専門家が語る適時調査対策!2022年度改定に向け、準備しておくべきことは?─適時調査対策支援研究所 瀬下忠男氏

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年々、複雑化する施設基準。日ごろの管理に加え、適時調査への対応に頭を悩ます担当者は少なくないのではないでしょうか。2001年より東京社会保険事務局や関東信越厚生局で施設基準を担当し、適時調査に精通する瀬下忠男氏は「指摘・返還が生じないように、適切な対策を知ってほしい」と呼びかけます。退官後、2020年には適時調査対策支援研究所も立ち上げた同氏が、対応のポイントや2022年度の診療報酬改定に向けて準備しておくべきことを語りました。
※2021年8月に開催された「オンライン病院事務長塾」主催セミナーの内容を編集しています

目次

いまさら聞けない!適時調査の基本

適時調査対策支援研究所・瀬下氏
適時調査対策支援研究所・瀬下氏

まず、適時調査の基本やよくある質問、注意点を紹介します。

適時調査とは?

適時調査は厚生局が主体となり、健康保険法に基づいて実施する。
※医療法に基づく立入検査(医療監視)とは別物なので注意

適時調査は入り口で、何らかの指摘が発生したら指導、指導でも解決できない場合に監査(適時調査<指導<監査)の順で実施される。

適時調査の対象となる施設は?

基本診療料/特掲診療料/入院時食事療養及び入院時生活療養にかかる施設基準において、届出を受理した保険医療機関で、原則「医科(病院)」が対象。

適時調査の実施サイクルは?

対象となる保険医療機関数が都道府県内にどのくらいあるかによって異なるが、おおむね、以下の目安で実施される。

  • 対象保健医療機関が300施設以上の都道府県:3年に1巡
  • 対象保健医療機関が150施設未満の府県:2年に1巡

ただし、広域の自治体においては地域ごとに一括して実施する場合がある。また、患者等からの情報があった場合や新規開設の施設は優先的に実施される。

適時調査の体制・所要時間は?

重点施設基準が24基準までの場合は、以下を標準として実施される。

  • 体制:調査担当者3名以内
  • 調査時間:半日程度(約3時間)以内

※重点施設基準が25以上の場合は、調査担当者の増員や1日がかりでの調査となる可能性がある

適時調査の調査範囲は?

施設基準に係る告示・通知に定める内容を満たしているか。
※療養担当規則も含む
※詳細は厚生労働省の「適時調査実施要領等」を参照

施設基準の要件を満たせていない場合の経済的措置は?

・最大5年間分の返還

施設基準を満たしていないことが判明し、届出の変更・辞退を求める場合は、前回の適時調査(特定共同指導・共同指導を含む)以降分を対象として、施設基準を満たさなくなった月の翌月~現時点までの返還が求められる。

※以上は、セミナーでの解説内容を一問一答にまとめたものです

適時調査の対応のポイントとしては、施設基準の届出書の控えを適切に保管しておくことが極めて重要です。厚生局は、病院に施設基準の届出書の控えが保管されている前提で、その控えをもとに適時調査を実施します。届出書の控えに保存年限はなく、永年保存が基本。少なくとも、直近の届出書はすぐに提示できるように保存しておきましょう。

特に入院時食事療養のように、届出を1度出した後はそのまま見直す機会がなく、何年も過ぎてしまいがちなものは注意が必要です。また、単なる人数の変更など届出不要のケースにおいても、「いつ」「なにが」変わったのかという点や、変更後も要件を満たせている根拠(たとえば研修の修了書の有無など)を確認して記録を残しておくと、いざというときにスムーズに対応できるでしょう。

2021年度中に準備しておくべき5つのポイント

2021年度の適時調査の実施の有無について、厚労省は以下のような方針を示しています。

2021年度の適時調査の実施について

  • 適時調査:自主点検にて実施(実地での調査は原則中止)
  • 個別指導:実施(ただし、高点数の保険医療機関等に対する個別指導は実施しない)
    再指導は実施しないが、情報案件・(特定)共同指導は実施される

自己点検の提出物

「送付書」(5種類)と届出している施設基準の「自己点検結果報告書」のみ。
厚生局からの照会などに備え、報告書の控えおよび根拠となる資料も保管しておきましょう。
※自己点検の対象となる施設基準の確認・報告書のダウンロードは厚生労働省のホームページを参照

