せん妄ハイリスク患者ケア加算は低収益?新設の狙いを読む──診療報酬請求最前線

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2020年度診療報酬改定より、急性期入院患者に対するせん妄予防を目的とした入院基本料等加算「せん妄ハイリスク患者ケア加算」が新設されました。 この加算は、せん妄のリスク因子をスクリーニングして、該当した患者をハイリスクに指定、非薬物療法を中心とした対策を行い経過観察するという、一連の流れを評価するものです。入院前または入院後3日以内に入院患者全員にリスク評価を実施し、ハイリスク患者を早い段階で洗い出すことがポイントになります。

急性期でもせん妄患者への対応が求められている

そもそも、急性期の入院医療全体にせん妄の管理が求められた背景には、認知症やせん妄の患者が入院医療の現場に大きな負担をかけている現状があります。図表1は、中医協の議論の中で示された調査結果です。一般病床においても、せん妄の患者が1割程度を占めていることがわかります。

図表1:平成30年度入院医療等の調査(2019年12月20日中医協総会(443回)資料より抜粋)

さて、まずはせん妄のハイリスクとはどのような状態を指すのか、基本を押さえておきましょう。まず、せん妄とは、身体疾患や薬剤、手術等を引き金にして精神症状が出現する病態をいいます。日本サイコオンコロジー学会のせん妄ガイドラインによると、「せん妄とは、身体的原因や薬剤原因によって急性に出現する意識・注意・知覚の障害であり、その症状には変動性がある」とされています。せん妄の原因は、以下の3段階の因子が関連して発症するとされています。

  • 直接因子:脳疾患、臓器不全、感染症、電解質異常、脱水、薬剤原因など
  • 準備因子:高齢、認知症、認知機能障害など
  • 促進因子:痛みなどの身体的症状、環境因子、身体拘束など

せん妄ハイリスク患者ケア加算では、これら因子に関係するものを次の7つのリスクに分けて定義し、全患者にスクリーニングすることを求めています。

【せん妄のリスク因子に関する確認事項】
・70歳以上
・脳器質的障害
・認知症
・アルコール多飲
・せん妄の既往
・リスクとなる薬剤(特にベンゾジアゼピン系薬剤)の使用
・全身麻酔を要する手術後又はその予定があること

施設基準は入院料とチェックリストの2つ

それでは、せん妄ハイリスク患者ケア加算の中身を見ていきましょう。
この加算に設けられている施設基準は2つあります。 1つは、以下の入院料のいずれかを算定していることです。

【対象となる入院料】
A100 一般病棟入院基本料(急性期一般入院基本料に限る。)
A104 特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る。)
A300 救命救急入院料
A301 特定集中治療室管理料
A301-2 ハイケアユニット入院医療管理料
A301-3 脳卒中ケアユニット入院医療管理料

そして2つ目が、「せん妄のリスク因子の確認のためのチェックリスト及びせん妄のハイリスク患者に対するせん妄対策のためのチェックリストを作成していること」です。端的に言えば、全入院患者に対する当該チェックリストの作成が求められているということです。

このリスク表は、「別紙様式7の3」として様式が指定されていますが、指定されたチェック項目を満たしていれば自院のオリジナルを使用することが疑義解釈(図表3)において認められています。この様式に対する解釈は、診療報酬点数表の通則の「診療等に要する書面等(別紙様式)」にある「当該様式は、参考として示しているものであり、当該別紙様式と同じでなくても差し支えない」という考え方に準じるものです。

図表2:疑義解釈【せん妄ハイリスク患者ケア加算】(厚労省通知「疑義解釈資料の送付について(その1) 」より抜粋)

加算新設はニーズ増を見越しての対応か

せん妄ハイリスク患者ケア加算は入院中1回に限り100点を加算することができます。ただし、算定対象となるのは入院患者全体ではなく、ハイリスク患者に対してのみ(算定要件の(2))。したがって、DPC対象病床においても係数(医療機関別係数Ⅰ)としての取り扱いではなく、個々に加算する出来高点数になります。

全ての入院患者をリスク評価するのに、算定できるのはハイリスク患者のみであることから、本加算の収益性は低いと考えられがちです。しかし先読みすれば、2006年度改定で新設された褥瘡ハイリスク患者ケア加算(500点)および褥瘡対策と同様に、入院医療に必要な体制として、今後より整備が求められる(≒ニーズが増す)可能性が高い、と捉えることもできるのではないでしょうか。

せん妄ハイリスク患者ケア加算の算定要件

  1. (省略)
  2. せん妄ハイリスク患者ケア加算は、急性期医療を担う保険医療機関の一般病棟において、全ての入院患者に対してせん妄のリスク因子の確認を行い、ハイリスク患者に対するせん妄対策を実施した場合に、当該対策を実施した患者について、当該入院期間中1回に限り算定する。
  3. せん妄のリスク因子の確認及びハイリスク患者に対するせん妄対策は、各保険医療機関において作成したチェックリストに基づいて行うこと。なお、当該チェックリストを作成するに当たっては、別紙様式7の3を参考にすること。
  4. せん妄のリスク因子の確認は患者の入院前又は入院後3日以内、ハイリスク患者に対するせん妄対策はリスク因子の確認後速やかに行う。また、リスク因子の確認及びせん妄対策に当たっては、それぞれの病棟において、医師、看護師及び薬剤師等の関係職種が連携を図る。
  5. せん妄のハイリスク患者については、せん妄対策を実施した上で、定期的にせん妄の有無を確認し、早期発見に努めること。なお、せん妄ハイリスク患者ケア加算は、せん妄対策を実施したが、結果的にせん妄を発症した患者についても算定可能である。

※「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」別添1より抜粋

>>vol.51 働き方改革へメス?新設の地域医療体制確保加算とは─診療報酬請求最前線

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