【医師の働き方改革】事例から考える、宿日直許可のスムーズな取得方法を伝授(前編)

エムスリーキャリアは2023年10月、社会保険労務士の三本道代氏を講師に迎え、「医師の宿日直許可取得ノウハウセミナー」を開催しました。ここでは、その内容や知っておきたいポイントをお伝えします。

進行:中川加菜(なかがわ・かな)
エムスリーキャリア株式会社 事業開発部

エムスリーキャリアにて主に医療機関向けのサービス開発に従事。今期より医師の働き方改革関連を担当し、医師の働き方改革.comのサービス開発を行う。ほっとらいん(相談窓口)の受付対応も担当。

講師:三本道代(みもと・みちよ)
社会保険労務士

介護医業に特化した人材紹介会社において人事・労務の現場を経験し、社会保険労務士の資格を取得。資格取得後、日本経営グループに入社。社会保険労務士として医療法人、社会福祉法人を中心に人事労務分野での支援を行う。現在は個人の社会保険労務士として、トラブル未然防止、働きやすい職場環境づくりを第一に考え、医療機関や一般企業など幅広い業種において支援を行っている。

宿日直許可がないと残業代の発生や時間外労働規制にも抵触しやすくなる

2024年にスタートする医師の働き方改革に向け、労働時間の管理などを進めていると思いますが、宿日直許可がそのすべてではりません。正しい労働時間の管理や法令遵守をするためのひとつのステップとして捉え取得するかしないのか、するのであればどのような形で取得するか考える必要があります。

宿日直許可は法的に「断続的な宿日直」のことを指し、本来業務の終了後などに宿直や日直の勤務を行う場合、当該宿日直勤務が断続的な労働と認められる場合には、行政官庁の許可を受けることにより、労働時間や休憩に関する規定は適用されないことになります。仮に宿日直許可なく宿日直を行うと、宿日直の時間全てが労働時間としてカウントされ、常勤で週5日(週40時間)勤務していると、宿日直時間は法定の週40時間を超えるので残業(割増賃金)の対象になります。残業代はその医師の時給単価×1.25×宿日直時間で算出しますが、許可なく残業代も払っていないとなると、未払いの残業代が発生することを意味するのです。加えて、22時から翌5時までは深夜割増(時間単価×0.25×深夜時間)も必要となります。

宿日直許可がない場合、時間外労働規制にも注意が必要です。A水準であれば年960時間を上限に定めていますが、15時間の残業(宿日直時間分)を月4回行うと年間720時間の残業発生とみなされ、月20時間以上の残業が別にあると年960時間はごく簡単に超過します。こうしたこともあり、取れるなら許可を取りましょうというのが現在の流れです。

もっとも問題になっているのは、外部の医師も同様に労働時間としてカウントされる点です。労働時間管理においては副業・兼業先の労働時間も通算してカウントされますので、本業の病院で日勤をした後に当院で宿日直を行う、本業の病院で週5日勤務をした後、土日に当院で日直業務を行う場合は法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超過し残業扱いとなるので、宿日直許可がない場合は外部の病院から医師を派遣してもらえなくなることが想定されます。死活問題になる可能性があり、前向きに検討しないといけません。

許可基準をおさらいすると、全業種に共通するのは、ほとんど労働する必要のない勤務のみを認め、必要であれば短時間業務を行うものが該当することや、労働時間でないので給与を支払う必要はありませんが、要件を満たした宿日直手当を支払うこと、宿直勤務は週1回、日直勤務は月1回を上限とし、宿直については睡眠設備の設置も条件です。

医師、看護師に対する許可基準も通達されており、重要なポイントは「特殊の措置を必要としない軽度のまたは短時間の業務に限ること」です。具体的には少数の要注意患者の状態変動への対応、問診などによる診察、看護師への指示確認などが該当します。また、宿日直の許可は所属診察科、職種、時間帯、業務の種類などを限っていることも可能で、深夜のみ、病棟宿日直業務のみという取り方ができるのもポイントです。

当記事の後編は、M3Careerプライムにて公開中です。

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