今年度のポイントとしては、自己点検も実地の調査同様、しっかり対応することです。加えて、2022年度の診療報酬改定に向けた準備を早めに始めておくことをおすすめします。ご存じのとおり、診療報酬改定に際しては、短期集中的に様々な対応が必要となります。なるべくスムーズに対応するためにやっておくべき対策として、以下の5つをおすすめします。

1.前回の適時調査以降にかかわる運用状況の確認

人事異動、転入出等による専従者等の変更はないかをチェックしておきましょう。改定のタイミングで医師・看護師の転入・転出が発生します。施設基準の要件を引き続き満たせるのかどうか、しっかり確認しておきましょう。また、人事異動によって施設基準に精通していた担当者が他部署へ異動してしまう可能性も。引き継ぎなどもなるべく早めに進めておくことが望ましいです。

2.現状の運用の確認

新型コロナウイルス感染症流行の影響以外に、要件を満たしていないものはないか、管理が疎かになっていないか、点検しましょう。

3.施設基準管理体制の確認

コロナ対応に追われて、施設基準管理が放置されてしまっている病院は要注意です。コロナの影響でやむなしと認められるケースもありますが、判断は厚生局次第です。管理体制が崩れていないかを確認し、立て直しを図りましょう。

4.2022年度診療報酬改定への対応体制の構築

厚生局への疑義照会、近隣施設との情報共有、院内連携の徹底など、事前に体制を構築しておきましょう。特に疑義紹介については、厚生局が質問・確認事項に対応する際、既出の質問より新規の質問が優先される傾向にあります。このため、質問によっては返答が遅れる可能性も。厚生局へ疑義照会をした内容は、地域内で共有できるようにしておくのもいいと思います。

5. 近年の傾向をふまえた準備

最近の改定の傾向をふまえ、「この施設基準が新設されそう」「こういった要件が加わりそう」という予測をたてて準備をしておくとスムーズです。たとえば、以下のような対策が考えられます。

(1) 基本診療料について

・看護師の研修修了が要件の施設基準が創設されるケースが増加
2020年4月以降で新たに研修を受けたという場合は、いつ誰が受けたかを記録し、修了書のコピーなどを保存しておきましょう

・部門、チーム、委員会等の設置が要件とされるケースが目立つ
チームの設置が要件になりそうなものは、あらかじめ体制づくりや部門の設置などの準備を進めておきましょう

(2)特掲診療料について

・先進医療から保険収載されるケースが多い
新規の技術や普及が進んでいるものなどは施設基準化される可能性も。あらかじめ、医師数や症例数の集計、医師の経験年数がわかる書類の整備、指導医・専門医などの認定証の確保などをしておく

過去の指摘事例から対策を学ぼう

最後に、適時調査に対応する際の参考として、過去の指摘事例をいくつか見てみましょう。

1.入院基本料における通則的ルール(5基準※)に関する指摘

※入院診療計画/院内感染防止対策/医療安全管理体制/褥瘡対策/栄養管理体制

5基準は必須の要件として、当然できるものという前提で盛り込まれているルール。その割には、5基準に関する指摘がなかなか減りません。たとえば、入院診療計画書については以下のような指摘が出ています。

  1. 入院診療計画書について、関係職種が共同して総合的な診療計画を策定すること。
  2. 入院診療計画書について、入院後7日以内に作成し患者に説明するとともに、文書を交付すること。
  3. 入院診療計画書の記載内容について、画一的な表現が多いため、患者の個別性に配慮し、具体的で分かりやすい表現となるよう工夫すること。
  4. 入院診療計画書について、高齢者医療確保法の規定による療養の給付を提供する場合の療養病棟における入院診療計画については、別添6の別紙2の2を参考にすること。
  5. 入院診療計画書について、通知で定められた項目を網羅し、必要事項を適切に記載すること。
    ア 作成年月日、主治医以外の担当者、症状、特別な栄養管理の必要性の有無又は看護計画が記載されていない。
    イ 病棟(病室)、検査内容及び日程に係る項目がない。
    ウ 病名の記載がない。 算定要件と同様の内容が施設基準で規定されている
    エ 推定される入院期間の記載がない。

