病院事務職キャリア相談室vol.12: 事務長だけど異動ばかり…転職市場での評価は?

事務長 Oさん

40代後半、男性、病院事務職歴25年(うち事務長歴6年)

大学卒業後、複数の病院・施設を有する医療法人に入職。医事課員からキャリアをスタートし、事務長まで昇進することができました。管理職に就いてからは、新規開設や建て替え、移転、増床、縮小など、新規のプロジェクトが立ち上がる度に法人内異動を繰り返しています。最近は事務長という職位ながら、主にプロジェクトリーダーとして日々業務を行っている状況です。

 法人が目指す方向性を実現するため、ゼロベースで施設運営に携わることはやりがいがありますし、軌道に乗ったときの達成感は何物にも代えがたいなと思っています。しかし、プロジェクトを進める中で、たとえば後進育成や部署間の連携強化、地域連携の強化、人事制度の見直しなど、長期的にフォローしたい事象が出てきても、新たなプロジェクトで別の施設に赴任するため関わることができません。そうした経験を繰り返すうちに、「一つの施設に腰を据え、長い期間をかけてじっくり課題解決を行いたい」という思いが芽生えてきました。

前述のような経歴ですので、事務長という肩書ながら、スキルが偏っているようにも思います。病院の規模にはこだわりませんが、転職は可能なものでしょうか?
また、転職を考えるにあたり確認した方が良いことなどあれば教えていただけたらと存じます。

【回答者】雪竹舞子(事務職専門コンサルタント)

医療事務職キャリア相談室
ご質問ありがとうございます。一般職員から事務長までキャリアアップされたご実績が素晴らしいですね。Oさんの日々の努力とその成果の賜物だと思います。プロジェクトの成否のみならず、病院の長期的な運営や現場の状況にまで目を向けている点にも、視野の広さを感じます。

さて、Oさんのご経験を鑑みますと、転職は十分、検討可能です。スキルが偏っているとのことですが、新規開設や建て替えは病院経営の中でも重要なプロジェクト。また、周囲を巻き込みながら幅広いプロジェクトを実行されたご経験は大きな強みです。Oさんの知見や手腕を欲する病院は多いでしょう。スキルを活かすという観点では、特に移転や建て替えの予定がある病院や、組織拡大中の法人などでニーズが高いと思われます。

ただし、多くの拠点を持っているグループや拡大中の法人ですと、現在のOさんの働き方に近くなってしまう可能性がございます。1拠点に長く携わりたいというご希望をふまえると、比較的コンパクトな法人の病院で、移転や建て替え、増床を検討しているところに入職し、長期的に経営に携わっていく方が良いかもしれません。もちろん、そうしたプロジェクトの予定がなくても、現事務長が後任を探している病院や、欠員が出ている病院も選択肢になりえます。

転職を検討する上での確認事項としては、まず、ご自身の強み・弱みが挙げられます。たとえば、「即戦力として力を発揮できる業務」「少しブランクがあり、キャッチアップに一定の時間が必要な業務」「未経験で1から学ぶ必要のある業務」といった項目別にご経験を整理しておくと、病院側も求める人材とのすり合わせがしやすいので、ミスマッチ防止に効果的です。ポイントとしては、ご実績だけでなく、未経験の業務についても確認しておくこと。盲点になりがちですが、未経験の範囲を明確にしておくことで、求人先は自院内でその業務を担える人材や部署の有無を確認できます。

次に、Oさんがこれまで担当されたプロジェクトについて、病院や組織の規模と施設形態を確認しておくといいでしょう。急性期、回復期リハビリテーション、地域包括ケア、慢性期、精神、クリニック、老健…。どの施設形態および病床区分でのご実績が多いのか・得意とされているのかがわかれば、求人先のニーズと照らし合わせやすいです。また、紹介会社を利用される際は、Oさんにご活躍いただける環境をコンサルタントから提案することも可能だと思います。

 Oさんは転職を検討したい理由や携わりたい業務などが既に明確でいらっしゃいますから、その軸に則って活動すれば、きっとご希望に沿う働き方をかなえられると思います。40代は病院側のニーズが高い層ですから、タイミング的にもマイナス要素は少ないでしょう。まずは求人を見てみて、「これは」と思うものがあれば、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

《まとめ》

(1)病院事務長への転職は十分に検討可能
(2)強み・アピールポイントだけでなく、弱い部分についても整理する
(3)経験を活かせる規模感、施設形態かどうかを見極める

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雪竹舞子(ゆきたけ・まいこ)
エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 事務職紹介グループ
大学卒業後、企業にてBtoC営業とセミナー企画・運営に従事。兄弟が先天性の疾患を抱えていたことから、思い入れの強かった医療業界に飛び込むべく、エムスリーキャリアに入社。現在は、前職での営業経験も活かしながら「顧客ファースト」を信念にキャリアコンサルタントとして活動中。趣味はミュージカル・舞台鑑賞で、月1回の鑑賞を欠かさない。
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