企業だからこそできる、二人三脚で病院経営を推進するビジネス―株式会社LCメディコム 橋本和久代表

変化を続ける医療業界では、さまざまなかたちで医療機関を支援するビジネスが生まれています。特に、医療コンサルティング会社は皆一様に見える一方で、さまざまな関わり方があるようです。今回取材したのは、経営課題を抱える医療機関に資金援助をした上で、病院経営の管理・運営までサポートする株式会社LCメディコム(東京都港区)の代表取締役社長・橋本和久氏。同法人では病院とどのような関わり方をしているのかを伺いました。

<インタビュイープロフィール>
株式会社LCメディコム 代表取締役社長
橋本 和久 氏

大学卒業後、医療コンサルティング会社を経て10年後に独立。その後、LCグループ入社以来、医療法人の取得に携わりメディカル事業部本部長に就任。2005年より急性期病院から慢性期病院、精神科病院においてM&Aや病院再生事業等ヘルスケア領域にて実績を残す。その後、医療法人や社会福祉法人の役員を歴任し常勤役員として病院再生案件に携わる。2014年からは病院に常駐し事務長として大幅な収支改善を果たし、売却までの支援業務に従事。2018年6月よりLC メディコムの代表取締役社長に就任。

病院経営に変革を起こす

-LCメディコムはどのような事業に取り組まれているのでしょうか。

経営課題や承継の問題を抱える医療機関への経営支援を行っています。それだけでなく、病院の管理・事業計画の立案までさまざまな役割を担い、健全経営や効率化といった点までカバーしています。当社は、第三者的立場でコンサルティングをするだけでなく、医療機関と対等な立場でディスカッションしているのが特徴です。

このようなかたちで医療機関をサポートすることを、私たちは「業務提携」と呼んでおり、この2年半で16法人と業務提携するまでに成長しました。

-橋本さんは独立後、LCグループに入社した上で医療機関の支援を続けているのはなぜですか。

私の根幹には、医療職の方々がスポットライトを浴びる社会になってほしいという想いがあります。というのも、私の身内には患者様に寄り添う看護師がおり、その姿に心から尊敬をしているからです。しかし、独立時代は1~2つの病院でしか経営支援に取り組めず、単体の病院では限界も感じ、もどかしい思いをしました。ですので、当社の事業を通して個々の病院を支えることはもちろん、「業務提携」する組織の力で、私たちのような経営支援ビジネスも意義のある仕事だということを医療業界に浸透させていきたいと考えています。

現場とステークホルダーをつなぐ

-LCメディコムのように、病院経営を主体的に運営する領域ではどのような人材が活躍していますか。

大きく2つあると思っています。

1つは、現場に出てがっちりとオペレーションを主導するタイプ。もう1つは、自社の取り組みについて戦略的にブランディングをしながら改善策を企画するタイプです。

経営改善の初期段階では、現場レベルで最適解を追求しなければ課題の解決に至りません。そのため、院内に入り込んで理事長や事務長とディスカッションしながら物事を前に進められる、実行力のある方が活躍できると思います。

-後者の人材は、どういった役割になりますか。

主には、サポートに入る病院ごとに戦略立案をした上で、LCメディコムの取り組みについて対外的な発信・交渉役を担います。当社の場合、私たちの取り組みは医療機関だけでなく患者様や資金調達をお願いする金融機関、医師会をはじめとした地域社会など、さまざまなステークホルダーと関係を持つことになります。そのため、当社の事業内容はもちろん、社会的な意義も含めて、しっかりと説明する役割が重要なのです。

-なるほど、重要な役割ですね。実際にその役割の人材が活躍した事例はありますか。

とある病院への支援を始めた際に、膨大な簿外債務が発覚し、明日倒産してもおかしくないような状況にありました。そこで、地元の金融機関と協力して何とか立て直した経緯があります。結果的には成功事例として行政側にもいい報告ができましたが、きちんと事業の実態を把握し、発信できる人材がいなければうまくいかなかったかもしれません。

-LCホールディングスの株主総会で発表された中期経営計画では、今後もグループを拡大していくと発表されましたが、今後の展望は何ですか。

グループの拡大とブランドの確立を両立し、“LCメディコムと業務提携した病院では、こういう医療・ケアが受けられる”という共通のビジョンを見出したいです。それに加えて、グループ内で人材を流動化させ、人材面での格差是正にも取り組んでいけたらと思います。

あとは海外事業として、いわゆるメディカルツーリズムを推進したいですね。というのも、日本は世界でもトップクラスの医療インフラが整備されているからです。世界中の6~7割のCTが日本にあると言われていますし、例えば、東京から3時間ほどで行ける上海では、CTやMRIの撮影待ち日数は長くて半年以上かかるところもあるようなので、日本の資源やノウハウを生かしていけたらと考えています。

-ありがとうございます。最後に、LCメディコムのような、病院経営を支える一般企業ではどのような人材が求められているかを教えてください。

やはり、成長意欲の高い方と一緒に働きたいと思います。一般的に、医療機関への経営コンサルティング業務を行う企業にはさまざまなバックグラウンドを持つメンバーがいます。しかし、医療機関の出身者からは、病院の外部から経営に携わる仕事がなかなかイメージされにくく、時には敬遠されてしまうこともあります。

ちなみに、LCメディコムは業務提携先の医療機関へ入り込んで、経営にオーナーシップをもって関わり続けるスタンスの企業です。かといって、自社の利益を第一優先するような関わり方ではありませんので、医療機関に寄り添った病院経営に関わりたい人にはやりがいがあるのではないでしょうか。当社では現場で経験を積んでもらいながら、将来的にはエリアでの責任者として複数の病院経営の意思決定を支えたり、病院取得のジャッジメントをしたりする人材を増やしていけたらと思います。

<取材・文:浅見祐樹、編集:小野茉奈佳>

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