診療情報提供書の適切な記載、不適切な記載―診療報酬請求最前線

前回は、診療情報提供書の記載にあたり、診療情報提供料の算定対象者には、必ず「紹介先への受診行動を伴うことの記載」が求められていることを概説しました。(紹介元への返書では算定不可)。今回は、診療情報提供書を記載する際の内容について考えてみましょう。

診療情報提供料(I)を算定する際の不適切な記載事例は、次の4項目が主に多くみられます。

診療情報提供書の不適切な記載例

  1. 受診の指示が曖昧である
  2. 受診する医療機関名がない
  3. 単なる報告書である
  4. 相手方の情報の提供を求めるものである

ではここで、診療情報提供書の適切な記載、不適切な記載とは、どのように見ているのでしょうか。

適切な記載、不適切な記載

重要なポイントは、紹介する内容をより明確にし、その理由やお願いする疾患名等を具体的に記載することです。「当院におかかりの際には、引き続き宜しくお願いします」といった曖昧な依頼や、「貴院での加療の継続をお願いします」というように、どのような治療を継続しているのかがよく分からないものも適切とはいえません。

糖尿病や心不全の2人主治医制のほか、脳卒中パス、がんパス、大腿骨頸部骨折の連携パスのように、具体的な疾患や治療を明確にした依頼が記載されていなければ適切とはいえないのです。

適切な記載のために

また、通院が困難で日頃の高血圧の管理など、慢性疾患のコントロールを依頼する場合も、その旨を記載することが大切です。最近は、医師事務作業補助者が記載を代行する医療機関も増えていますので、医師への周知ももちろんですが、記載する医師事務作業補助者や、算定する医事課の職員が適切な知識を得ておくようにすることも重要です。

これに加えて、医療機関の組織的な対応として検討すべきなのは、診療情報提供書を管轄する医療連携部門の管理体制を強化することや、診療情報管理部門の監査です。特に診療情報管理部門の監査体制は、1件1件、記載の適切性を診療情報管理士が点検することになるので、負担も大きくなります。それだけでなく、監査が主観的にならないように監査条件を明確にし、作成側に対しても望ましい記載や監査ポイントを事前に定義づけて説明する必要もあります。
このような体制を敷くには、院内の関連する組織(委員会)にある程度委ねる必要があります。たとえば地域連携の委員会や診療情報管理委員会の関与・協力が求められます。

今回扱ったのは診療情報提供書ですが、診療報酬請求に係る書面等の条件や対象は、他の項目にも多数設定があります。これらに対し、保険指導的な監査を定期的、かつ、多種多様に実施するのは骨が折れるかもしれません。しかし、不適切請求が起こる傾向を把握して改善に結びつけるためだと考えれば、必要な院内体制ではないかと思います。ぜひ、ご検討を。

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。

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