
2025年10月2日に第199回社会保障審議会医療保険部会が開催されました。本記事では、同日の資料から病院の経営層の方々にとって関心度が高いと思われるポイントをご紹介します。
医療を取り巻く環境変化への対応と持続可能性
部会では、物価や人件費の上昇が医療機関の経営を深刻に圧迫している状況について、強い懸念が示されました。診療報酬によって運営される医療機関は、コスト上昇分を価格に転嫁できず、厳しい経営状況に直面していると指摘されています 。この課題に対し、社会経済情勢に応じた診療報酬の臨時改定や、国による補助制度の創設・拡充といった緊急対策を求める意見が上がりました 。
これは、単なる個々の医療機関の問題ではなく、国民皆保険制度と医療提供体制そのものの持続可能性に関わる重要な論点です。医療機関の経営が立ち行かなくなれば、地域医療の崩壊につながりかねません。経営層としては、こうした国の議論の動向を注視し、今後の診療報酬改定や各種支援策に関する情報を迅速に収集・分析していく必要があります。また、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が、サービスの効率化や質の向上、ひいては持続可能な制度構築に不可欠である点も強調されており 、各病院における積極的な取り組みが求められます。

病床転換助成事業の大幅な見直し案
今回の部会で注目すべきは「病床転換助成事業」の見直しに関する提案です。この事業は、療養病床などを介護医療院や介護老人保健施設といった介護施設へ転換する際の整備費用を助成するものですが 、より実効性の高い制度とするための変更が検討されています。
申請期限の延長と対象病床の拡大
まず、事業の新規申請期限を2030年3月末まで延長する案が示されました 。さらに、これまで原則として療養病床が対象でしたが、これを一般病床すべてに対象を拡大するという提案がなされています 。これは、今後の人口動態や医療需要の変化を見据え、より柔軟な病床機能の再編を促す狙いがあります。一般病床から介護医療院への転換ニーズが一定数存在することを背景としたもので 、経営戦略の選択肢を広げる可能性があります。

補助単価の大幅な引き上げ
もう一つの重要な変更点は、補助単価の引き上げです。現行の単価は2008年度の事業開始から変更されておらず、近年の建築費高騰などを踏まえると実態に合わないとの指摘がありました 。
これに対し、資料では以下のような単価引き上げ案が提示されています。
- 改修:50万円 → 120万円
- 創設:100万円 → 240万円
- 改築:120万円 → 300万円
この単価は、過去に実施されていた地域医療介護総合確保基金の事業などを参考にしたものであり 、実現すれば病院が病床転換を検討する際の後押しとなるでしょう。新たな地域医療構想が2027年度から順次開始されることを見据え 、慢性期医療や在宅医療の需要に対応するための投資判断がしやすくなることが期待されます。
