適時調査の最終回では、その実際と、具体的な注意点について説明したいと思います。
調査員の着目点は、施設基準が満たされているか
大学病院や特定機能病院といった規模の大きな医療機関の場合は、10名程度で編成された調査員が入院基本料、入院基本料等加算、特定入院料、医学管理料、その他の特掲診療料といったように、保険区分ごとに聞き取りにあたります。調査員は、各地の厚生局の事務職員になりますが、その中には看護部門を担当する看護師や栄養関係の専門家が含まれています。そのため、看護、栄養部門は、聞き取り時にさらに個別に分かれて段取りよく進められます。特に看護配置や医療安全、感染対策、褥瘡や栄養といった入院基本料に関わる部分は重点的に見られます。
適時調査で一番問題となるのは、配置人数の不足や資格条件(経験年数、資格取得)が満たないといった施設基準の届出条件に抵触することです。届出時の担当者が人事異動や退職によって変更しているにも関わらず、従事者変更を行っていなかったなどは大きな問題にはなりません。
代表的な「7:1入院基本料」の場合、入院患者に対する看護職員の配置数や平均在院日数18日以内、「重症度、医療・看護必要度」25%以上といった基準がありますが、例えば、「現に看護を行っている病棟ごとの看護職員の数と当該病棟の入院患者の数との割合を当該病棟の見やすい場所に掲示していること」という通則は、うっかり見落としやすい部分です。
また、病院の入院基本料等に関する看護要員の数に示されている夜間帯(病棟)の看護師の配置数(特定入院料を除く)においては、「看護要員は、常時2人以上である」といった基本的な配置条件がありますが、これは、看護職員夜間配置12対1配置加算1のイを届け出ている場合には3名以上、特定入院料(例えばSCU)の対象病棟の場合には1名以上になります。このあたりが大変複雑な部分なので、自院の届出状況をしっかり把握しておくことが大切です。
医療事務作業補助体制加算の確認ポイント
一方、入院基本料以外では「医師事務作業補助体制加算1」のように、新たに配置してから6ヶ月以内における32時間以上の研修の実施や、医師事務作業補助者の業務範囲と配置を示した院内規程の作成といった、現場での取り組みを求めるものもあります。この加算の場合、次の6点が適時調査で具体的に質問、確認されるポイントになるでしょう。
- 病院勤務医の負担軽減及び処遇の改善に関する体制が整備されていること
- 勤務時間の8割以上が病棟または外来で行われている実態があること
- 院内計画に基づいた医師事務作業補助者の配置であること
- 医師事務作業補助者の責任者の配置がなされていること(当該補助者以外の常勤)
- 6ヶ月以内の指定研修が実施されていること
- 院内規程が整備されていること
繰り返しますが、これらはすべて、相手から質問され、証拠となる資料を見せて適切性が担保されます。よって、本当に日頃から適時調査を視野に置いた書面関係の整理が重要になるのです。
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。
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