新設・排尿自立支援加算は入院+外来のセットで考える─診療報酬請求最前線

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2020年度改定では、これまで医学管理料として設定されていた「排尿自立指導料 200点(週1回に限り6週を限度)」が、入院基本料等加算の「排尿自立支援加算」として新設されました。地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料、精神科救急入院料、精神療養病棟入院料などで算定可能となり対象病棟が広がったほか、算定期間の上限も12週間へ変更されました。

A251 排尿自立支援加算(週1回) 200点
注 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者(第1節の入院基本料(特別入院基本料等を除く。)又は第3節の特定入院料のうち、排尿自立支援加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)であって別に厚生労働大臣が定めるものに対して、包括的な排尿ケアを行った場合に、患者1人につき、週1回に限り12週を限度として所定点数に加算する。

入院中~退院後まで、継続的なケアの提供が狙い

点数は据え置きということもあり、算定期間の変更に着目しがちですが、今回の改定のポイントは、入院診療から外来診療への継続性を担保することで、医療機関における排尿ケアの質向上が図られている点にあります。

2016年度改定で新設された排尿自立指導料は、入院診療を対象とした医学管理料で「入院中の患者であって別に厚生労働大臣が定めるものに対して包括的な排尿ケアを行った場合に、患者一人につき、週1回に限り6回を限度として算定できる」とされていました。対象が入院患者に限定されていたため、退院後のケアに結びつかないという課題があったのです。

今回の改定では「排尿自立指導料」が入院中以外の患者を対象とする「外来排尿自立指導料」へと置き換わり、外来患者への排尿ケアも診療報酬上で評価されることになりました。つまり、排尿自立支援加算+外来排尿自立指導料の組み合わせによって、入院中~退院後の外来まで一貫したケアが実現されることになったのです。この狙いは、以下の留意事項からも明らかです。

B005-9 外来排尿自立指導料

(1)外来排尿自立指導料は、当該保険医療機関に排尿に関するケアに係る専門的知識を有した多職種からなるチーム(以下「排尿ケアチーム」という。)を設置し、入院中から当該患者の排尿自立の可能性及び下部尿路機能を評価し、排尿誘導等の保存療法、リハビリテーション、薬物療法等を組み合わせるなど、下部尿路機能の回復のための包括的なケア(以下「包括的排尿ケア」という。)を実施していた患者に対して、入院中に退院後の包括的排尿ケアの必要性を認めた場合に、外来において、引き続き包括的排尿ケアを実施することを評価するものである。

(2)当該指導料は、当該保険医療機関の入院中に区分番号「A251」排尿自立支援加算を算定し、かつ、退院後に継続的な包括的排尿ケアの必要があると認めたものであって、次のいずれかに該当する者について算定できる。なお、排尿自立支援加算に規定するとおり、退院後に継続的な包括的排尿ケアの必要があると認めた旨を診療録等に記載していること。
ア  尿道カテーテル抜去後に、尿失禁、尿閉等の下部尿路機能障害の症状を有するもの
イ 尿道カテーテル留置中の患者であって、尿道カテーテル抜去後に下部尿路機能障害を生ずると見込まれるもの

※厚労省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」別添1より一部編集の上抜粋

排尿障害への対応を診療報酬で評価する意義とは

さて、排尿ケアの対象となるのは、具体的にどのような状態でしょうか。

留意事項(2)のア・イからは、大きく2タイプの患者について、重症化防止を図っていることがわかります。1つ目が尿道カテーテル抜去後に尿失禁、尿閉等の下部尿路機能障害の症状をすでに有する患者。そして2つ目が、尿道カテーテル留置中で、抜去後に下部尿路機能障害を生じると見込まれる患者です。
端的にいえば、“尿道カテーテルに伴う下部尿路機能障害の初期の患者および発症のリスクを有する患者”ということでしょう。疾患に対する早期介入と合併症防止を意識していることが読み取れます。

下部尿路機能障害とは、膀胱や尿道に異変が起こり、尿を排出する機能の障害がある場合を指します。排尿自立により、患者のQOL向上はもちろん、入院期間の短縮、ひいては医療費削減につながります。尿道カテーテル挿入による排尿障害への対応を診療報酬上で評価するのは、こうした医療経済への効果も見込んでのことではと筆者はみています。

病棟看護師とケアチームの連携が不可欠

本加算の取得において重要なのが、チーム医療の展開です。排尿自立支援加算の留意事項(3)には、具体的にその内容が示されています。

(3) 病棟の看護師等は、次の取組を行った上で、排尿ケアチームに相談すること。
ア  尿道カテ-テル抜去後の患者であって、尿失禁、尿閉等の下部尿路機能障害の症状を有する患者を抽出する。
イ アの患者について下部尿路機能評価のための情報収集(排尿日誌、残尿測定等)を行う。
ウ 尿道カテーテル挿入中の患者について、尿道カテーテル抜去後の、排尿自立の可能性について評価し、抜去後に下部尿路機能障害を生ずると見込まれるが、排尿自立の可能性がある患者を抽出する。

※厚労省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」別添1より抜粋

整理すると、以下の項目の実施により、病棟の看護師が常に状態を観察し、適切に排尿ケアチームにつなぐことを強く求めていることがわかります。

  • 尿道カテーテル抜去後の下部尿路機能障害の症状を有する患者の抽出
  • 下部尿路機能を評価するための情報収集(排尿日誌、残尿測定等)
  • 尿道カテーテル挿入中の排尿自立の評価と、排尿自立の可能性のある患者の抽出

なお、排尿ケアチームは外来排尿自立指導料と同一でも、異なるチームでもよいとされています。後者の場合は、入院・外来チーム間の連携も不可欠になるでしょう。

算定対象の疾患を把握して、もれなく対応を

最後に、排尿障害の原因疾患を押さえておきましょう。算定対象となる疾患を把握することは、医事算定において極めて重要です。
排尿障害は、尿をうまく出せない「排出障害」と尿をうまく貯められない「蓄尿障害」に大別でき、それぞれに原因となる疾患が異なります(以下の表を参照)。医療機関で一般的に取り扱っているものが多く、本加算の取り組みが重要であることを再認識させられます。

排出障害前立腺肥大症、神経因性膀胱(脊髄疾患、脳血管疾患、糖尿病など)、重度の骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱)、骨盤内臓器の手術後(直腸がん、婦人科がん)など
蓄尿障害過活動膀胱、神経因性膀胱、肥満などの生活習慣病、間質性膀胱炎、軽度の骨盤臓器脱、膀胱炎、膀胱結石など

>>vol.52 せん妄ハイリスク患者ケア加算は低収益?新設の狙いを読む─診療報酬請求最前線

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