2018年4月25日、各医療機関からの質問等を反映した「疑義解釈その3」が出ました。改定から1ヶ月を経過しての疑義解釈は、以前のものより具体的になっているため、施設基準取得の際に考慮することはもちろん、実運用に跳ね返る部分が大きいので重要です。今回は、その一例を取り上げてみましょう。
母乳外来の一部患者が算定対象
「乳腺炎重症化予防ケア・指導料」は新たに設けられた医学管理料で、出産後に乳腺炎を患った母親のケアおよび指導を担当する医師・助産師に向けた評価です。
診療上は分娩後の産褥期に行われる、いわゆる「母乳外来」が該当します。ただし、母乳外来にかかるすべての患者が算定対象となるわけではありません。なぜなら、対象患者の条件には「産褥性乳腺炎」など、乳腺の痛みなどの症状があること(急性乳腺炎で母乳育児に困難があること)が挙げられているからです。そもそも一般的な母乳外来では、授乳・搾乳方法の相談、赤ちゃんの体重チェック、乳房のトラブル対応などを総合的に行っているため、乳腺炎はその中のケアのひとつとされています。
施設基準の届出に「規定した」≠「記載した」
概念的なところを踏まえ、肝心な疑義解釈の中身を見てみましょう。
(答)施設基準で規定する医師又は助産師が実施した場合に算定できる。
この疑義解釈は、乳腺炎の対応にあたる専任の医師・助産師が施設基準の届出とリンクしているのかを説明したものです。回答部分にある「施設基準で規定する医師又は助産師が実施した場合に算定できる」という一文の「施設基準で規定する」を「施設基準の届出に記載した」と読んでしまうと誤りです。施設基準で規定するとは、「施設基準条件に合致した」という意味で、届出書に記載した者だけが算定できる縛りはないのです。
この疑義解釈をわかりやすく、筆者が簡潔に読み替えると次のような質疑応答になります。
(答)施設基準に規定する経験、認定等の条件に合致した医師及び助産師であれば良い
ここに示した「施設基準に規定する経験、認定等の条件」とは医師の場合、当該診療の経験を有することとなります。一方、助産師については、乳腺炎および母乳育児看護の経験が5年以上あり、さらに医療関係団体等(アドバンス助産師)の認定取得者を指します。この条件を踏まえ、届出書には「1名以上」を条件に記載します。よって、疑義解釈にあるような質疑応答が成立するのです。
質問の意図は、届出用紙を見るとよくわかります。
指定された様式には、専任の助産師を記載する欄は2名分となっています。もちろん、これ以上記載しても構いませんが、届出担当者は準備に必要な資料等の関係で(時間も無いので)必要以上には記載しません。
しかし、算定条件とリンクするのであれば、助産師を何人まで(むしろ全員を)届出に記載すべきか疑問が湧き、上記のような疑義が出たのでしょう。
施設基準は往々にして独特の言い回しがあって難解です。中には、あえてどちらにも捉えられるように幅をもたせ、複雑に記載されている見解もあります。医事職員は、施設基準や疑義解釈の読み込みの部分で大きな間違いをしないように十分注意しましょう。
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。
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