まだまともに転職活動の話に進んでいませんが、転職活動記が第6回を迎えました。
これまでは、コンサルタントの方との面談や、具体的に紹介していただいた求人情報をもとに、病院事務職の転職市場を大きく「医事課」と「医事課以外」で分けて考察してきましたが、今回は部署別での事務職のキャリアや、今後求められる人物像について考えてみたいと思います。
(1)医事課でのキャリア
スタッフ編・管理職編に分けてまとめましたが、いずれにせよ必要になる能力は「診療報酬への理解と実践」です。病院の収入が診療報酬から成り立っている以上、その請求に関わる医事課という存在はなくならないでしょうし、そこで働く人に求められる能力も大きくは変わらないと思っています。
診療報酬の請求をする経験は、現行制度だと医療機関でしか出来ないので、勤務年数がある程度評価に直結してくる分野なのかなとも思います。
また医事課の中でも、
- 管理職になって医事業務の経験をもとに部署や人のマネジメントをするキャリア
- 「診療報酬で困ったらこの人に聞け!」というくらいの専門性を持ったキャリア
と、大きく二通りのステップアップがあると考えています。
どちらが優れているという話でなく、自分の興味や志向に応じて考えるべきものですが、自分がどちらを目指していくのか、医事課で働く中で頭に入れておいたほうが良いことかなと思っています。
(2)医事課以外でのキャリア
こちらはどちらかというと転職者が活躍できるフィールドであり、また今後の医療機関経営を考えるうえでも、中途採用者を増やすべき分野なのかなと思っています。
特に費用に関連する部署(資材、施設、システムなど)は、病院の支出に大きな影響を持っていますが、取引先となる会社の事情を理解している病院外の企業での勤務経験が、支出コントロールを行うにあたり生きてくるのではないかと思いました。
例えば、資材管理であれば医療機器メーカー出身者、施設であれば不動産・建築会社出身者、システムであればIT関連企業出身者が病院の職員として仕事をし、業者との折衝を担当することで、価格交渉や依頼した業務の管理をより専門的に、無駄なくできるのではと思います。
実際に企業系のグループ病院だと、例えば施設分野にグループ企業の不動産・建設系の人が出向で来ていたり、システム分野にシステム系の人が出向で来ていたり…ということがあるようです。もちろん、病院で働くからには医療の実情を知ってもらうことが大前提ですが、今後このような部署で働きたいと思っている病院事務の方は、自身の競争相手が院内職員ではなく、他業界の中途採用者になる可能性があることは念頭に置いておいた方が良いかもしれません。
(3)双方の知見や実績を併せ持った病院事務のゼネラリストとしてのキャリア
最後になりますが、(1)で働く立場の人と(2)で働く立場の人、そして医療現場で働く人の間に立って、病院の経営方針の達成や各プロジェクトのマネジメントを行う仕事ももちろん存在し続けると思います。
いわゆる「経営企画部門」が求める人材像であり、また将来の事務長・理事長候補者が目指すべきキャリアといえると思います。
幸いにも、私の病院事務業界の知り合いや先輩でこのような立場で働いている人を多く知っているのですが、
- 他業界でのプロジェクトマネジメントやリサーチの経験をもって、病院業界に転職してきた人
- 医事や企画の経験をもって、他の医療法人の企画部門や院長室に転職した人
- いずれは医療業界でもう一度働くことを念頭に、現在は他業界に身を置いて自身の経験値や能力を高めている人
など、そのポジションにつくまでの経験は本当に様々です。
転職活動での情報収集を通じて、やはり自分としてはこの(3)のキャリアを目指したいのだなと改めて思いました。ちなみにこのようなポジションで働き、その医療法人に良い結果を与えられるゼネラリストもやはり枯渇気味のようなので、市場価値的にも大きい役割だと考えています。
病院内で培った医事の知識をベースにしたゼネラリストとなるのか、それとも他業界で培った専門分野やスキルを武器にしたゼネラリストとなるのか。道は一つではないですが、自分が5年後・10年後にこのポジションを目指すとして、では次に行く会社や部署はどのようなところが良いのかを考える必要があるなと思いました。
ここまでを転職コンサルタントとの面談や実際の求人情報などを見て考えたのですが、ここからはいよいよ実際の転職活動の話に移っていきます。
(※本記事は、「病院で働く事務職のブログ」2019年3月3日掲載の記事を一部編集の上、転載したものです)
【プロフィール】
病院事務職歴7年。新卒で500床規模の急性期病院の事務職員として入職後、医事課入院部門、経営企画部門、医療の品質改善部門に所属。診療報酬請求や各種窓口対応などの医事業務から、看護業務改善や病院の機能評価受審の事務局担当といった院内プロジェクトまで様々な業務に従事。現在は再び医事課入院部門に所属し、医事業務全般に加え、医事課スタッフの採用・教育、監査対応や委員会の事務局業務にも携わっている。
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【シリーズ一覧】
・(1)転職活動を始めたきっかけ
・ (2)転職コンサルタントとの面談
・ (3)「デキる」医事課職員へのニーズの高さ(スタッフ編)
・ (4)「デキる」医事課スタッフへのニーズの高さ(管理職編)
・ (5)医事課以外の事務職員の転職市場は?
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