新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し、医療機関ではさまざまな対応を求められています。勤務先の対応を、医師たちはどのように評価しているのでしょうか。医師689人が回答したアンケート調査(※)の概要をお伝えします。
※2020年6月6~14日、m3.com会員の勤務医を対象にエムスリーキャリアが実施
不満?満足?勤務医からの評価を分けた最大要因とは?
医師が勤務先のCOVID-19対応に抱いている印象について尋ねたところ、満足している医師は「大変満足」「やや満足」を合わせて43.8%いました。一方で、「やや不満」は13.4%、「大変不満」は4.6%で、約2割の医師は勤務先の対応に不満を抱いていることがわかります(図1)。
勤務先の規模ごとに見てみましょう。
図2から、満足している割合はクリニックでは34.0%、400床未満の病院では43.6%、400床以上の病院では53.7%と、病院規模が大きくなるにつれて高くなります。
それでは、医師はどのような点を見て、勤務先を評価しているのでしょうか。
勤務先を評価した要因を、「感染症対策」「患者への対応」「スタッフへの対応」「経営状況」「その他」の中から尋ねました(複数回答)。
その結果、満足・不満に関わらず、感染症対策が勤務先の評価を決めているといえます(図3)。図の通り、すべての評価の要因として「感染症対策」が最も多くなっており、満足もしくは不満と評価している医師の7割以上が要因として選んでいるのです。
また、不満が高くなるにつれて、要因として増えてくるのは「経営状況」です。特に「大変不満」と回答した医師の50.0%、2人に1人が要因として挙げています。COVID-19の流行により、医療機関が外来患者数や手術数の減少など経営に大きな影響を受けている中、医師も勤務先の経営状況に敏感になっているようです。
一方で、満足度が高まるにつれて、「患者への対応」を要因として挙げる医師が増えています。満足度を押し上げる要因になりやすいようです。
満足度高めたのは…「早期から感染対策」「担当スタッフに手当」
自由記述で、評価の要因となった、具体的な内容・出来事を聞きました。
まずは、勤務先の対応に満足している医師の声を紹介します。
※記事内で紹介する声は、一部編集しているものもあります。
最初に、評価の要因として一番影響が大きい感染症対策について寄せられた評価です。
【大変満足・満足】
感染症対策
- 経営は厳しいと思うが、感染予防最優先で対応している
- 先手を打った対応で院内感染を防げている。医療用資材の枯渇を防げている
- 早くから面会制限や動線の分離など行っていた
- 換気システム、呼び出し用受信機を駐車場で待機している患者さんへ渡すなど、感染対策を行っている
- サーモグラフィ導入、見舞禁止、消毒、出張原則禁止、学生実習中止
- 換気システム、呼び出し用受信機を駐車場で待機している患者さんへ渡すなど感染対策を行っている
- 入院患者全症例に対するPCR検査施行
- 状況が変わるごとに院内感染対策の見直しがある
- 感染防御教育訓練の実施
早期から具体的な感染症対策を取っていたこということに加え、院内の感染対策の見直しや、感染防御教育訓練の実施なども評価のポイントになったようです。
患者への対応
- COVID-19患者を積極的に受け入れている
- 積極的に感染症指定病院からの搬送依頼を受けている
- 患者の受け入れ、接触者外来の実施など、地域に貢献できている
COVID-19患者の積極的な受け入れなど、患者や社会への貢献度も重視していることがわかります。
職員への対応
- 経営のことも大切だが、職員の安全を優先した感染対策を実施してもらえたことはありがたかった
- 負担のかかる職員への対応が良い
- 担当したスタッフに手当てがつくなどの対応も満足できるものである。病院全体としては収入が減って経営は大変らしいですが…
- 経営のことも大切だが、職員の安全を優先した感染対策を実施してもらえたことはありがたかった
- 緊急事態宣言発令に伴い業務量の低下が予想されたため、非常勤の職員の皆様に自宅待機をお願いし、その間8割の(給与)お支払いを保証し、非常勤職員の仕事は常勤職でこなしました。この対策は、非常勤職員の通勤に伴う感染リスクの低減、コロナウイルス院内持ち込みリスクの低減にも寄与したと考えています
総合
- しっかりとした対応マニュアルが作られている
- 患者さんが感心する感染対策と経営状況の悪化がなく、患者が安心して受診している点
- 毎月会議を開いて、意思統一をしている
- 全職員が対策の重要性を理解してくれた
- 患者さんが来院した際の、誘導経路の工夫や、マスク品薄時、備蓄していたマクスを職員に対して大盤振る舞いしたこと
COVID-19の対応で負荷がかかったり、リスクが高まったりするスタッフへの安全面、待遇面でのケアも満足度につながっています。
「待合室、職員食堂、院内会議が三密状態」…不満医師の声
それでは、不満を抱えている医師の声はどうでしょうか。
【大変不満・不満】
感染症対策
- 感染防御に対しての関心があまりにも低い
- 待合室、職員食堂、院内会議が三密状態
- 入院患者に対して、家族や知人の面会が自由に行われている。また、入院患者の外出や外泊に制限がない
- 感染リスクに対する正しい防御が十分でない。発熱患者などに対する対処を施設としてしっかりしてほしい
職場の感染症対策に対する危機感が伝わってきます。
経営状況
- 経営が危ない
- ボーナスが減るのは困る
- 経営が悪化するのは分かるが、人件費削除や賞与取り消しを行うのは、かえって職員のやる気を削ぐ
職員への対応
- 換気の悪い部屋で防護服もなく、発熱患者を診察させられた
- 一部のスタッフに押し付けている
経営悪化による賞与の減少を懸念する声が複数寄せられました。また、職員への対応についても、職員の安全や負荷に対する配慮の少なさが評価を下げているようです。
総合
- トップの方針が曖昧
- 院長からの説明が少なく、病院としての方針がわかりにくい
- 対応方針がない。目先の対応だけしかやらない
- 患者対応の仕方や体制が頻繁に変わり、現場として混乱する
- 医療資材を購入するゆとり、人的なゆとりがない
- 患者が多すぎて対応できない
施設としての対応方針のあいまいさについて指摘する声も目立ちます。トップから明確な方針が示されないまま、現場が混乱していた状況が伺えます。また、人員体制や資材の不足も指摘されました。
次回は、勤務先のCOVID-19対応の勤続意欲への影響についてご紹介します。
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