前回に引き続き入退院支援センターについて考えてみましょう。入退院支援センターには、次の3つの機能があることを述べましたが、その活動内容を簡単に説明します。
- 前方・後方での地域連携業務
- 医療福祉相談や退院支援などの相談業務
- 入院・退院のコーディネート業務
多職種対応による地域連携業務
前方・後方の地域連携業務とは、従来の医療連携室の機能を多職種からなる医療チームによって拡張し、より医療レベルの高い連携体制をつくることです。
具体的には、診療所との患者紹介に関わる関係づくりも、治療後の逆紹介のタイミングや連携情報も、看護師や薬剤師、栄養士、MSWなどの医療技術職が関与することで極めて向上します。開業医からの依頼に適切な対応ができることはもちろんですが、医師以外の医療スタッフとの技術的な支援や医療相談といった実務レベルの関係づくりがうまく行き、強い信頼関係ができます。これは、地域医療の機能分化にとっても重要な連携要素で、特に病病連携や在宅医療との連携には必要不可欠なものになります。
相談業務が未収金防止にも
続いて、医療福祉相談や退院支援などの相談業務ですが、これはいわゆる退院支援加算1を前提にした活動です。退院支援には、入院時からの積極的な介入が効果的と言われていますが、筆者は、さらに進めて、入院予約の段階から対策を講じることを推進しています。予定入院であれば、入院に向けて外来で予約するタイミング、つまり、入院説明の段階から介入することは可能であり、退院の障害となるリスクを早期からキャッチすることが重要な意味を持ちます。
また、入院費の支払いが困難な患者については、生活保護などの社会的な支援を早急に検討し、可能であればいち早く手続きを進めます。これは一例ですが、入退院支援センターの事務職員ができることは、この他にもたくさんあるのです。
このような考え方は、退院困難に繋がるリスク項目をあらかじめ設定し、積極的に情報収集することで、未収の発生を抑制しようというものです。これまでは未収金の発生後に比重を置き、いかに回収するかを考えていましたから、考え方が根本的に違います。筆者の勤める医療機関では、入退院支援センターの受付事務が入院予約手続きの段階で、あらかじめ設定した未収金リスク項目に該当するところがないか確認・点検し、リスクがあればその情報を担当者へ提供。これにより、適切な早期介入に繋げています。次の一覧がそのリスク項目です。それぞれのリスクごとに問題点を明らかにした情報を発信し、あらかじめ決めた担当者が対応に当たるようにしています。
- 健康保険未加入者(自費算定)
- 限度額適用認定証の持参がなく患者負担が高額となるケース
- 過去分未収金発生患者
- 医療保険を持たない外国人患者
- 生活保護者
- 住所不定・連絡先不明の患者
- 独居で身寄りのない患者
- 若年者で国保加入(アルバイト等)の患者
- 緊急入院患者
次回は、3番の入院・退院のコーディネート業務を説明します。
・入院支援がもたらす効果とは~周術期管理チームに熱視線~―診療報酬請求最前線
・入退院支援センターの地域連携で忘れたくない視点―診療報酬請求最前線
・【元医事課リーダーのよもやま話】外来未収金を回収に導くポイント
・差額ベッド代の患者トラブルを回避する方法―診療報酬請求最前線
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。
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