年間1億円の増収も!? 準備期間を持てる今こそ、病床機能再編の検討を~経営のプロが教える増収策【2022年度診療報酬改定予測】vol.2

2022年度の診療報酬改定が自院の経営にどう影響するか、心配されている病院は多いのではないでしょうか。このコラムでは、これまでの改定の流れをふまえて、2022年度改定の方向性を予想。さまざまな病院の経営支援に携わった経験をもとに、今回の改定を経営にどのように生かしていくべきかをお伝えしたいと思います。

山田 奈緒美(エムスリーキャリア/病院経営支援担当)

目次

診療報酬改定への対応はもう始まっている!

「新型コロナウィルス感染症流行の影響で、経営改善は必須。でも2022年の改定を待たなければ動き出せない……」。そんな病院様のお声をよく耳にします。

しかし、改定を見据えた対応は、今からでも十分に可能です。前回の記事でお伝えした通り、次期改定はこれまでの方向性を踏襲する可能性が高いためです。特に、診療単価に最も大きな影響を及ぼす病床機能の再編については、準備期間を持てる今こそ、本格的に検討を進めるタイミングと言えるでしょう。

今回は、成功する病床機能再編の鉄則をお伝えします。

優先すべきは、「患者数増加策」より「診療単価向上策」

新型コロナウィルス感染症の流行は、少しずつ収束に向かっているように見えます。ただ、感染が再拡大している国も多く、日本においても依然として予断を許さない状況です。このような状況下で、患者数増加策に依存した経営改善計画はリスクが高いと言わざるを得ません。むしろ今は、診療単価を向上する施策に注力すべきでしょう。

「診療単価を上げると言っても、治療内容は急には変えられないし……」。そんな病院様もあるかもしれません。しかし、診療科目を増やしたり、高額な設備投資をしたりといった変更を行わずとも、診療単価の向上を図ることはできます。

例えば、病院収入の大半を占める入院収入では、「入院料の引き上げ・変更」が最も効率的、かつ最もインパクトの大きい単価向上策です。その中でも特に病床機能の変更(急性期・回復期・慢性期等の区分変更)を伴うものは、年間1億円規模の増収をもたらす可能性を秘めているのです。 もちろん、病床機能の再編には、綿密なシミュレーションが必要です。見切り発車で新しい病床機能を選択してしまうと、変更後の病床機能にマッチする患者層が少なく、稼働率が大幅に下がるということになりかねません。また、職員の追加採用に見合うほど収入が増加しない可能性も考えられます。このような事態を防ぐためには、これからお伝えする3つのポイントをおさえておく必要があります。

病床機能再編を検討する際に注意すべき3つのこと

1.自院の患者層を知らずして病床機能再編はならず

第1ステップとして、どんな患者層が自院に入院しているのか、“正確に”把握しましょう。特に、日数・単価の観点が重要です。それぞれの患者が「何日間」「何点で」入院していたのかを調べるのです。

「そんな基本的な指標は、毎月分析しているよ」と思われるかもしれません。しかし、果たして患者層を“正確に”把握できるほどの詳しさで分析しているでしょうか? 例えば、一般病棟の平均在院日数しか見ていなかったり、病院全体の平均単価しか算出していなかったりしませんか? 数日もかけてやるは必要ありませんが、あまりにも分析の粒度が粗いと、自院の患者層はぼやけてしまいます。

まずは、「病院全体ではなく、病棟ごとに日数と単価を計算する」ことから始めましょう。

病棟ごとに分析することで、病床再編余地があるのがどの病棟なのか、見当を付けやすくなります。

次に、「平均値ではなく、最頻値を意識する」ようにしてみましょう。

日数にしても単価にしても、両極端な数値を示す患者につられて、平均値と最頻値が一致しないことはよくあります。

最頻値を見ることで、「一般病棟で、平均在院日数は問題なくクリアできているのに、2か月を超える長期入院患者が多くいた」「病棟全体の平均単価は3000点を優に超えているのに、一部患者の平均単価は2000点にも満たない」といった事象を発見できます。病棟全体の数値からは再編の必要性が認められなくても、病床単位での何らかの改善余地があるということがわかるでしょう。

