査定・返戻の違いとは?レセプト審査対策を考える―診療報酬請求最前線

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レセプトの査定・返戻など審査について考えてみましょう。

基本的に査定・返戻とは、保険請求上の適合チェックが行われ、請求内容が適切でない、または疑義があると判断された場合、査定や返戻が行われます。

査定と返戻の違いとは

査定は、医療機関の請求に対し、審査側が不適当と判断した項目の内容を修正(減額・減点など)し、調整された額で支払いが行われることをいいます。一方、返戻は医療行為の適否が判断し難い場合に、審査側が一方的にレセプト自体を差し戻すことを指します。

査定は、収入が差し引かれることになるので、実施した医療行為の対価が得られないという点で、医療機関にとっては大変厳しい制度です。その点、返戻は、請求したレセプトが差し戻されるだけなので、改めて請求し直せばいいという感じでソフトな印象を与えますが、よく考えてみると、査定と同様に当月に見込んだ収入が得られないという点で、医療機関側の人件費や医材の支払いを考えれば、病院経営に少なからず打撃を与えます。

査定 返戻
実施時期 審査側が請求を不適当と判断した場合 医療行為の適否が判断し難い場合
内容 審査側が不適当な項目を修正(減額・減点など)する 審査側が一方的にレセプト自体を差し戻す
支払い 減額分が差し引かれて支払われる なし
再請求 不可 可能

レセプト点検前からチェックを

査定・返戻などの審査の一番のチェックポイントは、やはり、まずは医薬品の適応症、投与量、投与日数、傷病名と医薬品の禁忌の点検になりますが、審査側はこれらの項目に対して、機械的にレセプトチェックシステムを用い、効率的に審査を実施しているようです。したがって、医療機関もこれらの審査に対応するためには、レセプト請求用のチェックシステムを導入し、傷病名記載の点検を充実させる必要があります。

一方で、最近は高額な医薬品がかなり増えてきたため、レセプト点検前から傷病名と医薬品の禁忌などをチェックする重要性も増しています。たとえば、C型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変の適応を持つウイルス治療薬のハーボニーには、「非代償性肝硬変でないことを確認する」ことが使用上の条件(適応)です。よって、非代償性肝硬変の傷病名が禁忌病名となります。筆者が経験したハーボニーの査定事例では、なぜか非代償性肝硬変とC型慢性肝炎が共にレセプトの傷病名欄に載っていたのです。
この肝硬変の非代償性とは、肝機能不全の症状(腹水、肝性脳症や黄疸など)を示す病名ですので、この事例の臨床経過を確認すると、肝機能が改善し、非代償性の時期から代償性に変わり、ハーボニーを投与できたという病歴でした。つまり、禁忌病名の非代償性肝硬変は不要な病名であったのです。
このようなケースを経験し、筆者の医療機関では、単にレセプト点検を強化するという対策だけではなく、電子カルテ上の傷病名登録支援システム(医師が処方、注射、検査等を行う際に保険請求上の病名登録漏れチェックが行われ、該当する適応病名が登録できるシステム)に禁忌病名の設定を行いました。

これは、1つの例ですが、これからの査定や返戻の対策は、医事のレセプト担当者の力量に頼るのではなく、電子カルテをベースにシステム対応を検討する時代に変わってきています。それも、レセプトの点検のタイミングではなく、診療の過程で、医師を巻き込んで適切な保険請求を求めることではないかと感じます。

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。

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