適時調査とは? “医療監視”との違い―診療報酬請求最前線


保険診療における指導・監査や適時調査は、医療機関が最も恐れる“立ち入り”であり、日頃から注意して保険請求を行っているところです。

適時調査と“医療監視”の違い

例えば、主に施設基準について監査が行われる「適時調査」は、5年に1回ほど実施されると言われており(※)、避けては通れないものです。よく、毎年行われる(いわゆる)医療監視と混同してしまう方が多く見られますが、医療監視は正しくは、医療法第25条第一項の規定に基づく「立ち入り検査(保健所など)」であり、医療法に基づいた安全管理体制や感染対策、個人情報保護法、放射線機器の取り扱いといった、医療機関の設備・管理の維持を目的に点検が行われます。
※医療課長通知上は「原則として年1回、(編注:届出の)受理後6か月以内を目途」

一方、適時調査とは、診療報酬支払に関わる種々の施設基準の届出に対し、要件に則って適切に実施されているか否かをチェックする調査となっています。したがって、入院基本料などの基本診療料から、医学管理・検査・処置・手術などの特掲診療料まで、すべての施設基準において、届出要項と異なるところがないか、その運用と適切な人員配置、従事者の確認が行われます。基本的には、診療報酬算定(レセプト)と診療実態の整合性について問われるものではないので、診療録を提出する必要性はないのですが、実際は、診療の手順や様式の確認といった調査の流れの中で、電子カルテを適時調査の会場に配置することを求められることが一般的のようです。

適時調査が実施されるまで

適時調査が実施される場合、実施日の1か月前に書面で通知され、事前に提出しなければならない書類が示されます。その期限は実施日の10日前程度。事前提出書類には、病棟における看護師の勤務表や、特定入院料の治療室の患者数に関する書類といったように、入院基本料の配置人数や従事者に関するもの、さらに医療機関の職員数や患者数、平均在院日数、差額ベッドの提供状況などといった施設機能に関する書類も含まれています。

当日の提出資料は前日に通知

そして通知された医療機関は、通知後1か月で効率よく受け入れ体制を整える必要があります。その理由は、事前提出資料とは別に、当日に適時調査で提示(準備)しなければならない膨大な資料があり、その指示は、前日になってから厚生局がFAXで送ってくるためです。このようにギリギリになってから膨大な資料の準備指示を出す厚生局側の動きから、「これら資料が当然、現場にあるべき書類であるので、急に指示をされても提出できるはずである。むしろ、当日に準備できるものを事前(前日)に伝えていて丁寧である」というスタンスがうかがえます。とはいえ、医療機関からすると、適時調査は多額の診療報酬の返還を求められることもある重い手続きの1つであり、その対応には気苦労が絶えません。

次回も引き続き、行政による立ち入りについて扱いたいと思います。

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。

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