大学病院の移転を前に…沖縄だからこだわった高機能な病院~ちば医経塾塾長・井上貴裕の病院長対談~vol.9

目次

沖縄だからこそこだわった、高機能な病院とは――ちば医経塾塾長の井上貴裕氏と病院経営者の対談。第4回目のお相手は、社会医療法人友愛会友愛医療センター(沖縄県)の前院長 新崎修氏です。前回に引き続き新築移転によって高機能な病院づくりに取り組んだことや、5年間の院長生活を振り返った現在の思いを伺いました。

【対談】

ちば医経塾塾長・千葉大学医学部附属病院 副病院長 井上貴裕氏
社会医療法人友愛会・友愛医療センター 前院長 新崎修氏

大学病院移転で生じる「需要と供給のギャップ」に危機感

井上:友愛医療センターは急性期充実体制加算を取っているほか、病床当たりの全身麻酔件数は全国的に見ても素晴らしい実績です。高機能の病院をつくるにあたり、取り組んできたことはありますか。

新崎:ありがとうございます。病院の高機能化については、新築移転が非常に良いきっかけになったと感じています。

新築移転と高機能化の背景には、琉球大学医学部附属病院が2025年1月に宜野湾市へ移転・開院する計画があったため、大学病院が南部医療圏から中部医療圏へ移った場合、当院がそれまでと同じ医療を提供し続けるだけでは、需要と供給にギャップが出てくるという危惧がありました。

では、どう対応するべきか。医療が提供できる空間をしっかり確保し、手術室や医療機器を充実させて、がん診療などにもしっかり取り組める体制が必要だと考えました。そこで新病院では、救急医療やがん治療をはじめとするさまざま医療体制を強化したのです。

救急については県内医療機関最大の屋上ヘリポートから救急科に直通のエレベータを設置したほか、初療室を増設するなど機能を大幅に強化しました。また、手術室周りも力を入れて整備し、効率化を図っています。

医療機器については、新築時に放射線治療機器や経カテーテル大動脈弁治療(TAVI)を導入したほか、新築時から少し遅れて手術支援ロボット「ダヴィンチ」も導入。スムーズに診療できるように各診療科の医師たちと描いてきたプランは、ほぼ実現できたはずです。

井上:手術については箱物だけ揃えても、麻酔科医の確保が難しいことがあります。

新崎:幸いにして麻酔科医を含め内科系・外科系の医師が皆、非常に協力的でした。「少しくらいの苦労をしても、目標やあるべき姿に向かい、皆で考えてやるべきことをやる」というスタンスが確立されています。私が院長として特別なことをしたというよりは、現場の医師やスタッフが一丸となって皆でつくり上げてきたというのが実際です。

病床不足の沖縄では、医療圏を超えた連携が必要

井上:沖縄県内の病院は在院日数が非常に短いですね。病床規模があまり大きくないことが関係しているのでしょうか。

新崎:そうですね。

正直なところ、看護師さえいればもう少し病棟を稼働させたいという思いはありますが、現実はそうはいきません。早期に治療して元気になっていただき、早期に退院というサイクルをつくっていかなければ地域医療が回らないという事情があります。

沖縄県全体で言えば、個々の病院の医療提供体制だけで完結できることは多くありません。早期治療・早期退院を実現するために、他の医療機関や訪問看護などの力を借りて、地域で連携しなければ、地域医療全体が回らないのです。

井上:沖縄では、まだ病床が足りないという話をよく聞きます。しかし東京などでは、すでにベッドが空いていて、稼働率が50%や60%という病院がかなりの数あると言われています。このあたりは本州の医療事情とは異なるのでしょうか。

新崎:人口減少などについては私たちも推計しており、2029年頃までは現状の状況が続き、2040年頃から少しずつ人口が減少していくと試算しています。そのため、2040年に向けて地域の病院がどうあるべきか、地域の先生方と話し合う必要があると感じています。

井上:医療スタッフの養成についてお伺いします。沖縄県内には薬学部や看護師の養成学校などはあるのでしょうか。

新崎:看護師の養成学校は6つありますが、薬学部はありません。薬学部を作ろうという動きもありますが、正式決定ではありません。そのため、薬剤師については積極的に見学を募ったり個別に連絡を取ったりするなどして、確保に動いている状況です。

井上:職員は沖縄出身が多いのですか。

新崎:職種にもよりますが、医局の医師の半分以上は沖縄出身です。看護師は6~7割といったところでしょうか。

理想と現状のギャップを解消するための愚直な努力を

井上:2023年4月1日に院長を退任し、現在は循環器内科顧問として引き続き医療に従事されています。院長を務めた5年間を振り返っていかがでしたか。

新崎:非常に楽しい5年間でした。その一言に尽きます。たまたま沖縄という土地で院長を務めさせてもらったからかもしれませんが、院内外ともに横の連携が強く、いい思い出がたくさんあります。

コロナ禍での新病院移転はもちろん大変だったのですが、だからこそ皆の力が一丸となって乗り越えることができ、非常に良い経験になりました。

井上:最後に、これから病院長になる方に向けてメッセージをお願いします。

新崎:やはり、置かれた状況は各病院で異なると思いますので、病院ごとにどのような医療提供体制が必要か、自分たちの手で一度しっかり検証することは重要だと考えます。理想とする医療提供体制と現状のギャップが見つかったら、それを解消するために愚直に努力する。振り返ってみると、私がやってきたこともこれに尽きるのではないかと思います。

井上:ありがとうございました。

>>開業40年で老朽化が課題に。コロナ禍で新築移転の舞台裏~ちば医経塾塾長・井上貴裕の病院長対談~vol.8

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