本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣が、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報の取り組みを取材・報告します。
目次
「あと半年経ったらお正月」
先日買い物をしていた時、隣に居合わせた女性と店員さんの会話が聞こえてきました。「いつもより早く梅雨も明けて、もう7月よ。あと半年経ったらお正月」。今年ももう半年が過ぎたことに気づき、時の流れの速さに戸惑って苦笑してしまいました。
1日は誰しも平等に24時間。時間が進むスピードは速くなったり遅くなったりしている訳ではないのに、私も今年は早く時間が進んでいるように感じます。
このコラムも、早いもので32回目。医療機関の事務長・管理職・リーダーをはじめとする読者の方々に、「毎日様々なことが起きるだろうから、少しでも元気になってもらえるように」と思って執筆しています。私自身も日ごろから仕事に前向きな気持ちで取り組めるように、マインドコントロールを実践しているつもりでした。
しかし最近の私は、気持ちが落ち込んでしまうこともしばしば……。読者の方々はもちろん、自分のためにも「前向きに仕事をするために大切なこと」を改めて記したいと思います。
「以前のようにできない」とガッカリしないで
「以前はもっと頑張れていたのに」。数年前からそう思う機会が増えています。昔は就寝前に資料を作ったり、朝早く起きて作業をしたりすることは苦ではありませんでした。今は帰宅後は疲れでぐったり。朝起きても、疲れがいまいち取れていない――。そんなことをある方の前でボソッとこぼしたら、「それは歳を取ったからです。過去の成功体験と比較したらダメですよ」と言われ、確かにそうだとハッとしました。
私は「以前のようにできない」という点にばかりとらわれて、「もっとできるはずなのに」と自分にガッカリしていました。歳を取ったことは認識していたものの、心の中ではまだまだ若いつもりでいたようです。
その言葉をいただいて以来、「現在の自分はこれくらい」と受け入れることができました。自然と自分を労われるようにもなったのです。
自分を認められない人は、他人も頼れない
そういえば、病院勤務をしていた頃の私も「できない自分」を受け入れられていませんでした。組織の中で「弱い部分を見せたくない」と虚勢を張り続けていたように思います。
自分を認められない人が、他人を認められるはずがありません。周囲への対応も厳しくなっていきました。
しかし退職し、起業してみると、知らないこと・分からないことだらけ。自分一人では何もできないこと、それまでも自分一人で何かを成し得てきたわけではないことを認めざるを得えませんでした。
初めて「できない」と誰かを頼ったとき、重い荷物を一度下ろしたような清々しさを覚えました。他人を頼れるようになったこと、これは私の中の最も大きな変化の一つでした。以前と比べて、周りの人の知恵やアドバイスによって、クライアントへ提供するサービスのクオリティも高まったように思います。
全てのことを把握したい事務長、いませんか?
先日お会いした事務長も、病院勤務時代の私のように他人を頼ることができない方でした。
「全てのことを把握したい。その上で、自分が全ての指示を出さなければ」と思い込んでいるようです。しかしスタッフから何も報告されないものだから、ますます焦って空回り……。以前の自分を見ているようでした。
皆さんも想像できるかと思いますが、事務長からスタッフへの「何でも報告して」という要求があまりに強く、スタッフ間では逆に「事務長に何も言いたくない」という雰囲気が広がっていたのです。
相手は自分を映す鏡です。「なぜ報告してこないのか」と怒るのではなく、報告できないのはなぜか、我が身を振りかえることが大事なのです。
事務長一人が、受付・会計・看護業務、ましてや治療なんてできる訳がない。すべてのことを把握して、指示をするなんて無理な話です。
仕事を10人で分担することと、1人が10人分働くことを考えてみてください。
10人でやる方が効率・質ともに高まります。1人がへとへとの状態で対応するより、10人のスタッフが元気な状態でいた方が、提供するサービスは断然よくなるに決まっています。
最近、心から笑っていますか。今を楽しんでいますか。
冒頭で紹介した「過去と比較したらダメですよ」と教えていただいた方から、「最近心から笑っていないでしょう。楽しみながら過ごしていますか」とも言われて、ドキッとしました。
4月から新しい仕事が増え、関わる方や業務内容も変わりました。何をしていても常に仕事のことが気にかかっている状態です。
帰宅したら音楽を聴いたりテレビを観たりしてリラックスすることを心掛けてはいましたが、その時々を100%味わえてはいなかった。むしろ「あまり休んではいけない」という気持ちにすらなっていたような……。
では忙しい日々の中、心から笑えるためにはどうしたらいいのでしょう。
以前は「仕事のことを引きずらないためには、引きずらないように仕事を終わらせる!」と思っていました。しかし今は「終わっていなくても、一旦切り替える!」に変えました。
「引きずらないように仕事を終わらせる!」は、前の私には合っていた方法なのかもしれません。でも、今の私は違うのです。
以前の経験は手放し、今必要なものを取り入れましょう。でも変わるためのスイッチは誰かが入れてくれるわけではなく、自分で入れるしかありません。
自分のために、仕事の仲間のために、待ってくれているお客様のために、私は「自分をいい状態にする」を優先することに決めました。
たった一度の人生。もしかすると今日で終わってしまうかもしれません。その時々を思いっきりを楽しみましょう。
さて、2022年の折り返し地点です。事務長、最近心から笑っていますか。ワクワク楽しんで日々を過ごしていますか。
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