著者:野末睦(あい太田クリニック院長)
臨床研修制度のスタート前夜
私が研修病院を選んだのは、今から35年ほど前のことなので、臨床研修制度は始まっていませんでした。当時、筑波大学は新設の医学部で、私の学年は3回目の入学でしたが、米国型制度を、医学生の教育のみならず、研修制度でも採り入れようとしていました。
具体的には、外科系、内科系の診療科に進むレジデントは、最初の2年間は初期研修医として、外科系あるいは内科系診療科を数か月ずつローテーションすることになっていたのです。診療科の幅は狭いですが、現在の臨床研修制度の原型になった制度ではないかと思います。
加えて、私より上の2学年の卒業生は、100名ずつの卒業生のうち、40名ぐらいしか大学に残れませんでした。残りの人は他大学の研修医になったり、虎の門病院や三井記念病院などのレジデントプログラムに入ったり、いわゆる他流試合をするように促されたのです。私たちの学年では、この画期的な他流試合制度からはある意味後退して、80名ほどの研修医が筑波大学に残っていいことになりました。筑波大学以外からの大学医局派遣医師が中心で回っている医療機関に、フリーの筑波大学卒業生が入っていくことはやはり、様々な困難を伴ったようで、揺り戻しが働いたのだと思います。
研修病院選びのさまざまな視点
しかしながら、各科をローテーションするレジデント制度は、とてもよい研修になりました。そんな経験から、現在の制度下で研修病院を選択するにあたっては、できるだけ多くの診療科を回るプログラムを選べ、日本の色々な地域で研修してみることができるところが良いと思います。それに合わせ、大人数の研修がいいのか、それとも少人数での研修がいいかを、自分の個性に照らし合わせて検討することも大事でしょう。
そして、何より忘れてはいけないのが、医師としての人生全体について学び、シミュレーションして、選んでみること。そのために、本連載が役に立つかもしれませんし、さらには、電子書籍ではありますが、拙著『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう! 楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindleダイレクト・パブリッシング)が何かのヒントになる可能性もあります。ご興味のある方は是非ご一読ください。
「どのようにして、将来進む診療科を選択し、臨床研修病院を選びますか?」への私的結論
診療科の選択は得意、不得意ではなく、興味が湧く分野を選ぶのがいいのでは。臨床研修病院は、地域性、規模、そして広範な診療科での研修という視点から選択するといいのでは。
野末睦(のずえ・むつみ)
筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。
コメント