努力した医師には相応のインセンティブ
―貴院の人事考課制度について教えてください。
西岡氏
人事考課制度は、グループや病院がよりよい医療を提供するための仕組みと言えます。医師には、医療サービス提供の要として、グループや病院全体のことを考えてほしいと思っています。そのため、医師の人事評価では個人の成果だけでなく、病院や属する診療科の業績を加味しています。大局的な視野で収入やコストにも気を配ってもらうことは、優秀な職員の確保や高度な医療機器の導入に繋がるわけですから、医師自身にも還元されることだと思います。
人事考課は年2回行い、医師本人には面接で結果を伝えています。面接は、院長と名誉院長、看護部長と私の4人が、医師一人ひとりと行っています。その際、組織と個人の両面で努力してくれた医師には昇給の可能性があります。年俸制ですから、本来は年間の給与額が決まっていますが、努力した分のインセンティブを上乗せすることで、待遇面での働きがいを提供しているわけです。
人事考課制度を導入して反発する医師もいました。ただ、面接はこちらの思いを伝えるだけでなく、医師の要望を聞き入れる場としても機能します。このような仕組みはなじんでくれば、医師にとってもそれほど不利益はないと思います。
―思い切った改革を行ったのですね。改革に当たり、医師を含めた職員とはどのように意識共有したのでしょうか。
西岡氏
伯鳳会グループの年1回の事業計画発表会に向けて、理事長より今後1年間の指針が示されます。これは冊子にして全職員に配布され、数十ページに及ぶ理事長の意思がつづられています。これによって経営に対する意識共有がされていると思います。
また、この指針書には経営戦略の項目があり、指針に則って各病院に達成してもらいたい目標が記載されています。各施設では、この目標を元に経営計画を立て、各部門、各職員の目標に落とし込んでいきます。つまり、各職員が目標を達成してくれれば、グループ全体としての指針が達成できるということです。
―人事考課制度は医師採用にどのような影響を与えているのでしょうか。
西岡氏
当院は経営を立て直したばかりでまだまだ未成熟ですし、近隣の病院と同じ土俵で戦えるほどの魅力がまだありません。そんな病院が医師にアピールするためには、人事考課を徹底して評価の客観性を保つことが大事だと思います。採用面接では、医師に対して「医療や経営に対する考え方はまっとうだと思うから、“今から”のこの病院を一緒につくってくれませんか」と正直に訴えることができます。そこに共感して入職してくれる医師がいるのは、ありがたいですね。
●自院に合わない医師には率直に業務改善を促し、スムーズにチーム医療が行われる状態をつくる
●病院のビジョンや各部署に期待する役割を詳細に明文化して全職員で共有する
●客観的な人事評価を行うことで、自信をもって外部の医師にアピールする
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