2018年度診療報酬改定の個別改定項目について、主なものを詳しく見ていきましょう。
今回は、「入退院支援の推進」です。読者の皆さんも気が付いていると思いますが、個別改定項目の一番初めに出てくるということは、厚生労働省が最も力を入れている、つまり、今回の改定の本丸と考えられます。
予定入院患者に対する早期の退院支援を評価
以前、筆者は、本連載の中で入退院支援に注目し、3つの機能(1.前方・後方など地域連携業務、2.医療福祉相談や退院支援などの相談業務、3.入院・退院のコーディネート業務)を挙げましたが、この評価は「3.入院・退院のコーディネート業務」に該当します。
(参考:『入退院支援センターの地域連携で忘れたくない視点―診療報酬請求最前線』)
新たに設けられた「入院時支援加算200点(退院時1回)」の算定対象(算定条件)には「入退院支援加算(現在の退院支援加算)を算定する患者であること」が明記されており、現行の退院支援加算を算定できる患者には、さらに入院時支援加算が算定できることになります。
一連の改定には、退院支援を促進させる狙いがあります。そのため、現在の退院支援加算1が、入院後3日以内に退院困難な要因をスクリーニングするよう求めている点について、入院前の外来時にまで前倒ししています。名称も「退院支援加算」から「入退院支援加算」へと見直されました。
外来時から退院支援ができるのは、計画的な入院(予定入院)以外ありえませんので、もう一つの算定要件には、「自宅等(他の保険医療機関から転院する患者以外)から入院する予定入院患者であること」という条件も設けられています。この中で自宅等からの入院に絞り込んだ理由には、在宅からの受け入れや在宅療養へと結びつける意図があることは間違いありません。
算定対象患者をスクリーニングする体制が課題
さて、入院時支援加算の施設基準にも注目してみましょう。当然、入退院支援加算(現在の退院支援加算)の届出を行っていることが挙げられており、さらに「入院前支援を行う担当者を病床規模に応じた必要数、入退院支援部門に配置すること」が記されています。
どのような職種で構成するのかは明らかにされていませんが、「留意事項」には療養支援計画の作成が条件になっているため、看護師や管理栄養士、薬剤師といったコメディカルであることが推測されます。
入院の予定が決まった患者に対し、入院中の治療や入院生活に係る計画に備え、入院前に以下の内容を含む支援を行い、入院中の看護や栄養管理等に係る療養支援の計画を立て、患者及び関係者と共有すること。
1 身体的・社会的・精神的背景を含めた患者情報の把握
2 褥瘡に関する危険因子の評価
3 栄養状態の評価
4 持参薬の確認
5 入院中に行われる治療・検査の説明
6 入院生活の説明
7 退院困難な要因の有無の評価
療養支援計画については、現行の退院支援加算の中でも入院時のスクリーニングが行われているので、その運用を外来の段階で取り入れるのか、早めの検討が必要です。
一方、「退院支援加算」が「入退院支援加算」に置き換わることで、算定要件にあたる退院困難な要因(対象者)の設定が増えます。例えば「虐待を受けている又はその疑いがあること」「医療保険未加入者又は生活困窮者であること」が増え、「同居者の有無に関わらず、必要な介護又は養育を十分に提供できる状況にないこと」には「養育」(下線部分)という言葉が付け加えられました。いずれも高齢者の在宅療養や小児医療の現状を反映してのことです。この他、施設基準条件にある、ケアマネジャーとの連携を評価した介護支援等連携指導料等の実績要件も、小児に対して手厚くなっています。
入退院支援関係は、以上のようなところが改定内容となります。当院も入退院支援センターを設置して、手術患者を中心にチームが介入する仕組みを構築していますが、予定入院で退院支援加算1を算定している患者実績はわずか10%程度でした。そのため、どのように退院困難事例を入院前の外来時から押さえ、入退院支援センターで介入していくのか、すでに検討が始まっています。現在は、クリニカルパス適応者から洗い出すのが良いのではないか、入院受付の際に全ての患者に、一定の項目で退院困難条件をスクリーニングすべきではないかといった案が挙がっています。入院前支援のための人員確保も問題になるので、引き続き注目したいところです。
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国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。
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