貴院の人件費率は適正?収益改善につなげる「財務諸表の読み方PL編」

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自院の収益構造を理解し、有効な改善を図るために必須のPL分析。人件費率や医師1人あたりの外来患者数などの具体的な分析方法を、医療機関に対し財務諸表に基づいた経営改善を提案している濱岡勇介氏が解説します。本記事は、濱岡氏が講師を務めたセミナー「今さら聞けない財務諸表の読み方PL編」を編集したものです。

過去からヒントを得る「時系列比較」

前回は、“病院の黒字”実現に欠かせないPLについて、基本的な読み方を紹介しました。しかしそれだけでは、どうやって病院を黒字にすべきか分かりません。そこで、2種類の比較法を使ってPLを分析していきます。

1つ目が、自院内での変化から課題を見つけ出す「時系列比較」です。時系列比較では、年月単位での変化や、前年同月比をチェックすることで、自院の特徴や課題を浮き彫りにできます。具体的には、過去数年間における医業収益などの経営指標をグラフにして、その期間中に実行した主な施策を書き出します。

たとえば図1を見ると、医業収益がほぼ2年ごとに増加しています。この期間中、スタッフの増員を行っていたため、医師とコメディカルの人数も書き出してみます。そうすると、医業収益とコメディカルの人数に相関関係があると仮説を立てられますね。もちろんこれだけで断定はできませんが、医業収益をさらに伸ばすためのヒントになります。

図1

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他院との違いから課題を見つけ出す「ベンチマーク比較」

他院との違いから課題を見つけ出す「ベンチマーク比較」もあります。ベンチマーク比較では、さまざまな経営指標を施設形態や病床数の似通った他院と比べます。実際に、いくつかの指標で比較してみましょう。一般病院(150床)の場合で見ていきます。
なお、以下3つの指標で使用する基準値は、厚生労働省が公表している2011年度「病院経営管理指標」を元に作成したもので、全国1069病院の回答から算出した平均値です。

(1)人件費率

投資に対して収益を確保できているか、病院の収益性を図る指標として使われます。
図2を見ると、150床の一般病院は56%が基準値です。人件費率が56% より高いほど、無駄な人件費がないか精査する必要性が高まります。原因は大きく分けて、(1)1人当たりの人件費が高い(2)職員数が多い―のどちらか、または、両方が考えられます。逆に低いほど経営上は良いのですが、職員に不満が出ていないか注視した方がいいでしょう。

図2

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(2)償還期間

長期借入金を完済するのにかかる年数を指し、財務の安全性を示す指標の1つです。計算式は、長期借入金を返済原資で割ります。返済原資には、税引前当期純利益から法人税等30%を控除した税引後当期純利益と、減価償却費の2つがあります。

図3を見ると、150床の一般病院の場合、償還期間が6.4年より長いなら、長期借入金が多すぎる可能性があることが分かります。その場合、銀行の対応も厳しくなり、追加融資を受けづらくなります。借入金を減らし、医業利益を増やす施策を考えなければいけません。

図3

図3

(3)医師1人あたりの外来患者数

病院機能の充実度を示す指標の1つです。

こちらも150床の一般病院の場合、10.09人が基準値になると分かります。10.09人を上回っている場合は、収益性が高いと言える半面、(1)患者1人当たりの診察時間が短くなって患者満足度の低下につながっていないか(2)医師から過重労働による不満が出ていないか―などを確認する必要があります。一方、10.09人より少なくなるほど収益性が悪化する可能性もあり、業務改善の必要がないかチェックした方がいいでしょう。

図4

図4

経営指標は“病院のバイタルサイン”

このようにPLを見れば、さまざまな仮説を立て、“病院の黒字”実現に向けた具体策を練ることができます。

「PLを細かく見なくても肌感覚で分かる」とお考えの方もいるかと思います。しかし、医療現場ではバイタルサインなどの数値を元にして患者の治療法を考えるように、病院経営も経営指標を元にして施策を考えていくことが求められます。そうすることで、院内のさまざまな方と議論したり、銀行など外部の方に説明したりする場面で説得力のある意見を出せるでしょう。ぜひ、PLを含めた財務諸表を積極的に活用してください。

濱岡勇介(はまおか・ゆうすけ)
hamaoka慶應義塾大学経済学部卒業後、都市銀行にて法人取引、与信管理に従事。300床規模の医療機関などに対して、経営改善の提案、中長期計画の立案、融資を実行。その後、製造業の事業再生プロジェクトに参画、2012年にエムスリーキャリア株式会社入社。現在は、医療コンサルティング部門にて、医療機関の戦略立案とその実行を支援。

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