ここで改めて考えていただきたいのが、現在の入院診療計画書は患者さんに寄り添った内容になっているか、という点です。入院診療計画書は入院して間もない患者さんに安心感を与え、医療従事者との信頼関係構築につなげるためのもの。必要な情報が網羅されているか、わかりにくい表現になっていないかなど、患者さん視点で考えて作成いただけば自ずと指摘も減るはずです。

2.入院基本料における看護配置(様式9)に関する指摘

様式9は病棟看護師の毎日の勤務記録を反映させるため、細かい項目が多くミスが生じやすいと言えます。たとえば、以下のような指摘があります。

平均入院患者数・平均在院日数について

  1. 1日平均入院患者数について適正に計算すること
    (ア) 1日平均入院患者数の計算期間が誤っている。
    (イ) 1日平均入院患者数について、原則として直近1年間の延入院患者数を延べ日数で除して得た数とし、小数点以下は切り上げること。
    (ウ) 計算に用いる入院日数に、退院した日は含めないこと。
    (エ) 計算に用いる入院日数に、入院日に死亡又は退院した場合を含めていない。
    (オ) 減床後3か月以上の実績がある場合、減床後の延入院患者数を延日数で除して得た数とすること。
  2. 平均在院日数について適正に計算すること
    (ア) 入院基本料に係る平均在院日数の対象患者について、通知に基づいた者となっていない。

よくあるのが、平均入院患者数と平均在院日数で、対象となる患者さんが異なるにもかかわらず同じ患者さんを対象に算出してしまっているケースです。以下のとおり、分けて集計する必要があるため注意しましょう。

  • 平均入院患者数:全患者が対象
  • 平均在院日数:保険診療の患者のみ対象

他にも、看護配置等における看護要員の数や、月平均夜勤時間数に関する指摘など、細かな指摘が目立ちます。

院内周知を徹底いただくのはもちろん重要ですが、これだけ施設基準が多様化・複雑化している昨今、1人の目だけでは誤りがないかを十分に確認し、責任を果たすことは難しいでしょう。様式9を自動計算してくれるソフトもありますが、その内容が本当に正しいのかも含め、ダブルチェック、トリプルチェックできるような体制を構築することが大切です。そのためには、ある程度の時間をかけてでも、様式9に精通した職員を育成していくべきでしょう。

3.保険外医療費、保険外負担に関する指摘

これも、残念ながら指摘が減らない項目です。たとえば、以下のような指摘が見受けられます。

  • 特別療養環境の提供を、患者の自由な選択と同意に基づいて行っていない。
  • 患者からの同意を、料金等を明示した文書に患者側の署名を受けることによって行われていない。

特別療養環境というのは、患者さんのニーズありきで、「差額を払ってでも利用したい」という希望が前提にあるものです。それなのに、「個室しかあいていない場合は差額をいただきます」という説明では、場合によってはクレームや厚生局への通報にもつながりかねません。この項目でも、やはり患者さん視点に立ったサービス提供ができているかという観点で改めて点検いただきたいところです。

最後に、最近増えているのが、「今年の定例報告で、今まで指摘されなかったことに関する問い合わせが厚生局よりあり、さかのぼって不備を修正するよう指示があった。なぜ、今頃になって指摘されるのか」という声です。

コロナ禍で適時調査が中断されていた間、各厚生局の知見が格段に向上し、より精緻な指摘が行われるようになっているのかもしれません。全国標準的には本来指摘すべき事項なのに、今までは指摘されていなかっただけという可能性があるでしょう。
「今までどおりの内容で大丈夫だろう」と安心していると、思わぬ指摘を受けることもあるため、今一度見直していただくことをおすすめします。

これまで紹介した事例もふまえて、適時調査に対応するポイントをまとめるならば、やはり「患者さん目線を大事に」という一言に尽きます。加えて、行政はどういう観点でチェックを行うのか、どういう解釈であれば認められるのか、といった視点で、客観的に自院の運用・管理・体制をチェックしていただくとよいでしょう。
全国標準の考え方や客観的な視点で点検したい場合などは、ぜひご相談ください。

適時調査対策支援研究所について

適時調査対策支援研究所では、施設基準管理や適時調査対策にお悩みの医療機関担当者様に向け、コンサルティングや個別相談、模擬適時調査を実施しています。サービス詳細・お問い合わせはこちらよりご確認ください。

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