【第16回】安泰は、「スルスル」っと上手くいく―事務長の悩みは99%解決できる

本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣が、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報の取り組みを取材・報告します。

安泰な生活がしたいんです!」

台風が夏の暑さも一緒に連れて行ってしまったのか、朝晩は涼しく過ごしやすくなりました。空の雲も形を変え、すっかり秋模様に。皆さんがこのコラムを読まれる頃は、もっと秋深くなっていることでしょう。
気付けば今年もあと3ヶ月。2020年。オリンピックイヤーで賑わう日本を、誰しもが想像していたのではないでしょうか。新型コロナウイルス感染症に、私たちの日常はあっという間に変えられてしまいました。1年後の今頃、2021年は、どんな風に生活しているのでしょう。

先日、就職活動をしている学生に、改めて就職について考えを聞いたところ、こんな答えが返ってきました。
「私はゆっくり働いて、安泰な生活がしたいんです」――。
もしかすると「幼さゆえ、経験のなさゆえの甘い考え方」と感じる方もいるかもしれませんが、私には新しい価値観に映りました。
だから、「いいと思うよ。ただ、そうしたいんだったら、頭使って生きるんだよ」と伝えました。

さて、「安泰な生活」って何でしょうか。
当たり前だと思っていた毎日が、明日は続かないかもしれない。私たちは、新型コロナウイルスにより、その現実を目の当たりにしました。しかし、どんなに環境が変化しても、「安泰した心」は持てるはず、と思っています。問題は、どうすればそれを手に入れられるか、です。

2つの「す」と、2つの「る」

安泰を手に入れるために、私が必要だと感じていること、また、鍛え直そうとしている精神について、今回はご紹介します。それは、事務長が抱えるほとんどの課題や悩みにも役立つと思うからです。キーワードは「するする」。きっと、スルスルっと解決しますよ。

許「す」・手放「す」

皆さんは、誰かを「許せない」と思うことはありますか。

最近、私は友人の態度に腹を立てていました。「それはないんじゃない」と口から出てきそうになりましたが、勢いに任せるのはよくないと過去の苦い経験から学習しつつありますし、そのあと友人と気まずくなるのも面倒なので、しばらく何も言わずにいました。私はすぐに忘れる方なので、時間が解決してくれるだろう、と。しかし、なぜか今回は、怒りが一向におさまりません。「忘れよう」。そう思って数日過ごしましたが、心にひっかかりが残ったままです。時々ふと思い出しては、「ひどい。どうしても納得がいかない」と怒りがわいてきます。そんなことを繰り返した結果……、疲れました(笑)。

こんなに怒りの感情に引きずられていては、楽しめない時間がもったいない。そう考えたとき、「もう、いいや」と思えました。

許して、手放そう――。2つの「す」は、「許す」「手放す」です。

「正しいこと」ってなんでしょう

「許す」「手放す」が苦手、という方に、考え方のコツをお伝えします。

以前、恩師に「人が人を裁くことはできない」と教わったことがあります。そのとき私は、「正しくないことをすれば、裁かれる。注意し、裁くことは簡単じゃないの」と思いました。しかし、何となく気になって、その言葉をメモに書き留めていたのです。手帳に挟んだまま数年間が経ち、色あせてきたその言葉の意味が、今は分かるようになりました。「正しい」ってなんなのか、ということです。

同じものを見ていても、角度によって見え方は違います。例えば皆さんの手元にあるスマートフォン。机に置いて、真上から見ると、手のひらサイズの長方形ですが、充電口のある面を、机と平行に見てみると、細い線のような長方形になりますよね。例えば、充電口のある面からしかスマートフォンを見たことがない人に、「スマートフォンは手のひらサイズの長方形だ!細長い長方形なんて間違っている」と言っても、相手は理解できないし、納得できません。しかし、2人は見ている角度がちょっと違うだけで、目にしているものは同じなのです。

人は、誰しも自分の正義に従って行動しています。自分の正義に従わず、分かっていながら違うことをした場合に、後悔が生じます。正義は、人それぞれ。育った環境、関わってきた人たち、学んできたこと、生きてきた過程のさまざまな要素が、その人の正義を構築していきます。私が「正義ではない」と思うことも、別の人にとっては「正義」になりうるのです。

事務長のみなさんも、時には、部下に対して「許せない」と思うことや、「いや違う、こうだ!」と言いたくなるときもあるでしょう。しかし、そんなときは、「みんなそれぞれ違うんだ」と認識して、対話をしてみませんか。
逆に理事長や院長から「いや違う、こうだ!」と言われ、自分の意に反して従わざるを得ない場面も、きっとあると思います。相手のことも、自分の正義に従えない自分のことも、許してしまいましょう。

許せないという感情を、モヤモヤ、こだわり、執着を、思い切って手放してみてください。手放すのは勇気のいることですが、その勇気がきっと、あなたの強さになります。

認め「る」・褒め「る」

2つの「る」は、「認める」「褒める」です。

最近、私が実感したことをご紹介します。

私は、依頼は原則断らないようにしています。私を頼ってくださる思いに応えたいからです。
事務作業が少したまっていたとき、ある人から「至急、勉強会の資料を作ってほしい」と頼まれました。「いいですよ、やります」と引き受けたものの、ほかの仕事の締め切りもある(コラムの締め切りもある!)中で、資料を時間までに完成させるのは、正直大変でした。結果、睡眠時間を削ってなんとか完成させ、提出したのです。
そしたら、その方の第一声は「ここは、こうしたらどうかな」(!)
確かに、目的は勉強会資料の完成。質も大事ですよね。分かっています。分かってはいるんです。でも…。睡眠不足の私には、穏やかならぬ感情が芽生えました。「まず、『ありがとう』『お疲れ様』『大変だったね』と言って!」(声にならない心の声)。人には承認欲求があります。認めてほしいのです。

人の振り見て、我が振り直せ、です。「最初に『ありがとう』を言うように気をつけよう」と心に決めたできごとでした。

コスパ最強の「ありがとう」

事務長のみなさんは、「やって当たり前」「できて当たり前」と思われがちでしょう。でも、認めてほしいという欲求はあるはずです。
もしかすると「やって当たり前」だと思われることに慣れてしまって、部下にも同じような対応をしているかもしれません。私はそうでしたから……。
部下には、まずは言葉でしっかり「頑張っているのは分かっているよ。ありがとう」と伝えてください。そして、しっかり褒めてください。「すごいね、頑張ったね。できるじゃない」。もしかしたら相手はお世辞と受け止めるかもしれませんが、それでも悪い気はしないはずです。本当にささいなことで、人間のやる気はスイッチオンされます。

言葉にコストはかかりません。こんなにコストパフォーマンスがいいことはありませんよ。

事務長、大変なことも頑張っていることも、分かっています。
いつも、ありがとうございます!

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