2024年4月からの時間外労働の上限規制適応を目指し、医師の働き方改革に関する議論が本格化しています。しかし、コロナ禍の影響もあり医療現場の人手不足が深刻化する中で、医師の働き方改革は進んでいるのでしょうか。編集部では、m3.com会員を対象に医師の働き方改革に関するアンケートを実施。医師1213名の回答から、働き方改革の実現に必要なものを考えます。
目次
医師の働き方改革、医師の約半数が「実現できない」
2020年11月時点で、勤務先で働き方改革を「全く実現できない」「あまり実現できない」と回答した医師は47%で、「実現できる」「それなりに実現できる」の45%を僅差で上回る結果となりました(図1)。
運営母体別の傾向はどうでしょうか。図2をみると、社会保険関係団体や国、公的医療機関では比較的「実現できる」と答えた割合が高いのに対し、医療法人や個人では「実現できない」「わからない」が多くなっています。特に個人の場合は、開業医で他の医師を雇用していないケースも少なくないため、このような傾向が強くでているのでしょう。
実際に、働き方改革に伴う変化を感じている医師はどのくらいいるのでしょうか。アンケートで最も変化を感じる取り組みをたずねたところ、図3のような結果となりました。労働時間の管理など、基本的な内容に関しては比較的多くの医療機関で実施されるようになってきたものの、具体的な時間短縮の取り組みについてはまだ端緒についたばかりと言えそうです。
このほか、フリーコメントでは以下のような声があがっていました。休みやすい雰囲気が生まれているなど、具体的な変化を感じている医師がいる一方で、コロナ禍の影響で医師の働き方改革が思うように進まない現状も垣間見ることができます。
医師の働き方改革に伴う変化・影響を感じた具体的なエピソード
- 年休をとりやすくなった
- 有給休暇取得が義務化された
- 朝7時からのカンファレンスがなくなり、代わりに日勤帯昼に行うようになりました
- 医療事務系の方の雇用が多くなり、書類仕事がシンプルになりました
- 早く帰ることに対する抵抗感が減ってきている
- 院内で医師の労働負担軽減に関するタスクシフティングなどがかなり各部署で話合われるようになっている
- 当直明けの半日勤務が増えてきた。連日当直がほとんどなくなった
- 会議の効率化、スリム化
- なるべく効率的新働けるように、手術の組み方など出来る限り時間短縮の努力をするようになったことです
- 研修医が9~17時勤務となり、当直もなくなり、医局員で全てを賄っている
- コロナでそれどころでは無い!
- コロナが出てきてから、医師の働き方改革が頓挫したような気がします
- 合併症が起きた時に、代わる代わる診ることに対して、患者家族は納得がいかなかったようで、医師の働き方改革といっても昔ながらの風潮は消えないと思う
- 少なくとも私の働く神奈川県の大学病院では何一つ変わっていない。バイト(医局からの指示、病院も認識している)の日を数日有給扱いにして、有給を消化したように見せかけろと指示されたぐらいですね
- 外来終了時間を早めるように通達があったが、こちらは新患者の制限などできないため不可能だと感じた
- 研修医のみ早く帰って、上級医は遅くまで仕事をしている
医師が考える「働き方改革」実現に最も足りないこと
これまで見てきたとおり、医師の働き方改革実現の道のりはまだまだ遠そうです。それでは、実現のためには具体的に何が必要なのでしょうか。回答結果によると、約28%、実に4人に1人以上が「経営層の意識変容」が必要と考えていることがわかりました(図4)。
一方で、「医師本人の意識変容」「患者の意識変容」を挙げる声もほぼ同数となっています。医師の役職別の傾向を見てみましょう。
図5を見ると、「経営層の意識変容」と回答した医師は医員クラス・医長クラスでそれぞれ30%以上となっているのに対し、院長クラスは約20%、理事長クラスは10%を切っています。一方で、院長・理事長クラスの約30%は「医師本人の意識変容」と回答しています。
マネジメントする側・される側がお互いに不満を抱えている現状が読み取れるのではないでしょうか。経営層とメンバー層が認識をすりあわせ、お互いに具体的な取り組みに落とし込んでいけるかが、医師の働き方改革実現の明暗を分けるのかもしれません。
【調査概要】
医師の働き方改革に関するアンケート調査:2020年11月18日~26日、m3.com医師会員を対象に実施。
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