外商マンのアイデアが生んだ“地域連携の秘策”―医療法人おひさま会 山口高秀氏(中編)

地域包括ケアの充実が叫ばれる現在、おひさま会(神戸市垂水区)の「おひさまネットワーク」は医療・介護連携の先進事例として全国的な注目を集めています。ネットワークの概要について、前回に続き、理事長の山口高秀氏に話を聞きました。

外商マンの発想が“メディカルスタッフ”の原型

おひさまネットワークでは、メディカルスタッフが全ての窓口を務め、患者のパートナー的役割を果たす。 医師の往診に同行し、時には病院の予約代行など、各医療機関や専門職と情報を共有・連携・活用して、最適な療養環境をつくるという。

おひさまネットワークでは、メディカルスタッフが全ての窓口を務め、患者のパートナー的役割を果たす。 医師の往診に同行し、時には病院の予約代行など、各医療機関や専門職と情報を共有・連携・活用して、最適な療養環境をつくるという。

―メディカルスタッフを核とした「おひさまネットワーク」は、どんな経緯で始められたのでしょうか。

一緒に開業した事務長はかつて、大手百貨店の外商マンだったのですが、彼の発想がおひさまネットワークの原型です。

外商マン時代、彼のところには年齢を重ねた顧客から、健康についての相談が数多く寄せられたそうです。そこで、相談をしてきた人たちに適切な医師を紹介しようと、彼は在宅医療の制度もない当時、24時間の電話相談を受けるサービスを始めていたんです。これが今の「患者が24時間電話相談できる窓口があり、状況に合わせ最適な医師をプロデュースする」という、メディカルスタッフの働き方の原型になりました。開業当初、事務長は医療事務に「来た電話には全部対応するように」と指示を出していました。

―そこから、現在のような体制が出来上がった。

11414752_876729429070070_1694347950_o「医学的判断は医師、それ以外の事務手続きはメディカルスタッフが行う」というルールをつくっていたことで、結果として上手くまとまったものの、始めは試行錯誤の連続でした。

開業以後、当院の受け持つ患者さんは増え、すぐにマンパワーの限界が見え始めました。患者さんに必要な医療を当院だけで完結させるのは到底不可能ですから、「訪問看護ステーション、薬局など、地域の資源にも目を向けて、協力してやっていこう」という視点で、体制を整えていきました。

医師による判断は当院で行い、それ以外のオペレーションを地域の訪問看護ステーションと連携しながら行ったり、薬局や入院先の病院とのつながりを強化していく―こうして“活動のハブ”になっていくと、自然に“情報のハブ”にもなります。当院には、連携先の各方面から患者さんの診療情報や生活にかかわる情報が集まるようになっていきました。

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メディカルスタッフが“情報のハブ”機能を強化

―そうなると、各施設や職種間の情報共有も大変になりそうですね。

そうですね。そこで、当院では“情報のハブ“としての機能を強化しようと、あえて各施設からわたし宛ての直通の相談ルートを閉ざしました。

各施設の担当者が直接医師と話したいと思っているのは分かっていましたが、あえて間にメディカルスタッフに入ってもらい、メディカルスタッフに色々な情報が集約されるようにしたのです。始めは、「なぜ、医学的な知識を持たない事務方と話さなければならないのか」という連携先の施設からの苦言もありましたが、徐々に、医師と話すよりもさまざまなことを把握しているメディカルスタッフを通した方が楽なことに気づいていきました。メディカルスタッフの側も、最初は専門職との板挟みになって戸惑っていましたが、やがて「何の情報を誰にどう伝えたらよいか」というノウハウが集積されていきました。

11424522_876729405736739_1986176715_o―現在、メディカルスタッフの教育はどのようにされていますか。

研修に関しては、ノンテクニカル研修を行っています。物事をどう考えてどう行動すればいいのか、人を動かすにはどう伝えたらいいのかという内容です。

メディカルスタッフは、特定の医療資格者というわけではなく、多職種・多施設間の連携のかなめとして、必要な情報を、必要な人に伝えます。誰かに何かを伝えるためには、要点を理解して、自分が腹落ちするまで情報を集めていくことが求められる。明るく積極的に人と接することができる人に向いていると思います。

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