研究留学で触れた一流のセルフモチベーション―医師への選択、医師の選択【第22回】

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著者:野末睦(あい太田クリニック院長)

 
次にこの留学生活中にとても印象に残ったことは、病院や大学にいた研究者や医師、さらには研修医の皆さんが、とても機嫌がいいのです。若い人を指導するときなども、けっして強い口調などにならない。これはわたしにとって大きな驚きでした。わたしが研修(第16回「初期研修医が優先すべきこと1」参照)を受けた筑波大学消化器外科には高いレベルで臨床を行い、そして患者さんには徹底的に尽くすという素晴らしい伝統があった一方、看護師さんなどのメディカルスタッフ、さらには若い医師に対してはとても厳しく、時にはつらく当たることがありました。また医師も、非常に気難しい表情をしていることが時折ありました。忙しい業務の中では仕方ないことなのかなあと理解していましたが、この2年間の留学中には一度も経験しなかったのです。

この体験はわたしのいまの考え方にとても大きな影響を及ぼしています。一流の人は自分自身の機嫌を自分でしっかりと取り、いつも上機嫌、そして周囲の人、特に若い人に対してとても穏やかに接すると同時に、いつの間にか彼らをやる気にさせているのです。人を動かすのに恐怖、不安や命令などを使わずとも、一流になれるのだと悟ったのです。

誰が相手でも一人前として認める

このことをよく表すJain教授の言葉があるのでご紹介したいと思います。それは、わたしの書いた論文を添削するときには、必ず「なかなかいい論文だね。でも少し直したほうがいいと思うところがあるのだけど、朱で直していってもいいですか?」と尋ねてくるのです。留学開始から半年もたたないうちに1つ目の論文を書いた時にも、このように言われました。まだまだ英語は稚拙な頃です。直したいところはたくさんあったでしょう。事実、添削された後は朱で埋め尽くされるのですが、そんな状況でも必ず尋ねてくれたのです。一人の研究者として、一人前に扱ってくれているなあと実感する、よいきっかけでした。また教授自身の発表においても、自分のスライドを皆に見せて、一人ずつ意見を聞くのです。それに対してスタッフも必ずなにがしかの意見を述べ、教授も尋ねたからにはその意見を取り入れようと、工夫するのです。この姿勢には、本当に驚かされました。

「海外留学で学べることとは、何でしょうか?」への私的結論

海外留学は世界一流のところに行き、その世界を体験するのがいいと思います。それにより、世界一流との交流、自分を上機嫌に保つ方法、平等なディスカッションなどについて、学び取れるでしょう。

≫次回に続きます≪

野末睦(のずえ・むつみ)

初期研修医が優先すべきこと2―医師への選択、医師の選択(野末睦)筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。

 

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