勤務先の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応が、医師の勤続意欲に影響を与えています。医師689人が回答したアンケート調査(※)では、医師の6割が今後の勤続意欲への影響があると回答しました。調査の概要をお伝えします。
※2020年6月6~14日、m3.com会員の勤務医を対象にエムスリーキャリアが実施
勤務先のコロナ対応、4割が「満足」~医師689人アンケートvol.1 はこちら
医師6割が、職場のコロナ対応をみて「勤続意欲に影響」
勤務先のCOVID-19対応を受けて、今後の勤続意欲に影響するか尋ねると、影響が「非常にある」「ややある」と回答した医師は合計で57.6%と、約6割に上ります(図1)。
あわせて、どのような影響があったのかも尋ねました(図2)。
図2から、過半数がネガティブな影響を受けていることがわかります。45.3%の医師は勤続意欲が低くなっており、勤続意欲が高まった医師(40.5%)を上回る結果に。また、退職を検討し始めた医師も6.3%いました。
勤務先対応で「勤続意欲が高まった」…スタッフの団結力もカギに
勤務先のCOVID-19対応で「勤続意欲が高まった」と回答した医師のコメントを紹介します。
※記事内で紹介する声は、一部編集しているものもあります。
【勤続意欲が高まった】
病院としてのCOVID-19対応が、勤務先への評価を高めるきっかけとなった意見は多くでました。
勤務先を再評価
- 病院の対応を見て、もう少し働いてもいいかなと思った
- スタッフを大切にするという気持ちが重要
- 自分の勤務先はしっかりしていると改めて感じた
- 職員の安全をしっかりと考えた対応ができる限りは、できる範囲で当院の医療に関わっていきたいと感じた
- 感染対策がきっちりしており、職員の意識改革も十分に行われているから
「スタッフの団結力が高まった」という声も目立ちました。危機的な状況を共に乗り越えていくことで、スタッフに団結心が生まれたことが、勤続意欲につながったようです。
スタッフのチームワーク
- スタッフが一致団結している
- 全員で協力してこの難局を乗り越えなければならないと思う
- 医局の中の各科で、また、各職種を横断して団結心が向上した
また、COVID-19対応により、自身の医師としての使命感が高まったことを理由に挙げた方もいます。
医師としての使命感
- 医療従事者としてやるべきことある
- コロナ対応にやりがいを感じる
- 地域医療の継続の責任があるから
- 病棟入院数が徐々に減ってきた。平の立場だが、なんとかしなくてはという思いはある
待遇や評価に対する変化もありました 。
待遇や評価
- 給与が少し上昇した
- 新型肺炎の対応を「自分だけはやりたくない」という医師が軽蔑されるようになった
- やる気のある医師が正当に評価される
勤続意欲低下、転職検討の背景…「感染対策にあきれる」「仕事が減り収入不安」
次は、「勤続意欲が低下した」「退職を検討し始めた」と回答した医師のコメントを見てみましょう。
【勤続意欲が低下した・退職を検討し始めた】
多かったのは、感染症対策の不十分さを指摘する声です。
感染症対策
- 病院として感染対策にもう少し早くから取り組むべきだった。初動体制が遅れた
- あまりにも不十分な感染対策にあきれる。意見を言っても無駄であった
- 危機管理能力に疑問
- 病院経営陣が、負担の軽減、業務量の割り振りを立てられない。感染予防策導入など率先して行うべき幹部が機能していない
経営状況への不安も強いようです。
経営状況
- 患者の来院回数の減少、来院患者数の減少
- 忙しいのに病院収益が減少した
- 赤字経営
- 経営していけるのだろうか?という不安
- 仕事が減ってしまったので、収入面でも不安がある
また、業務量や負荷の増加についても多くの声が寄せられました。
業務負荷
- 仕事量が増え、残業、夜間の呼び出しなど休む暇がない
- 一生懸命働いても、患者さんからのクレームや、上司と部下の板挟みになることが多くなったように感じる
- 業務量が増えても、収入に反映されない
- 通勤に疲れを感じ始めた
- 病院としての方針が曖昧で、現場の負担が大きい
他にもさまざまな観点から不満が生まれているようです。たとえば、職員に対する対応についても、「守られていない」「配慮されていない」と感じる医師が一定数います。
職員への対応
- 組織として結局スタッフを守る意識は低いのだとわかった
- COVID-19に対応しているにもかかわらず、スタッフへの配慮が足りない
- 職員へのメンタルケアなどが不十分であると感じている
職場の雰囲気の変化についての声も寄せられました 。
職場の雰囲気
- 危機感がないスタッフとの仕事が苦痛となってきた
- どの職種でもフラストレーションがたまっている。職場がギスギスしている
自身への感染リスクを懸念する意見もあります。
自身への感染リスク
- 安全に対するリスクがあると心置きなく働けない
- 感染リスクを避けたい
また、これまで非常勤として働いてきた医師は、診療体制の縮小から勤務が一時なくなったことで収入がゼロになり、今後の働き方について考え始めています。
働き方
- 一般患者の受診を縮小したことから5月の非常勤の勤務がなくなり、6月は収入0円になった。6月からは勤務再開になったが、非常勤医生活を考え直す時期では、と考えるようになった
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