相馬地方の高齢化問題についての「循環思考」

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相馬中央病院 森田知宏
2015年5月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

いま、東北地方に注目が集まっている。東日本大震災からの復興のなかで、第一次産業の衰退や過疎化などの東北地方が抱えていた問題に対して、データに基づいた農作物づくりやICTを利用した街づくりなど、斬新な試みが次々と生まれている。いまや、東北地方は日本の課題先行社会として日本の重要な地域である。
東北地方は、高齢化の課題も先行しているが、高齢化問題への解決策はまだ未発展である。高齢化率は27%(平成26年1月1日現在)と、全国平均の25%に比べて高い。特に、私の勤務する福島県浜通りは原発事故後に若年層が避難したことで、急激な高齢化を経験した。この現象を考察することは、大量の団塊世代が一気に高齢者になる首都圏に応用可能だと考える。
4月18日、東大医科研で横山禎徳先生の「社会システムデザイン勉強会」に参加した。今回は、横山禎徳先生の提唱する方法を使用して、相馬地方の高齢化問題を考察する。

まず、横山先生は、社会問題を考える際に循環的な思考が必要だと説く。つまり、対象分野の中心となる課題と、それから派生する悪循環を発見することが第一段階である。たとえば、相馬地方では、福島第一原発事故後の避難により若年層が避難した。その結果、高齢化率が上昇していることが大きな問題である。南相馬市の高齢化率は、震災直前の26%から現在の33%に上昇した。その結果、自宅で高齢者の面倒をみてくれる者が見つからない、医療者が不足するなどの問題が派生した。以下、派生する問題を簡単に図式化したものが図1である。例えば、若年層の避難が多かった南相馬市では、高齢単身世帯の割合は10%(2011年2月)から13%(2014年12月)へと増加した。家族が支えていた高齢者も、単身になれば介護サービスを必要とする場合が多い。その結果、南相馬市の要介護者のうち、要介護1までの軽度要介護者の割合は34%(2010年9月)から42.3%(2014年9月)へと上昇した。介護サービスの需要が増加したため、介護サービス不足が起きている。これら医療、介護の問題がからみ合って、孤独死の増加へとつながっている。実際に、南相馬市の仮設住宅では、71歳女性が死後2週間経過してから見つかるなどの悲劇が報道されている。

次に、この悪循環を良循環にするシステムを考える。この際に重要なのは、「問題の裏返しが必ずしも答えではない」ことだ。例えば、「若年層が減少した」ことに対して、「若年層を増加させる」という答えだ。この答えであればどの地域でも同じだし、方策も他の地域と競合する。実現できるに越したことはないが、少なくとも戦略的な答えではないというのが横山先生の考えだ。

今回は、相馬市で行われている施策を元に、「孤独死の増加」を解決するための良循環にする方法を考えた。それが図2である。高齢者のコミュニティによる支えあいで孤独死を減少させることを狙っている。副次効果として、寝たきり高齢者が減少する可能性もある。横山先生によると、このような循環は元から存在しているものではないため、駆動力が必要である。そこで、駆動力となるサブシステムが、緑色の四角である。相馬市では、被災高齢者を対象に、井戸端長屋という集合住宅を作った。そこでは食堂が共同スペースとなっており、NPOによる昼食の配食サービスが行われている。自然な形で、住民が毎日顔を合わせるタイミングがある。毎日顔を会わせていれば、当然コミュニティも出来る。その結果、誰かが具合が悪くなったときにも気づかれやすい。部屋の中で亡くなって放置されることもないだろう。また、現在は保健師の訪問も行われ、介護予防のための運動講座などが行われている。近所住民と行う運動が習慣となることで、運動機能低下を予防できるかもしれない。

これが、横山先生の方法を使って私なりに考察したものである。今回は、井戸端長屋という、既にある方策を使って良循環を考えたが、今後は、看護師不足や、介護者不足などに対する良循環についても考えていきたい。

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著者紹介

森田知宏

1987年大阪生まれ
2012年3月東京大学医学部医学科卒業
2012年4月より亀田総合病院にて初期研修
2014年5月より相馬中央病院 内科医として勤務中

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