適時調査の2回目は、適時調査における事前準備のポイントについて具体的に取り上げてみます。
調査当日の対応時間は、およそ3~4時間程度になりますが、病院規模や法人形態、施設基準の届出状況によって変わってくるようです。基本的には、合理的かつ迅速に対応でき、手際よく資料等を提出できることが好印象を与えます。適時調査の実施通知が届いた後、厚生局からは指定された事前書類の提出(郵送)を依頼されます。依頼されるのは、主に診療実態と職員の勤務状況、患者数に関するものや組織図、施設の図面といった病院概要のようなものになります。ここまでは、特別注意することはありません。
適時調査の本命は前日 予測して準備を
その後、調査前日になって送られてくる「当日準備していただく書類一覧」は、基本診療料の入院基本料から入院基本等加算や特定入院料、さらに特掲診療料では医学管理料から検査、画像、リハビリ、輸血、麻酔、食事と膨大で、施設基準に関する書類を網羅したものです。
例えば、診療報酬の多額な返還金にも繋がる入院基本料などについて見てみましょう。書類の指定は、次のように指示されてきます。
- 平均入院患者数の算出の根拠となる書類(直近1年)
- 平均在院日数の算出の根拠となる書類(直近3か月)
- 病棟管理日誌、外来管理日誌(直近1か月)
- 入院診療計画書(作成例3例)
- 院内感染防止対策委員会の設置要綱、議事録、感染情報レポート
- 医療安全管理委員会の設置要綱、議事録、院内職員研修
- 褥瘡チームの設置と活動状況、褥瘡対策に関する診療計画書(作成例3例)
- 栄養管理計画書、栄養管理手順
この内容を見ればわかるように、施設基準項目のすべてが押さえられており、遵守されている実績を数値や規定、議事録や作成書類によって点検されます。準備する資料は、基本的に病院側で選定できるため、あらかじめ予測して準備しておくことが賢明と言えます。
適時調査で慌てないために
しかし、やはりこのような監査に対しては、日頃から施設基準を認識し、内部監査を行うなど、適切な運営に努めておくことが何よりです。
施設基準は、事務側だけで対応することは不可能であるため、医療職全般に認識を広げる必要があります。日頃の委員会の開催においても、施設基準に関係するか否かを意識させるため、その要件を数値的なものであれば集計し、会議の中で報告するといった配慮も効果的です。また、大口の診療報酬算定に関係するようなものについては、月単位で監視(モニタリング)し、それらの状況を病院幹部まで報告させるといったことも、重要なマネジメントになります。
・【診療報酬請求最前線vol.13】適時調査とは? “医療監視”との違い
・診療情報提供書の適切な記載、不適切な記載―診療報酬請求最前線
・【診療報酬請求最前線vol.15】適時調査の実際と注意点~夜間の看護配置、医療クラーク加算~―診療報酬請求最前線
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。
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