メディアに取材されるニュースリリースの書き方―病院マーケティング新時代(34)

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本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣が、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報の取り組みを取材・報告します。

著者:松本卓/病院マーケティングサミットJAPAN Executive Director

小倉記念病院 医療連携課

目次

貴院はどんな時にニュースリリースを出していますか?

皆さんの病医院では、ニュースリリースを出していますか?

「ニュースリリースって何!?」という方もいらっしゃると思いますが、簡単に言うとメディアへのお知らせです。一般企業でよくあるニュースリリースのテーマは、新商品の発売や、新サービス・新規事業の開始、経営・人事など。世の中に発信したい内容について、ニュース素材として利用しやすいように文書にまとめ、メディアの担当者に「このネタで取材してもらえないですか?」と伝える文書です。

病院の場合、どんなニュースリリースが出せるでしょうか。

私が勤める小倉記念病院では年に5~6本、以下のようなタイミングで出しています。

  • 年4回の広報誌発行時
  • 新しい最先端の医療がスタートする時
  • 治療に関するガイドラインの大きな変更
  • 地元企業とコラボ商品を出す時

ニュースリリースをきっかけにメディアに取材してもらったことは数回程度なので、あまり打率は高くありません。それでも出し続ける理由は、メディアに「小倉記念病院は取材ウェルカムの病院だ」と認識してもらうためです。実際、日ごろテレビ番組で健康情報を扱う際や、病気の企画を制作する際に声をかけられることが多く、頼りにしてもらっていることを実感しています。

「新病院への移転」を取材されるにはどうすればいい?

今回は私が個人的に支援している病院のニュースリリース事例をお伝えします。

その病院が発信したいのは「新病院への移転」。ニュースリリースを出す目的は、小倉記念病院のように長期的に自院を認識してもらうことではなく、ずばり「新病院への移転」そのものがメディアに取り上げられることでした。

しかし、いち民間病院が「新病院を建てて引っ越ししました!!」というネタだけでは、メディアは取材に来てくれないのはわかっていました。皆さんは、「〇〇病院が、新病院に移転しました」というニュースを見たことありますか?あまりないと思います。

小倉記念病院が10年前に新病院に移転した際は、「日本一料金が高い豪華個室がある」という話題があったので取材してもらいました。つまり新病院移転というネタだけでは、取材には来てくれません。「新病院移転だけのニュースリリース出しても厳しいやろうなぁ」と思っていました。

そんな時、院長が「新病院移転のニュースリリース、新型コロナウイルス感染症と関連付けて出せないかな」と言ってきたのです。そのアイディアにもうビビビっと来ました。それしかない!メディアが扱う医療ネタはここ数年コロナばかりですから、病院がコロナ以外のネタで取材される可能性は低いでしょう。では、コロナと新病院の新築移転をどうやって関連付けるのか……?

答えはシンプルです。ニュースリリースのタイトルは「新型コロナウイルス感染対策を施した新病院建設」とし、内容には感染対策をした環境設備や医療設備を盛り込みました。これは強引にこじつけたわけではありません。新型コロナウイルスが猛威を奮っている中での建設でしたから、自然に新病院の療養環境も感染対策に配慮していたわけです。

  • 隔離個室を準備
  • 外来患者・入院患者の導線を分け、接触しないようにする
  • ベッドはソーシャルディスタンスが保てる間隔に設置
  • 病室はホコリがたまらないよう凹凸をなくし、収納は埋め込み式
  • 感染対策委員会だけではなく、新たに病院の清潔を維持する「環境サービス室」を設置

これらを写真付きで紹介したA4、2枚のニュースリリースを配信。結果としては発信後1週間で、テレビ取材1本、新聞取材1本が決まりました。

特にテレビニュースは3分間、単独で取り上げられました。なかなか単独での放送ってないんですよ。例えば小倉記念病院が地元ローカルテレビの取材を受ける際、企画テーマは「冬に怖い、心筋梗塞」などが多いです。つまり主役は「心筋梗塞」で、その医療現場として病院取材の依頼が入ります。他院の医師のインタビューとともに編集されることもあります。しかし、今回の主役は移転した新病院。だから、この病院単独で扱われることができたのです。

「こんなネタでプレスリリースしても無意味だ」と嘆く前に

この病院のホームページをGoogleアナリティクスで確認してみると、放送時間のユーザー数は普段の10倍近くに跳ね上がっていました。メディアへの取り上げられ方としては大成功だったと思います。

ちなみに小倉記念病院が先程ご紹介したような「心筋梗塞」企画で取り上げられ、地元ローカルテレビのニュースで放送されても、ホームページのユーザー数は少しも伸びません。やはり視聴者は、登場する小倉記念病院よりも「冬の心筋梗塞」の方が気になるのです。

風評被害を恐れて、「病院がコロナに関する内容を広報するのは……」と避けてきた方もいるかもしれません。しかし、「コロナ」がテーマでも、今回の事例のようにポジティブな内容として伝えることもできます。

「社会から見たら話題性もないこんなネタで、プレスリリースを作ったって無意味だ」と嘆く前に、そのテーマをいろんな角度から眺めて切り口を探し、魅力的な伝え方を考えてみてください。

>> vol.33 病院公式YouTubeが公開した「コロナクラスター収束までの37日間」。配信に踏み切った思いとは? 谷田病院―病院マーケティング新時代(33)

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