医師の負担軽減と24時間対応を両立 2016年度中に患者数1万人を目指す―医療法人社団悠翔会 佐々木淳理事長【後編】

在宅医療において、質を担保しながら365日24時間対応し続けられるように、現場ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。今回は、一都三県にまたがる9つのクリニックを通じて在宅医療を提供している、医療法人社団悠翔会(本部=東京都港区)を取材しました。
在宅療養支援診療所が制度化された2006年に設立され、急速に成長を遂げてきた同会では、救急診療部を創設し、地域の在宅クリニックの夜間対応のサポートもしています。法人を展開する中で見えてきた「在宅医療を提供する医療機関の役割」について、佐々木淳理事長に聞きました。

【前回の記事】
医師の負担軽減と24時間対応を両立 在宅医療を進化させ続ける原動力とは―医療法人社団悠翔会 理事長 佐々木淳理事長【前編】

救急診療部体制で大事にしていること

sa_interview―救急診療部を運営するポイントをお聞かせください。

主治医と当直医双方が自らのミッションを理解し、それに力を尽くすことだと思います。主治医のミッションは、患者さんを急変させないこと。予期せぬ体調変化を急変というので、予測できる体調変化は日中に専念して急変時にも落ち着いて対応できるように信頼関係を築いています。

一方当直医のミッションは、患者さんのニーズを再優先に不安なく暮らせるように支えること。在宅療養患者さんの中には、病気を完治させられない方も多く、時には医学的な判断以外の要素も重視すべきです。
在宅医療の患者さんやご家族は、不安と隣合わせで生活しています。「ご主人がいつもと様子が違う」などとご家族が不安になっているのであれば、医療的な判断だけではなく、安心を支えるために往診をすることも必要です。そのためには、診療能力だけではなく、コミュニケーション能力が不可欠。普通の救急外来と違い、在宅医療は電話での対応が最初の入り口になりますので、電話の向こう側がどんな状況にあるのかを感じ取りながら会話をしないと先方の要望に応えられません。患者さんが本音を言ってくれるように医師が本音を言える空気をつくることが大事です。

地域の“在宅当直センター”として

―どのような仕組みで、救急診療部を他法人と共有されているのでしょうか。

救急診療部は新橋と川口の2拠点で1晩医師2名の体制を作っています。医師配置の基準について質問を受けることがありますが、悠翔会は患者数と移動時間を加味しており、半径16kmで1名の医師が2500名の患者さんに対応できると見込んでいます。これは230名の担当患者さんがいた場合に一晩で1件の電話がかかってくるので、2500名で電話が10件前後、往診がその半分の5件前後だと想定しているからです。ただし、当直医2名が対応する5000人弱の患者さんを受け持つことは現状の悠翔会だけでは難しいので、他法人との連携を通じて、地域の在宅当直センターとして活用していただいています。悠翔会が当直機能を提供しているというよりは、地域で2名の当直医師を雇うために連携しているイメージです。

連携先には患者1名につき1晩50円を負担いただいています。居宅の患者さん100人であれば、1晩5000円、1ヶ月15万円です。患者数に応じたコスト分担としているため、シンプルで不透明感のない設計だと言われています。対応依頼は1ヶ月すべてでも可能ですし、隔週金土日だけ、または学会や旅行を理由にピンポイントに活用いただいても問題ありません。在宅医療の最大の障壁でもある24時間対応に対して、持続性の高い仕組みを活用しながら地域全体で患者さんを支えていければと思っています。

2016年度中に救急診療部4拠点、患者数1万人を目指す

―本年度の目標をお聞かせください。

2016年度中に現在の訪問エリア内で救急診療部をさらに2拠点増やして4拠点体制にし、連携先を含めて患者数1万~1万3000人に対応できるようにしていきたいです。ただ、これからはエリアを拡大するというよりは、密度の濃い出動体制を主眼にしていきたいと思っています。活動範囲の小さな当直医を増やし、密度の濃い緊急対応体制で持続可能な在宅医療体制をつくっていく―そうすれば、医師一人あたりの対応患者を現在の2500名より増やすことも可能になります。最近よく耳にする「効率化」というキーワードで考えると、在宅医療は、診療サービスの効率化ではなく、運営コストの効率化でしか成し得ないと考えています。今まで外来中心だった先生が無理のない範囲で在宅医療を行い、対応できない困難な症例や時間帯は救急診療部のような機能が引き受け、地域に求められている形で地域医療を支えていければと思います。

佐々木淳(ささき・じゅん)

筑波大学卒業後、当時32歳で「理想の在宅医療を実現しよう!」と、2006年に医療法人社団悠翔会を設立。


一都三県にまたがる9つのクリニック24時間対応の在宅総合診療を展開している。

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