2.増収額の正確な試算が、成功と失敗の分かれ目

次のステップは、再編後の増収額の見積もりです。これが、病床機能再編を成功させられるかどうかの分かれ目になります。増収額を低く見積もりすぎると、そもそも再編しないという決定につながり、大きな機会損失を招く可能性がありますし、再編するとなった場合も職員のモチベーションはなかなか上がらないでしょう。また、高く見積もりすぎても、計画倒れになって継続しないリスクがあります。

ただ、第1ステップを終えた後であれば、このステップはそれほど難しくないはずです。自院の患者層をグループに分け、それぞれのグループに対して増収額を試算していくのです。こうすれば、かなり正確な増収額を算出することができます。また、再編プランは1つではなく複数用意しておくと、自院にとっての最適解を見つけやすくなるでしょう。

ここで注意すべきポイントは、再編後の入院料の要件です。看護必要度やリハビリ単位数、在宅復帰率、算定上限日数等の要件が定められている場合は、各グループの患者層がそれらに合致するかどうかを確認することも忘れないようにしてください。

3.最終的な病床機能選択は、費用対効果を意識すべし

さて、第2ステップで算出した増収額が最も高い病床機能・入院料で、再編を決定すればよいのでしょうか? 実は違います。成功を確実にするためのポイントは、「増収額は最大限、変更は最小限」の病床機能の選択です。たとえ増収額が高くても、大幅な変更が必要になると、追加人員採用が必要だったり、職員負担が著しく増えたり、実現までに時間が大幅にかかったり……。そもそも途中で頓挫してしまう可能性もあります。

第2ステップまで終えた後は、いくつかの再編プランについて、増収額と変更項目の比較表を作ってみましょう。その中で、高い増収効果を最小限の負担で実現できるようなプランを選ぶのがベストです。

年間1億円の増収達成! 再編の勝ちパターン

では、そもそもどのような病床機能に変更すべきでしょうか? 有力な選択肢の1つは、回復期機能、特に地域包括ケア入院料です。

たとえば、50床規模の急性期病院において、地域包括ケア入院料で年間約1億円の増収を達成した実例があります。要件達成のために新たに実績集計は始めましたが、大幅な人員採用や治療内容の変更は行っていません。また慢性期病院においても、患者の回転率に気をつけつつ、増収を実現した例があります。

どちらも、背伸びをして新たな入院料を算定したというよりも、自院の患者層に合った最適な病床編成を選び直したという方が正しいでしょう。急性期病床・慢性期病床にも、一定数の回復期該当患者様がいらっしゃるという証拠でもあります。

確かに、回復期病床が増加していくにつれて、診療報酬改定の度に要件は厳格化されています。ただ、すぐに対応できなくなるような変更ではありません。前回改定において点数は据え置きでしたし、次期改定でも大幅な変更が加えられる可能性は低いです。改定を目前に控えた今のタイミングから、回復期の病床機能を含めた病床再編を検討し始めるのも、1つの手でしょう。

山田 奈緒美 (やまだ なおみ)

エムスリーキャリア 経営支援事業部 経営支援グループ所属。
京都大学卒業、同大学院修士課程修了。ジョージアでの日本語教師勤務を経て、帰国後は出版社で書籍編集者に。エムスリーキャリア入社後は、クライアントごとの特徴をふまえ、病床転換・レセプト業務改善をはじめとする経営支援を行う。

▼病床再編による増収額シミュレーションを実施しております

https://krs.bz/m3career/m/hpcase_chiiki_simulation?e_16125=HP

▼【無料病院経営セミナー】をオンラインで開催しております

https://hpcase.jp/chiiki-seminar/

▼ 病院経営についてのご相談・お問い合わせはこちら

エムスリーキャリア 経営支援事業部 経営支援グループ
TEL : 03-6895-5183 
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