「初診料」算定の基本と考え方―診療報酬請求最前線


今回は、初診料における診療報酬算定の基本とその考え方を整理したいと思います。
診療報酬における外来初診は、初診料(282点)と各加算から構成されています。この算定の基本は、同一日の他科初診の有無と年齢(6歳未満の乳児)、そして診療時間の確認などが挙げられますが、今回は疾病と診療科から初診料のポイントを考えてみます。

キーワードは「医学的初診」

初診料とは、一つの傷病に対する初回の診察料のことです。算定ルール「初診料算定の原則」では「医学的に初診といわれる診療行為があった場合に、初診料を算定する」という表現が用いられています。この「医学的初診」という言葉の意味を、糖尿病を例に考えてみましょう。

厚生労働省の事務連絡(平成18年3月28日付)には、「同一疾病又は互いに関連のある疾病でないこと。例えば、糖尿病で継続管理中の患者について、糖尿病性網膜症疑いで眼科を受診する場合は算定できない」という記載があります。つまり、「糖尿病性」という病名のくくりに挙げられる疾患の場合は、初診料の算定が認められないということです。そのため、糖尿病を扱う医療機関の場合、代表的な合併症(慢性腎不全、ネフローゼ症候群、動脈硬化、狭心症、神経障害、皮膚潰瘍など)にまで知識を深めておくことが重要です。

ご自身が勤める医療機関の代表的な疾患構成は、ぜひ認識しておきましょう。

自院の標榜診療科、院内呼称と相違あることも

さらに、初診料算定のルールには、同一日の複数科受診に対し、原則として「他の傷病について、新たに別の診療科を初診として受診した場合には、2つ目の診療科に限り141点(筆者注:初診料の1/2)が算定できる」とされています。なお、一つひとつの診療科のくくり(区分)においては「医療法上の標榜診療科が異なる場合に算定できる」という条件になっています。多くの医療機関が、1日の外来で受診診療科数を制限する傾向があるのは、この算定条件が関係しています。

ここで注目したい点は、院内で掲示している診療科名と標榜診療科の関係です。なぜなら、標榜できる診療科名称は医療法や政令などによって厳しく制限されており、規模の大きな医療機関ほど、院内で使用している診療科名称と標榜診療科が異なっていることが一般的だからです。こうした医療機関では、診療報酬請求担当者の標榜診療科に関する正しい知識が求められます。これは「医療機関が標榜する診療科名として広告可能な範囲」という広告規制との関係がありますが、制度的な知識よりも、まずは自院の標榜診療科を認識することから始めてみてはいかがでしょうか。

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。

【無料】病院経営事例集メールマガジンのご登録

病院長・事務長・採用担当者におすすめ

病院経営事例集メールマガジンでは、以下の情報をお届けします。

  • 病院経営の参考になる情報
    エムスリーグループのネットワークをいかし、医療機関とのコミュニケーションを通じて得た知見をお知らせします。
  • セミナー情報
    医師採用など、病院経営に役立つ知識が学べるセミナーを定期開催しています。

[adrotate group=”9″]

関連記事

コメント

コメントをお待ちしております

HTMLタグはご利用いただけません。

スパム対策のため、日本語が含まれない場合は投稿されません。ご注意ください。

医師の働き方改革

病院経営事例集アンケート

病院・クリニックの事務職求人

病院経営事例集について

病院経営事例集は、実際の成功事例から医療経営・病院経営改善のノウハウを学ぶ、医療機関の経営層・医療従事者のための情報ポータルサイトです。