本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣が、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報の取り組みを取材・報告します。
著者:松本卓/病院マーケティングサミットJAPAN Executive Director
小倉記念病院 医療連携課
目次
医療機関の広報は、社会やステークホルダーに対して自院の医療サービスの情報を伝え、好意を抱いてもらうための仕事。そのため広報担当者は、まず自院の医療情報を仕入れる必要があります。しかし、意外と苦戦している人も多いのではないでしょうか?今回は私が日ごろ実行している情報収集のための5か条をご紹介します。
1.医師とのコミュニケーションの機会を増やす
広報担当者にとって、「重要だとわかっているけど、ハードルが高い」のが、医師からの情報収集です。すでに医師と関係性ができている人は「そんなの、直接話を聞きにいけばいいじゃん」と思うかもしれません。しかし、医師とコミュニケーションを円滑に取ることができる関係を築くまでには、時間がかかるケースもあり、苦手意識を持つのも理解できます
病院事務職あるあるですが、一度強烈な(いろんな意味で)医師と出会ってしまうと、トラウマのようなものを持ってしまい、「医師とは極力コミュニケーションを取りたくない」と思ってしまう人も……。そうなると悪循環にはまります。
自分から極力コミュニケーションを取らない→医師から認識されない→どうしても医師に依頼しないといけないことが発生する→医師は「よく知らない事務職員が急に話しかけてきた」と感じ、心を開かない→事務職員はそんな医師の態度に萎縮して、ますますコミュニケーションを取りにくくなる――。
でも日本には、ものすごい数の医師がいるんだから、「医師=こんな人間」なんて一括りにできませんよね。誰にでも分け隔てなくフレンドリーに接する医師も、高圧的な対応をする医師もいます。いろんな人がいるのは、看護師や薬剤師、そしてもちろん事務職員だって同じです。
医師と円滑なコミュニケーションをとることができる関係性を築くために、私が実践している3点をお教えします。
1つ目は、むやみにPHSを鳴らさないこと。
用事があれば、できる限り会いに行き、直接顔を合わせて話をするようにしています。対面だと世間話もしやすくなるので、関係性が深まります。
2つ目は、特に用がなくても医局に遊びにいくこと。
医局には大抵誰かしら医師がいるので、見かけたら「先生、最近はお忙しいですか?」と話しかければいいんです。
3つ目は、広報活動で使用する写真を各現場で撮りまくること。
目的があるので依頼しやすいですし、手術室やカテーテル検査室に出入りする機会が増えることで、会話も増えます。そして、その場でしか得られないような情報も入ってくるようになります。
この3つを心がけていると、事務所で席に座っているだけでは聞けない「こんな新しい医療が始まる」「このガイドラインが変わる」「他病院がこんなことを始めたらしい」というような情報が集まってくるようになります。
2.医療情報を掲載しているwebサイトをチェックする
M3などの医療情報サイトを毎朝チェックしています。こういったサイトには、新しいデバイスの登場から、ガイドラインの変更、海外の論文を簡単にまとめたものまで、さまざまな情報が掲載されています。
ただ、見ただけで完結してはダメですよ。「これは!」と思う情報を見つけたら、担当医師に連絡して事情を聞くんです。例えば「脳梗塞に対するtPA投与をせずに血栓回収する研究結果は、国内でどのように評価されているのか」「ループレコーダーでは脳梗塞は減らないのか」など、当院の医療に大きく関連しそうな情報は医師に直接確認しています。
3.資材課の購入品情報を確認する
当院では、購入予定の医療機器について、資材課から広報に事前に情報共有されます。そうすることで、症例実施前に広報をするための素材集めや、担当医師へのヒアリングが行えます。医師との日常会話だけでは全ての情報を拾い上げられるわけではありませんので、購入品の情報は貴重です。
4.診療科ごとの「年度計画書」をチェックする
来年度、どの診療科がどのような医療を行っていくのかという情報がすべて確認できる「年度計画書」が閲覧できると非常に助かります。当院では、ありがたいことに事務長が企画広報課に閲覧許可を与えてくれているので、毎年1月には翌年度の広報で取り扱う医療内容が整理できています。
特に医師の増減、さらに言うとオペレータークラスの医師の異動が把握できると、来年度に広報で力を入れるべきチームもわかります。いまは、閲覧できるだけですが、院長・事務長が診療部長に対して行っている年度目標のヒアリングにも、同席させてもらいたいくらいです。
5.医療機器メーカーの担当者と話す
最後に、医療機器メーカーの担当者からの情報です。これも非常にありがたいです。医療機器や治療について、医師より詳しく教えてくれますし、広報に必要な画像などは正式な手続きをすれば提供してくれます。
以前、他院の広報担当者から言われたことがあります。「小倉記念病院さんは、自前でデバイスの撮影や、治療のアニメーション動画を作成されていて、ものすごくお金かけていますよねぇ」。いいえ、お金はかけていませんし、アニメーション動画を自前で作れるはずもありません。もちろん素材は、メーカーから提供してもらっています。これができると知らないということは、メーカー担当者と話したこともないのかもしれません。
私は、新デバイスの導入や適応の拡大、100症例目がいつ実施されるかなどの情報は、ほとんどメーカー担当者から得ています。
以上、自院の医療情報を得るための5か条をお伝えしました。情報収集のしやすさは、病院の風土によるかもしれませんが、「コミュニケーションを担当する広報担当者が、コミュニケーションを取れない」では話になりません。思いっきり各方面に突っ込んで、情報収集を行ってください!! たまに怪我もしますが……(笑)
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