産業医に対する関心の高まりが、医療機関にとっては収入確保の“追い風”になると話すのが、エムスリーキャリア 産業医チームのコンサルタントお二人です。今回は企業向け産業医業務専任の非常勤医(以下、嘱託産業医)の採用を軸にお話を聞きました。
●前編
・企業の産業医ニーズに変化
・嘱託産業医1人で年間3300万円超の医業収入も
・健診とのセットで、予防・検査~治療・職場復帰をカバー
●後編
・実は希望者の多い嘱託産業医
・常勤医採用への糸口にも
・エムスリーキャリアでは産業医チームで対応
実は希望者の多い嘱託産業医
―前編では、企業側の産業医ニーズが強まっていて、医療機関がニーズに応える余地はまだまだ残されていることを伺いました。しかし、企業に行っていただく産業医がいないことには始まりません。産業医希望の医師は採用できるものなのでしょうか。
川原氏:
医療機関の方々が思っている以上に、嘱託産業医は多くいらっしゃいます。たとえば最近では、嘱託産業医の求人を当社登録の先生方にご案内したところ、医師不足で知られる北関東エリアで20件弱のお問い合わせをいただきました。
―なぜ、それほどの問い合わせが来るのでしょうか?
川原氏:
産業医は業務負担が少なく、社会ニーズにも応えられるという点のほかに、嘱託産業医の仕事は月1回の勤務でよく、訪問日も調整しやすい点が、興味を持たれやすい理由です。
たとえば、大学勤務の医師には非常勤勤務で収入を増やしたい方も多いのですが、毎週決まった曜日・時間に働くのはなかなか難しい事情があり、月1勤務は喜ばれます。
―嘱託産業医は毎週の定期勤務ではないのですか?
川原氏:
そこが通常の非常勤勤務とやや異なる点です。医療機関のご担当者によっては、「毎週来てもらうほどではないから、非常勤の産業医は雇えない」とお考えの方もいらっしゃいますが、むしろ月1回勤務の方が都合がつきやすいという医師も多いかと思います。
常勤医採用への糸口にも
―嘱託産業医を採用すると、常勤医の採用にも繋がるというお話がありました。
西頭氏:
これは嘱託産業医に限った話ではないのですが、常勤医が集まりにくい医療機関には、非常勤医に常勤勤務を打診することも検討されてみてはと考えています。
医師にとって常勤転職はキャリアの節目になりますから、転職先を慎重に吟味することになります。その点、非常勤勤務はハードルが低く、応募していただきやすい。非常勤医として勤務してみていただいて、医療機関のことをよく理解してもらってから、常勤勤務していただいた方が定着率も良くなるでしょう。
―つまり、非常勤医も常勤医候補として捉えるわけですね。
川原氏:
常勤または非常勤で産業医勤務を希望する先生の7割は元々臨床に携わっている方で、産業医業務は未経験。それがご家庭の事情などから一時期だけ非常勤勤務する場合もあり、そうした方は「いずれは常勤勤務に戻るときは臨床で」と考えていることも多いです。
エムスリーキャリアでは産業医チームで対応
―エムスリーキャリアでは、医療機関の産業医採用にどのような対応をしているのでしょうか。
西頭氏:
医師の方々から「産業医としての働き先を紹介してほしい」という希望が増えていますし、企業側からも産業医に関するお問い合わせが目立っていますので、常勤担当や非常勤担当のコンサルタントで構成する「産業医チーム」をつくって対応しています。
当社から企業に産業医をご紹介するケースもあるのですが、産業医の選任が必要となる事業所は全国に16万件以上。全国各地の医療機関が産業医を採用して、企業に橋渡ししていただくことで、全国のメンタルヘルス対策がスピーディーに進めば―と考えています。
川原氏:
当社にご相談いただければ、産業医の先生の職務経歴も把握できますから、安心して採用いただけます。また、他院の採用事例などもご紹介できるので、嘱託産業医を採用中、または、採用を検討中であれば、ぜひお声掛けいただきたいですね。
西頭倫歩(さいとう・みちお)
大学在学中からグラフィック・デザイナーとしてキャリアを積んだ後、広告代理店でクリエイティブ・ディレクターに転身。また、大学院で戦略経営やファイナンスを専攻し、MBA(経営学修士)を取得する。そして大学院での学びを実務に活かそうと、エムスリーキャリアに入社。現在は医療機関における医師採用の支援や、医師の転職をサポートしている。
川原健太(かわはら・けんた)
東京理科大学理学部卒業。新卒で入社した大手教育企業で教室長を経験。「転職」という人生の様々な分岐点に関わりたいと思い、2016年4月にエムスリーキャリアへ入社。常勤医師のキャリアコンサルタントとして従事。現在は、専属産業医の転職支援プロジェクトの中核メンバーとしても活躍。
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