2018年度診療報酬改定も答申が出て、改定の全容が見えてきました。筆者も医事課長として病院幹部会議で改定について詳しく説明する予定なので、病院内部では、その影響を試算する動きが急ピッチで進んでいます。同じように、きっと多くの医療事務担当者が、答申の「個別改定項目」の読み込みに没頭していることと思います。
施行2カ月前から、診療部門や看護部を巻き込んだ議論を
筆者の経験上、改定に関する事項は複数の医事担当者で読み込んだ後に、その解釈や算定要件、そして施設基準についてしっかりと議論することが大切だと考えます。できれば、この段階で関連する診療部門や看護部を巻き込んで打ち合わせをしておきたいところです。一番悪い例は、3月上旬に病院関連団体が行う改定説明会の後に、急いで動き出すこと。ましてや、医療事務の委託業者などの担当者を招いて院内説明会を行い、そこから関係部署とすり合わせるとなれば、かなり対応が遅れることになります。
算定要件・施設基準・経過措置の3点をチェック
具体的な改定項目を見ると、早めの動き出しが肝心だと気付きます。例えば、処置項目「J038人工腎臓(1日につき)」の算定要件には、新たな条件が設けられます。
[算定要件]
- 関連学会から示されている基準に基づき、水質管理が適切に実施されていること。
- 透析機器安全管理委員会を設置し、その責任者として専任の医師又は
専任の臨床工学技士が1名以上配置されていること。
ここに示されている1.水質管理と2.透析機器安全管理委員会は、これまで透析液水質確保加算に設けられた「施設基準」でしたが、今回の改定で人工腎臓の「算定要件」に挙がっています。算定要件とは、当該算定を行う際には、備えておかなければならない条件のこと。一見、透析施設を有する医療機関は、4月からの透析算定に備えて、急いで水質管理と当該委員会を設置させる必要があるように見えますが、個別改定項目の記述を読み込んでいくと「算定要件にかかわらず、人工腎臓に係る診療料は、平成31年(編中:2019年)3月31日までの間、算定できるものとする」といった「経過措置」が付帯されているとわかります。
このような事例は基本的なことですが、答申の個別改定項目を読み込む時は、算定要件と施設基準、そして経過措置を認識することが大切です。加えて、次のような点を意識して読まなければなりません。
・施設基準の届け出が必要なのか
・急いで体制を整備することで増収となるのか
・現状のままだと逆に減収となってしまうのか
こうした読み込みは2月中に終えて、疑義解釈等が整う3月を迎えたいところです。
さて、次回からは、しばらく個別改定項目の読み込みについて解説していきましょう。
・【診療報酬請求最前線vol.16】どうなる?2018年度の診療報酬改定~事務職の心構え~
・【診療報酬請求最前線vol.19】看護必要度はDPCデータに代替される?入院基本料見直しに備えるには
・「7対1」の名称は消滅の公算! 入院評価体系の抜本見直しは必然 人員の不均衡は解消されるのか―医療ニュースの背景が分かる
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。
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