されており、事務長として新病院の開設や収益改善など多くの実績を積まれてきた方でした。しかし、ご希望の年収も高額のため、応募した病院から年収への懸念が出たことがありました。そのためAさんの価値を病院側に理解いただくために、Aさんから見た経営改善提案を提出していただいたところ、理事長から「まるで院内の職員が書いたと思えるくらい当院のことを理解している」と絶賛をいただき、晴れてご希望年収での内定となりました。とくに嬉しかったのは内定後、キャリアに悩まれている知人・後輩の方を何名も紹介してくださったことです。その後輩の方もさらに知人を紹介してくださって…。結果、Aさんを起点に5人ほどご紹介いただきました。信頼がないと人は人を紹介しないと思うので、今後の自信につながりました。

2人目は、世界規模で展開している飲食店の黎明期~拡大期を経て医療業界に転身、多施設展開をしている眼科クリニックで成果を残されたBさん。豊富なマネジメント経験、ビジネスライクな考え方が強みでした。健康診断の分野で新規事業を始める医療機関から「若くて新規事業拡大経験のある方がほしい」と求人をいただき、Bさんをご提案したところ見事マッチング。ビジネス経験が医療業界で活きた好例です。Bさんの入職後、「一緒に働いてくださる医師を探しているのですが、サポートしていただけますか?」とお電話いただいたときは、とても嬉しかったですね(編注:エムスリーキャリアでは、医師の採用アウトソーシングサービスも実施している)。

変わる病院事務職のキャリア 展望を開くためにも

―求職者の方とお話するときに、心がけていることはありますか?
horiguchi_5「わたしがその方だったらどこで働きたいか」を意識しています。その方の強みはもちろんですが、どんなことにやりがいを感じ、今後の人生で何を大切にしていきたいのか、できる限りヒヤリングする。求人をご紹介する際には、その医療機関の現状や、入職後に期待される役割を可能な限り明確に伝えて、その方にとって理想的なキャリアビジョンが描けそうか、検討の材料にしていただけるように心がけています。

詳しくお話を伺う中で、その方にとって“今”が転職のタイミングではないと判断することもありますし、希望に合った医療機関がすぐには見つからない事態も当然起こり得ます。ただ、我々にご相談いただくことで、ご自身の強みや今後伸ばすべきスキルが明確になれば、転職する・しないに限らず、心境の面で今後のキャリアの展望がひらける面もあると思うんです。もやもやとした状況でも、まずはご相談いただければ、誠心誠意対応させていただきます。

医療業界が変わる今、病院事務職のキャリアのあり方も大きく変わってきていると思います。そんな今だからこそ、転職をお考えの方にも、キャリアに対して漠然とお悩みの方にも、「相談して良かった」と思ってもらえるような支援をさせていただきたいと思っています。

堀口航平(ほりぐち・こうへい)
新潟大学大学院自然科学研究科修了後、人材紹介会社の創業に参画。中小・ベンチャー企業を中心に、年間100名以上の就職支援を行う。その後、エムスリーキャリア株式会社に入社し、医師採用コンサルタントとして全国の医療機関を支援。現在は、医療コンサルティング部門にて事務長紹介サービスを担当。

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