院長先生! 本当にスタッフ教育できてますか?―溝口博重の「院長、それじゃみんなは動きません」vol.7

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院長先生! 本当にスタッフ教育できてますか?―溝口博重の「院長、それじゃみんなは動きません」vol.7

「溝口さん、うちのスタッフは何で、こう仕事を理解しないの?」という質問、けっこう多くの院長から頂きます。この場合の『仕事』とは、実務そのものというより、院長の意向を理解して実行することを指している場合が多いようです。
要するに、自分に忖度して仕事してほしいのに、指示を出さないとやってくれないし、指示通りの仕事以上の結果を期待できないことについてご不満のようです。
「院長先生、別に医療機関に限った話ではないですよ」と言いたいところですが、今回は、デキるスタッフをどう育成するか、について話をしたいと思います。

図1

事務系スタッフの系譜

まず病院スタッフを2つに分けることができます。
臨床系と事務系です。院長のマネジメント的には両方ともやる必要があるのですが、今回は事務系を中心に話をしていきたいと思います。事務系スタッフは簡単に言えば、病院の中枢機能です。臨床系のスタッフが活躍するための土台作りですが、2000年くらいまで、事務系スタッフの採用に力を入れている病院は少なく、縁故採用が多かった、というのが特徴になります。

事務長の方なども、病院の取引先から着任した方などが多く、生粋の生え抜きが事務長になっている病院と半々といったところでしょうか。分かりやすくいえば、20世紀と21世紀で病院の事務系スタッフの仕事の質に大きな変化があったと説明すべきでしょうか。

それまでも大変は大変だった病院経営ですが、それでも診療報酬はプラス改定が当然であり、苦しいながらも従来通りのスタイルの延長で対応ができていたのですが、2002年以降の診療報酬のマイナス改定、さらには2004年から始まった臨床研修の必修化によって、抜本的な病院経営に関する考え方を変える必要が生じるようになりました。
もちろん、病院は社会インフラなので、すぐに経営が立ち行かなくなるような改定ではなかったにしろ、着実に「経営」を考える必要が生じたのが、2000年代前半になります。
今まで通りの病院経営では徐々に苦しくなっていく、という環境にいち早く対応できる病院か、そうでないかで、100床以下の小規模病院などは相当数、診療所に形を変えるなどして、病院という形態から離れていきました。

事務系スタッフの医療政策の理解

2年に1回の「診療報酬改定」が、2000年改定までの病院経営の肝であり、スタッフは2年に1回の改定に関する情報を理解して実行することが求められていましたが、いわば、これは答えが決まった話に合わせて物事を進める仕事であって、創意工夫の余地はあれど、基本的には定石通りの仕事をすることが求められていました。

しかし2002年以降、医療政策を理解して、先読みしていくことが、病院経営に必要になってきたことに対して、理解できていない病院が思いのほか多かったのも事実です。2006年の看護配置7:1創設などはその最たるものかと思います。2008年以降、看護師の人材会紹介社の台頭などが示すように看護師の採用は難航し、看護師確保を最重要課題と位置付けていたかどうかで、急性期病院は大きな明暗が分かれました。

また院長が看護師確保を病院の最重要課題に設定しても、事務系スタッフは「それは看護部長の仕事ではないか」と、実務に関わらないことが多かったのも事実です。つまるところ、自分の仕事がどのような意味があるのか、理解をせずに仕事をしてきたスタッフが非常に多く、また診療報酬といった決まったルールを遅滞なく履行することが業務と考えるスタッフが大勢を占めるにあたり、病院の考える力が弱くなったと言えます。

医療政策全体を理解せずに、表層化している診療報酬改定のみ、追いかけているので、現場の事務系スタッフの理解(図2参照)と、ある程度、医療政策を俯瞰的に理解して、現場に指示を出している院長との間で、理解の差異が生じてきます。要するに中長期的な視座にたった指揮者と、目の前の問題しか見ていない現場との間の温度差と言い換えることもできるでしょう。

図2

そして、もっとも大きな問題は、現場が医療政策を理解していると思っているケースが多いことです。この場合の多くが、診療報酬改定の解説を聞いて理解した気になっているだけで、中長期的な視点でないのがポイントです。

そもそも経営者でもない立場の人が、中長期的な視点を持つことは極めて難しいですし、それっぽい情報を2年に1回、出入りの業者のみなさんから繰り返し資料でもらうので、なんとなく、そういうものだと思ってしまっているのです。

当たり前ですが、診療報酬改定に関する情報は一元化されており、病院出入り業者の方は厚生労働省の出す資料を整理して、資料として病院に提供しています。いわば、情報を分かりやすく整理した二次加工資料が様々なルートから得て、それぞれ微妙に整理の仕方で差があるとはいえ、ほぼ同じことを繰り返し目にするので、なんとなくそういうものだという理解になるわけです。基本は診療報酬の資料ですから、中長期的な視点に関する内容は少ないのですが、厚労省の一次資料を読み込むようなことはしないので、それが全てと理解してしまっているわけです。

スタッフ教育をしましょう!

院長の意図する業務を実施、あるいは企画できるスタッフが少ない理由は、水上の部分だけを理解しているスタッフと、水面下も理解している院長との差異から生じています。例外的に、やり手の医事課長などが水面下の医療政策も理解しているケースもありますが、医事課は基本的にスペシャリストになるほど、自分の勉強だけして殻にこもっています。一つは自院関連の診療報酬だけに特化した知識を習得しているため、体系化された医療政策の知識が重要であることを認識できず、医事課の実務に関係ない限りは知る必要はない、と考えているからです。そして、もう一つは医事課スタッフに限らないですが、余計なことに手を出して自分の仕事を増やしたくない、と思っているからです。

2025年に向けて、病院経営はさらに厳しくなりますし、医療制度そのものにも変化の波がざぱ~んとやってきています。そういう意味では、院長一人が頑張っても、病院の舵取りを仕切れるものではありません。中堅スタッフがどこまで医療政策を理解し、現状の業務との連動を理解し、改善できるかが、今後の病院経営の肝になってくると思われます。
「うちのスタッフは何で、こう仕事を理解しないの?」という疑問は、まさに病院経営上の大きな課題に対してのサジェスチョンと言えるでしょう。

医療政策をスタッフに理解させるのが重要なのはわかったが、具体的にどうすればいいのか?
そう、これが問題です。
医療コンサルタントにスタッフ研修をお願いしたら、厚労省サイトの資料を印刷して、輪読会をしていた、といった話もよく聞きます。こういうのは、アホの所業です。意味ありません。

医療政策は「流れ」で理解するのが重要です。
意味もなく、ポッと出のアイディアで政策は決まりません。
必ず、政策決定には背景があり、それまでの歴史があります。
個人的には1985年の第一次医療法改正から勉強するのがベストなのではないかと思います。細かい内容は置いておいて、ざっとの流れを知るだけでも、各段に診療報酬の意味合いと理解が変わってきます。たかだか30年ちょっとです。その気になれば、簡単とまで言わずとも、独学でも十分に学べます。

「うちのスタッフは何で、こう仕事を理解しないの?」から脱却するために、医療政策の勉強会を院内で始めたらいかがでしょうか?
とても効果的だと思います。

今回の標語
「医療政策は背景と歴史を学ぶべし」

<編集・塚田大輔>

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