応募してきた医師の希望をよく聞き、その医師に最適化されたポジションを用意することで、入職意欲も上がり、その後の定着にもつながる-。メディカルトピア草加病院の久保田巧事務長は、そう指摘します。医師を採用する際、具体的な勤務条件をどのように整理しているのか、ポイントを伺いました。
・ターゲットを見極め、医師に響く求人をつくる-メディカルトピア草加病院【前編】
・事務長は「交渉人」 医師をひきつける勤務条件をつくる方法-メディカルトピア草加病院【中編】
・「医師の悩みはビジネスチャンス」 医師事務作業補助がもたらすもの-メディカルトピア草加病院【後編】
徹底的に医師の目線に立つ
応募して下さった医師にはいつも、「わたしのことは、先生のご希望条件を調整する『交渉人』と思って、『わがままかもしれない』と思うことでも、何でもご希望を教えてください」とお伝えしています。その上で、教えていただいた理想の勤務環境が、当院でどこまで実現できるのか、わたしが院長や診療部長など関係者に掛けあってハッキリさせます。
多くの医師は、オフィシャルな面接の場では遠慮して、好き勝手なことは言いません。
でも、「どんなことでも、かどを立てないように気をつけながら、院内に掛け合います」とわたしが個別に伝えることで、「それだったら、実は…」と、本音を教えてもらいやすくなります。この「実は…」の内容が、転職理由の根幹に関係していたりするので、当院でその解決がどこまでできるかという視点を持って院内に交渉します。労働管理側ではなく、医師の立場に立つというのがポイントです。
細やかな配慮が入職意欲を高める
医師の中には「こんな勤務環境は実現できないだろう」と思い込んで、希望条件を最初から諦めている方も多いのですが、逆に言えば、そこを実現できれば、当院への入職意欲は格段に高まります。こうした対応が結果として、他の医療機関との明確な差別化にもつながると考えています。
中には、入職時に約束した雇用環境が、入職後も守られ続けるか不安があるという医師もいらっしゃいますが、そのような医師の抱える不安を感じ取り、逆にこちらから雇用契約書にその内容を盛り込むことも提案します。契約書に明文化することで、もしわたしがこの病院からいなくなってしまったり、病院の方向性が変わったりしたとしても、安心して働き続けることができる。また、病院自ら提案することで、この安心感がさらに増し、医師の定着にもつながります。
医師に対して経営に偏った話はしない
-医師と接する中で、気をつけていることはありますか。
医師との会話に経営のことを持ちださないことを意識しています。これは応募して下さった医師はもちろん、当院で働いている医師に対しても同様です。
もちろんわたしは事務長として経営に対する責任を負っていますが、医師をマネジメントする上で重要なのは、何よりも信頼関係だと思っています。多くの医師は、病院経営のために医師になったのではなく、患者さんを治療したくて医師になったわけですから、そこを忘れてはいけません。
医師がたくさんの患者さんを治療できれば、経営にも良い影響があるのですから、方向性は共通しているはずです。どうしたら、専門性が発揮できるように労働環境を改善できるか-。一緒に考え、行動することが大切だと思います。
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